中年の危機とどう取り組むか?(その3):45歳定年時代におけるアラ45歳のセカンドキャリア探し。
過去2回で、中年の危機の症状と初期の対応策、その後長期戦にてどのように過去の自身の棚卸しをして中年以降の人生テーマを模索すれば良いかについて徒然に述べた。
今回は、その先の「45歳定年時代におけるアラ45歳のセカンドキャリア探し」について、自身の経験から述べたいと思う。遠足は家に帰るまでが遠足、四十路の海外大学院、NUSでの修士理転についても仕事に復職する所までが修士理転であるとは自身も考えていたし、恐らく「結局中年で仕事辞めて修士に行って、仕事は見つかるものなのか?」と言うのは気になる方も多いであろう。今回はその点について可能な範囲で徒然に書いてみたい。
○アラ45歳のセカンドキャリア:はっきり言えば、簡単ではない。
率直に述べれば、40代で仕事を見つけると言うのはそうそう簡単ではない。更に言えば職種や分野を変えようとなると尚更である。
まずスキル水準が同じであれば若手が好まれる、年上の部下を持ちたがらないケースが多い、なまじっか過去のサラリーが中途半端に高いのですぽっとはまる席が少ない等、不利な要素に満ちている。
自身の場合で言えば、「金融専門家としては経験20年のシニアだが、エンジニアとしてはPython 6年、CS修士出たての良くて中堅入りたて位」と言う分野毎の水準感の不一致による難しさもあり、これが復職を困難なものにした。つまり金融専門家のシニアとしてそれなりのサラリーをなまじっか過去に得てしまっている一方で、純粋にエンジニアとして見た場合はシニアとして採用する事は難しく金融時代の給与は払えない、と言う所に不一致がある。ここで採用する側も職探しする自身の側も中々すぽっとはまる落ち着き所を見出すのに苦慮した面があるように感じた。中年になりセカンドキャリアを模索する際にはこの難しさは多分少なからずのかたが直面するだろうなと言うのは実感した。
こちらからはエンジニアとして働く場合は年収を下げても良い、若手のポジションでも喜んで働く、と申告しても、採用する側からすれば「給与ダウンでシニアに働いて貰ってモチベーションが維持出来るのだろうか?」「どうせスキルセットが同じくらいであれば若手の修士卒を、その若手にとっては前職対比で年俸アップする形で雇う方が良い」と言う事になってしまいがちのように思われた。
LinkedIn、indeed、eFinancialCareer等複数のサイト経由で、また複数のヘッドハンター経由で何社応募したか最早覚えていない。恐らく150社位は普通に超えていると思う。
NUSで修士卒業見込みになった事で、修士に入る前は全くなしのつぶての事が殆どであった事を考えると学歴効果は中年でもあり、例えばデータサイエンティスト、仮想通貨系のファンドやプロップファーム等の面接にぽつぽつ呼ばれるようにはなった。
しかしそれでも自身が想定していた程には職探しが簡単になる訳ではなく、困難さは変わらない面があった。面接に呼ばれる事もなく「お祈りメール」をひたすら受け取る事になる、面接をしても中々思うように進まない等、厳しい時期が続いた。
○セカンドキャリアの突破口:周囲の学生とグループワークをし、応募の数をこなす事で段々と自身の立ち位置が見えて来た感。
しかし応募の数をこなして行くうち、またNUS内でグループワークを生徒と行ううちに、自身の立ち位置が見えて来る面もあった。
例えば、グローバルテック企業で機械学習専門の開発者やリサーチャーの職を得るのは、まずはPhdが多く修士では少ない事を肌で理解して行った。また、修士でそうした立場に就けるのは、NUSのCS修士内の上澄みキレキレ、理系的素養やアルゴリズム面のセンスが明らかに自分よりも優秀で、査読を通った本格的な論文のメイン執筆者としての実績が複数本あるような人物だったりする事を理解して行った。実際自身が応募をしても殆ど面接までも行かないケースが過半であり、自身では厳しいだろうなと言う事が理解されて行った。
コンサルのデータサイエンティスト職の類だと、ビジネスとエンジニアのハイブリッド的な自身の場合、上記よりはニーズがあるようにも感じたが、ここも中々すぽっとはまる仕事を見つけるのは難しかった。
一方で、金融のドメイン知識が必要なケースでは優秀なエンジニアのグループ内でも自身がリーダーシップを取る事になる局面が多かった。優秀なエンジニアも案外売買の板の機微、各種経済指標をどう売買に結びつければ良いか、リスク管理をどうすれば良いか等の所になると詳しくないし少し学んだ位では細部の機微までは土地勘が付かない。そこは20年間なんなんと金融市場の仕事をしていた自身が優位に立てる所なのだなと言う事を実感した。なるほど、やはり自身と金融は多分腐れ縁なんだろうなと言う事を感じるようになった。
しかし、金融業界に戻るにも中々すぽっと来る先となると難しい所もあった。
クオンツトレーダーをする程にはDay 1からアルファが出る類のアイデアはない。また、NUS修士でのグループワークを経て、個人商店的な働き方をするよりはチームで仕事がしたいと言う気持ちが強くなっていた。
FinTech企業も検討したが決済、ペイメント系のベンチャーが多く決済回りの知識や興味は自分にはない。
一方で銀行や証券会社のIT部署も自身の経験はちょっとずれる。
仮想通貨ファンドやブロックチェーンのベンチャーも、企業のカルチャー的に少ししっくり来ないようにも感じた。自身の興味は、比較的伝統的な分野にテクノロジーを如何に導入して行くのかと言う話なのかなと感じるようになった。また、今回の転職をセカンドキャリアの新卒と考えると、出来れば、金融とテクノロジーの交差点的な分野におけるグローバル大手企業で働き、中で何をやっているのかと言うのを見たいものだなと感じる面も強くなっていた。
うーん、どうしたものだろうかと言う日々が続いた。
○アラ45歳のセカンドキャリアの着地点:過去を全て受け入れ、過去の経歴と直近のキャリアシフトの取り組みを全て生かせる場所が「すぽっとはまる場所」。
そうした日々に転機が来たのは、金融データ/ソフトウェア会社、市場リスク管理、運用会社でPython書きを欲している求人等に突き当たった時であった。
このエリアだと求人に応募したら即面接、面接も採用を前提にさくさく進む事が多い事を発見した。所得面でもヘッジファンドのフロントで収益が出ていた時等とは比べてはいけないが、会社員としては十分、きちんとご評価頂いているなと感じられるレンジで話が進む事に気づいた。今までの苦労が何だったのかと言う位複数の先からさくさく進む事には自身でも驚いた。
結論としては、中年の危機やコンピュータサイエンス修士入りを機に全く違う仕事、ピュアなITエンジニアに就く...と言うよりは、自身のナチュボン歴、プライベートバンク時代のマルチアセットの経験、そしてコンピュータサイエンスの修士まできちんと抑えた事、等がトータルに活かされる仕事が「一番すぽっとはまるエリア」なのだと言う事を実感する事となった。
また、シンガポールに在住し多文化経験がある、英語がノンネイティブなりに全部英語で仕事が完結させられる、これも活用する方がやはり自身にしっくり来る企業文化の場所に収まり易いようにも感じた。加えて、NUSでのグループワークが楽しかった経験も踏まえて、個人プレーの職場よりもチームで仕事をする職場、若いメンバーとフラットな関係で仕事が出来る会社を選ぶ事にした。その他、先に述べた通りで小規模ベンチャーよりはグローバルに展開する国際的な企業で「セカンドキャリアの新卒」として中で何をしているのかを経験して行く事とした。
過去やって来た事の中には上手く行った事もあれば苦い経験となった事もあるが、そうした経験も含めて案外無駄ではないのであり、自分の過去を全て受け入れる事、その上で直近で学んだコンピュータサイエンスを持ち味として活かして行く、これが自身のセカンドキャリアとして一番しっくり来る(そして所得的にも納得行く額が出る)所なのだなと言う結論になったのであった。
勿論、全く違う分野で類稀なる才能を開花させられるかたは上述の限りではないと思う。自身の周囲では金融から料理人に転向して活躍する人等もいる。全く違う分野に転向する事も不可能ではないし、才能を開花できる分野を中年入りして見つけると言うケースも勿論あるように思う。
しかし自身の場合においては、自身のほろ苦い過去も含めて全てを受け入れた上で、直近の修士課程で行った「自分自身の大規模ソフトウェアアップ デート」も生かして行く、それが結局、物事が円滑に進み、質的にも経済的にも満足行く結果に繋がる事になり易く、中年から壮年に向けた次のテーマがようやく見つかる契機になったように感じている。これは中々に示唆深いものがあった。
これは自身の例であり、一般化出来るのかと言うと正直よく分からない面はある。とはいえ、何らかの参考になれば幸いである。
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