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SF読みが舌がんになった件 その3

まるで高架橋下!? MRI検査を支えたSF

前回までのあらすじ(ご注意)

 このお話はSF好きが舌がん(ステージ1暫定)の体験をお気楽に綴るエッセイです。医学は素人。「SFも病もお気楽に。人生をやり過ごすのはそれが大事」をモットーにしております。
 さてそんなSF読みは、10月某日、口内炎?が広がったような気がして耳鼻咽喉科、大学病院を紹介され、S…いやいや、研修医の先生による「お優しい」生検を受け別日にMRIを受けことになったのでした……。


『グッド・ドクター』の(?)、ドーナッツは轟音だった。

 CTの時にも思ったのですが、MRIを受けると知って「映画『グッド・ドクター 名医の条件』(韓国版、日本版とありますが、私が推しているのはアメリカ版)の患者さんが受けてる、あのドーナッツ型の機械だよな、貴重な体験ができるなぁ」とも思っていました。
 物書きでもあるので、ワクワクとまでは言わないものの、検診で受けたことがある、胃カメラよりは楽だろう、という軽い気持ちだったのです。

 ちなみにこの『グッド・ドクター』はASDでギフデットの主人公が脳外科医の義父や同じレジデントとの関わりを通してドクターとしても人間としても成長していく、という大変面白いドラマシリーズですので、医療ものが好きな未視聴の方はぜひ。主演のフレディ・ハイモア、そして声優の岡本 信彦さんの演技が素晴らしいので、ぜひ。(つい、二度オススメしてしまう)


いざMRI検査へ

 話が脱線しましたが、MRIを受ける日は軽い気持ちはどこへやら。緊張していました。造影剤が緊張の原因です。造影剤を使ったCT検査の時、点滴前の生理食塩水がちょっと漏れたりしたので、怖かったんですよね。それに腕に刺したままの点滴が好きになれない。(これは子供の頃に熱を出し、ルートが取れないと何度も刺された経験が未だに尾を引いているのです)
 それに造影剤を入れて体が熱くなったりするのもちょっと嫌な感覚でした。しかも動いて撮影がブレないように顔も固定されたりしたので緊張はMAXです。

 とはいえ、事前に看護師さんや検査技師さんが丁寧に説明してくださり、そこそこ落ち着いた状態で受けることとなったのですが。

「大きい音がするのでヘッドフォンします」

 ふーん完全に密閉されるヘッドフォンなのかな、などと甘く考えていました。顔と胴体を固定され、位置合わせされました。検査技師さんが声をかけます。

「撮影に20分ほどかかります。その間なるべく唾を飲むないでくださいね」(舌の撮影をするので、舌が動いて画像がブレるのを防ぐため)

 20分も唾を溜めとけと? そんな疑問が浮かびましたが、実際は緊張で口の中はカラカラで、一回ごっくんしそうになったくらいで大丈夫でした。

「検査始めます」

 顔と胴体を固定されたままいざ、ドーナッツの中へ、「シューーーーン」と何か回転している音が「いかにもSFチックだなぁ」とニヤリと笑いそうになり、顔を動かしちゃいけんのだったと思いながら、ヘッドフォンから流れてくるフィーリング音楽に耳を傾けていると……。

ドッドドドドッドドッドド、ガーガーガーガー

 ヘッドフォンの音楽がかき消されるほどの轟音が頭を包みました。

 個人差はあるにしてもイメージとしては高架橋下の電車が通過する音くらいあります。まるで音で輪切りにされているイメージです。
 なんで、音が出るのか気になって後から調べてみました。詳しい原理はわからなかったのですが、比較的にわかりやすく説明していたブログを引用します。

MRI装置の原理は大きな電磁石です。磁場を発生させるために電流が流れると非常に大きな力(ローレンツ力)が装置全体に影響を及ぼします。結果、MRI装置の骨格・周辺機器がわずかに歪みます。電流が流れなくなると元に戻ります。これを高速で繰り返すことにより周辺の空気が振動し、「音」が発生します。

日本赤十字社、広島赤十字・原爆病院、職員ブログ、2021.01.15.MRI装置の音について
https://www.hiroshima-med.jrc.or.jp/blog/

 というわけで、ガガガガガガー、ドドドッド、ギガーギガーなど様々な音が(空気の振動)が響いていたようです。ですが検査前に原理を調べなかったので、気分は「音で輪切りにされている気分だわ」という体感でした。

 それに耳を保護するためのヘッドフォンも正直フィーリング音楽ではなく、歌詞がある音楽にしてほしかった。経過時間がさっぱりわからない中で、いつ終わるのかと思いながら轟音に耐えるのはしんどかったです。

 まぁそれでも、ドッドッドッドッと断続的な音を聞いていると、あるSF映画のワンシーンでやり過ごそうとするのは、私もSF脳だなと思った瞬間でした。(そんなことはないか)その映画はこちらです。

 そう、ポール・バーンホーベン版「トータル・リコール」!!名作! 
 SFファンはご存知だとは思いますが、フィリップ・K・ディックというアメリカのSF作家の「追憶を売ります」という短編が原作になっています。

(私が呼んだのは確か、上の表紙の古い方ですが、新版もあります。まだ読めていませんが、他の短編も面白そう)


 この映画では、火星へ行くことに憧れを持っている主人公クエイドが主演のアーノルド・シュワルツェネッガーが作中で削岩機(?)をドドドドっとやるんですけれど、あのシーンを思うかべたりしていました。さらに、大胆なリメイクをしたレン・ワイズマン版はラストシーンはあれ、結局どういうことだったんだろうなぁと思ったりしてやり過ごしました。ちなみにノベライズ版というか、映画の補完的なノベライズ版もあって、ピアズ・アンソニー『トータルリコール』を読むとなお面白いので、この映画がお好きな方はぜひお読みください。

 まだまだ余談ですが、レン・ワイズマンのリメイクも、バーホーベン版のオマージュが面白いリメイクだと思いますし、旧市街に新市街が重なる風景描写だけでも見る価値はあると思います。(ですけれど、SFファンとしては、どうやってマントルを貫けたのか、すごく気になるんですよね)

 話がSFに逸れてしまいましたが、今回のMRI検査は本当に「トータルリコール」に助けられました。検査後は思ったよりも、ぐったり。それにもう一つ私のメンタルを削ったのは、会計でした。

「検査結果は後日、大学病院で伺ってください」

 検査金額もそれなりに、ショッキングでしたが、検査結果を待たねばならないというのが、一番メンタルに来ました。(正確にはMRIの検査結果ではなく大学病院で行った細胞を検査する生検の結果に時間がかかるのです)

 次の受診まで1週間近くあり、当時は、悪性と明言されず「肉腫」扱いだったからです。それにDrからも「(良性であっても)手術のための撮影」と言われての検査だったので、結果を待つ間が非常に辛かったのです。

 極力普通に日常生活を送るよう努めていたましたが、仕事でミスしたり、いつも通り食べているのに、体重が1週間で2kg減ったので、(より健康的な体重になったので、それはそれで良いのですが)やっぱり後から振り返っても精神的に来ているんだなぁと感じました。

 それでも11月上旬には手術、1週間入院と前回は聞いていたので、まだ「違うかもしれない」という希望は持てていたのですが……。

 さて、次回は「診断編。不安な期間になんとか読めた、そして勇気をもらった漫画も添えて」です。こうご期待。

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