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正義のグランドセフトオート【 THE 逃走ハイウェイ 〜名古屋-東京〜 】(PS2)
正義!正義のためならやむなし!
晴らしたい無実がある。救いたい人がいる。その正義の名の下ならばちょっとの罪くらいなら許されるはずさ!…なんて建前で大暴れする映画を観るたびに「それとこれとは話が別だろ」と思わなくもないですが、まぁノリと勢いが優って最後には丸く収まってしまうしまうもんです。
そんな逃亡ものアクションがシンプルシリーズにも存在した。それが2004年発売、タムソフト開発の「THE 逃走ハイウェイ 〜名古屋ー東京〜」である。
ストーリー
名古屋。「日本一の名探偵」を自称する大河原 源九郎(おおがわら げんくろう)の元に、奇妙な依頼が舞い込んだ。東京のある女性代議士からの依頼は、有名な大物政治家の汚職の調査であった。彼女は有力な手がかりを握っているという。
しかし、女性代議士の動きをいち早く察知した大物政治家は、巧妙たる罠で彼女を無実の罪に陥れた。刻々と迫る彼女の裁判。その間、大河原は汚職の調査を慎重に進めていた。彼女の握っていた情報は確かなもので、大河原は証拠をひとつひとつ着実に集めていった。
しかしながら裁判当日、大河原事務所から集めた証拠が盗まれる事件が発生。愛車に飛び乗った大河原は、東名高速道路のインターチェンジに消えた黒塗りの高級車の後を追う。
国家権力まで動かし、大河原を追跡する機動隊。名古屋から東京へ、果てしなき追跡と逃走が始まったのであった。
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本作は「裁判で無実を晴らすために、高速道路で警察に追われつつも盗まれた証拠を拾いながら、4時間以内に名古屋から東京まで走り切る」ゲーム。
正義のために急いでいるので交通法は無視!検問突破、接触事故もやむなし!車が壊れたら人のを拝借しよう!正義のためなのだからきっと快く応じてくれるはずだ!…と、女性代議士を救うためとはいえ、悪徳政治家より悪辣なことをやってる気がするが、パッケージの裏にも「正義のためには多少の迷惑もしょうがないのだ!?」や「正義のために強制拝借だ!」と景気の良いことが書いてあるし正義のためだから仕方ないね!
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…と、冷静に考えて「THE ミニ美女警官」や「THE 大美人」などと負けず劣らずのイカれっぷりを放つシンプルシリーズのゲーム。売りは名古屋から東京までの東名高速道路を再現したところ。本当に3時間以上高速道路を走り続けるから凄い。嫌でも名古屋から東京の距離を肌身に感じることが出来るぞ。地図で見たら近所ですがこの距離、普通に遠いんですね。
GTAを低価格に落とし込む奇策
さてそんな本作だが車を次から次に奪いまくる作りはどう見ても、2003年9月に発売された「グランドセフトオートⅢ」そっくり。あの黒船ゲームに対してシンプルシリーズが黙って見ているはずがなかったのだ。というか車に乗るボタンが△な所でそのままだぞ。
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しかしシンプルシリーズという低価格帯で自由なオープンワールドを作るのは大変、そこで本作はGTAの醍醐味の一つである車を盗み、カーチェイスをする部分に注目したようだ。
更に本作は時間制限内に高速道路でゴールまで走り抜けるという限定的な状況を作り出すことで、ゲームの作りはGTAそっくりだがシンプルシリーズという制約の中だから出来たGTAとは別角度の遊び方が面白い、アイディア光る一品になっている。(その後「THE 逃亡プリズナー」というオープンワールドに挑戦したゲームも発売されたがそれはまた今度)
奪える車は軽トラからセダンにスポーツカー、トラックにバスまで様々。各車によって性能が違うので乗る楽しみもあるし、BGMやメーターのデザインも変化するので芸が細かい。もちろんダメージが加わればスピードが落ち、最終的には炎上爆発する。(ボンネットから火が出る様はGTAそのままだ。)
ただパトカーが奪えないのが残念。正義に一役買うというのに…。
ちなみに警察に捕まってしまうとゲームオーバーだが、やりなおしが中間地点からという親切仕様でした。
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長い長い東京までの旅路
そして本作はマジで300km以上ある東名高速道路を再現したおかげでマジで長い。いくら走っても全然中間地点まで到着しない。ゲームって普段は時間があっという間に過ぎるものだけど、本作はその逆を体感できる。「まだこれしか進んでないの!?」と絶望することだろう。
途中で証拠を拾ったり、事故って車を交換したり、検問を突破したり、雨や霧など天候が変化したり、景色も多少変化したりなどのプレイヤーを飽きさせない工夫はあるけれど、それでも飽きるくらい本作は長く感じる。ゲームにリアリティを求める果てがこの高速道路かと思うと、GTAなどはプレイヤーを飽きさせない絶妙な広さに調整しているんだなと改めて感心するぞ。
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そして道中では事件の証拠を集めていくことになるのだが、実はコレひとつでも逃すとエンディングがバッドエンドになってしまうので、グッドエンディングでクリアするには確実に証拠品をゲットしていかなければならない。
車を壊して手に入れるタイプはわかりやすい表示されているので手に入れやすいのだが、料金所やサービスエリアに置いてあるものはとても地味にポツンと置かれているので非常に取り逃がしやすい。自分も10年前それを知らずに遊んでバッドエンドに向かってしまった…もちろん当時この長い長い高速道路をすぐさまもう一度やり直すガッツはなかったが、今回10年ぶりにリベンジを果たせた。
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そんなわけで本作は、多少の遊びにくさはや助長な展開は大いにありましたが、シンプルシリーズなりのグランドセフトオートアレンジに感心する作品でもあり、名古屋から東京までの距離感を体感できるゲームでもあり、正義とは一体何かを考えさせられる一本でした。
にしても頑張ったのにエンディングが一枚絵とナレーションだけってちょっと寂しくないですか!?
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DATA
SIMPLE2000シリーズ Vol.68 THE 逃走ハイウェイ 〜名古屋 - 東京〜
発売:D3パブリッシャー
開発:タムソフト
対応ハード:PS2
発売日:2004年12月9日
ジャンル:アクション
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