他のどこでもない居場所へ【 198X 】(Switch)
どうしようもない、あの日々を思い出す。
ああ恥ずかしき青春時代。根拠の無い自信だけはたっぷりあって、勉強も出来なければ、モテるはずもない日々を送っていた。正直言って辛かった。
ゲームセンターはそんな目を逸らしたい事実、押しつぶされそうなプレッシャー、どうしようもない頭の悪さから逃げるため、なんとか見つけた居場所だった。
2000年代前半のゲーセンはまだ薄暗く怪しい雰囲気も漂っており、そこにいるだけでなんだか大人になれた気がする場所だったし、麻雀(MJ3)で高得点を出して高揚し、ビートマニアで高難易度をクリアした時は、いつもの冴えない自分じゃない、なんだかカッコよく見えてるんじゃないかとさえ思えていた。ゲームセンターは学校や家でもなれない、本当の自分になれた気がする場所だった。
そしてここに時代や国は違えど、ここにもそんな奴が一人いた。
少年とゲームセンター
本作「198X」はスウェーデンの「Hi-Bit Studios」制作の80年代のゲームセンターに思いを馳せる、主人公「キッド」の鬱屈した生活とアーケードゲームに対する思いの独白が入り混じるオムニバスゲーム。シンセウェイブな音楽と、ドットで描かれるストーリームービー、そしてアウトランやR-TYPEなど往年の名作アーケードゲームを彷彿とさせるミニゲームを遊んでいきながら、キッドの若き日々を描く。彼の乾いていた心がゲームセンターと出会い、だんだんアーケードゲームで満たされていく様子がたまらない。
登場する見覚えのあるミニゲームたちはキチンと遊べる上に、ゲームと主人公の憧れや興奮など様々な感情がゲームのタイトルやゲームの展開に入り混じるのも面白い。
特にアウトラン風ゲーム「THE RUNAWAY」では、独白を交えながら主人公が憧れる「自分の町じゃないどこか」へ車を走らせるが、虚しくもゴールへたどり着くことは無く、諦めに近い虚しさを感じる。
ただ本作は昨今のインディーズゲームでたまに出会う、ミニゲームを挟んだ映像作品といえる作品で、ゲーム性よりも演出を重視しているので、駆け引きやスリルが無くゲームとして遊ぶとその底の浅さに少し拍子抜けてしまうかもしれない。
ただ終盤の忍者ゲーム「SADOW PLAY」は数ステージにわたり遊ばせてくれる上に、難易度も高めでスリルあるプレイが唯一楽しめる。何故かこれだけ気合いが入りまくってる!
しかしゲーム部分がよく出来ているだけに、クリア後に短くてもミニゲームの一つ一つをしっかり遊べるモードがあればなとも思ってしまいました。あとうるさい事を言えば画角なども当時と同じ4:3に合わせて欲しかったなぁ。
本作はプロローグ?
本作は80分ほどでクリア出来るのだが、話はなんと未完。「TO BE CONTINUED」という言葉で締めくくられている。いや、まだ序盤な感じだし、めっちゃ気になるところで終わっちゃったよ!知らなかったので不完全燃焼感は否めない…!
どうやらファミ通の制作者インタビュー記事によると続編も作られるようなのでそちらの展開にも期待したい。
そんなわけで当時のアーケードゲームに思いを馳せる本作は、ゲーム部分に若干の物足りなさは感じつつも、ストーリーに関しては結構感情移入しちゃうくらいに浸れました。
辛い時、苦しい時、ゲームは救ってくれる。おかげで今の自分はあの頃よりは多少マシに生きていけている。
DATA
198X
発売:ハチノヨン(8-4)
開発:Hi-Bit Studios
対応ハード:Switch、PS4、Steam
発売日:2020年1月23日
ジャンル:マルチジャンル
公式HP:https://8-4.jp/198x/index.html