中東のSWFはどうなのですか
A:CFOから中東のSWFはどうなのかと聞かれたのですが、IR対象としてどうなのでしょうか。
T:海外の大口投資家というと、中東、アラブの大金持ちということで、中東のSWFが持ち出されることが多いけど、まだまだ能動的なアプローチ先にはなりづらいよ。
A:それはなぜですか。
T:オイル&ガスのアナリストをしていたからわかると思うけど、石油開発というと中東と言われることとちょっと似ていると思う。中東のSWFは世界のSWFの中でも存在感が大きいのだけど、必ずしもアクティブ運用を行っているわけでもないし、行っていても外部に委託しているから、直接アプローチしても意味がないことになる。
A:なるほど
T:しかも、必ずしも国外へ投資しているわけではないからね。そのため、中東SWFの行動を把握できる機会は実はそれほど多くない。
A:オイル&ガスの世界でも、実際には中東の石油開発会社にはあまりアプローチできないです。何しろ、お金も技術もある中、わざわざ外国資本と外国企業の技術を必要としていなかったりしますから。
T:中東のSWFの場合は、外国への投資ニーズを持っているけれど、中東のNOCと同じく、アプローチしやすい相手ではないよ。彼らの投資対象になったら、それはラッキーなんだけ、こちらからなかなか難しい。
A:それでも、アクティブ運用に本格的に取り組むようになったというニュースもありますよね。
T:そうだね。外部委託を通じて積極的に取り組もうとしていることは事実。ロンドンはそうした資金を受託する運用会社が多数あるからね。
A:そうなると、中東勢のフロント企業はロンドンの運用会社になるのですね。
T:そう。米国に次いで英国の運用会社の存在感が世界の中で大きいのだけど、英国の場合、中東マネーの存在も大きい。英国勢が日本企業へ投資していても、実はオイルマネーかもしれない。
A:それはなかなかわかりづらいですね。
T:株主判明調査を行わないとわからない部分だね。中東だけに限らないけど、SWFの動向は、公開情報からは追えないことが多い。
A:株主判明調査でしかわからないこともありますね。
T:石油ファイブと言われる中東のSWFの動きが活発で、その一つがアブダビ投資庁。ここは数年前までは、日本企業へ投資するアクティブ運用チームをもっていたのだけど解散。それ以来、日本企業との接触はすっかり途絶えている。
A:サウジアラビアのPIFはどうですか。
T:PIFも石油ファイブの一つ。ゲーム関連の日本企業への投資で有名だけど、近いうちに、こうした株式をサウジアラビアの事業会社へ移管する話も出ている。
A:中東の場合、シャリア(イスラム法)も影響してくるのですか。
T:まさにそうだよ。「FTSE Japan 100 Sharia Index」の組入企業の中から投資対象を選ぶという話もあり、この指数に組み入れられているかは非常に大事。
A:確か、総合商社は組入上位に含まれているのですよね。
T:引っ掛かりそうな事業がたくさんありそうだけどね。中東SWFでは、指数にプラスアルファの味付けを行うことがトレンドとも言われている。