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記憶を取り戻す冒険へ【 イース セルセタの樹海:改 】(PS4)
新たなるイースⅣ
当時SFC版とPCエンジン版で同じ登場人物と同じセルセタを舞台にしながらもストーリーが全く違う2つのイースⅣがあった。同じタイトルのゲームなのに全く違う展開には驚いたし、お互い違う魅力があるゲームに仕上がっており、その対比が面白い二作だった。(PS2版はわからぬ)
あれから時経ち2012年。PS Vitaで新たなイースⅣの物語が加わった。それが本作「イース セルセタの樹海」である。今回はリメイクでもリマスターでもない...本作は日本ファルコムが直々に開発し、両方の要素を取り入れ、更にオリジナルの展開を見せている新たなるイースⅣなのだ。
ちなみに今回は2019年にリマスターされたPS4版「改」をプレイしました。
セルセタを探索せよ!
あらすじ
ゴールドラッシュに沸いているロムン帝国の辺境の街「キャスナン」で、主人公のアドル・クリスティンは疲労困憊となって街をひとり彷徨い、目を覚ますと記憶を失っていた。数週間前に出会ったという情報屋のデュレンによると、地元の人間も滅多に踏み込むことのない『セルセタの樹海』へとアドルは旅立ち、その後消息不明になっていたという。
ひとたび入ると方向感覚を失い、凶悪な魔獣が数多く生息している『セルセタの樹海』で、いったい何が起こって自分は一切の記憶を失ってしまったのか? 新しく街を治めることになった女総督グリセルダから「樹海の地図」の作成を依頼されたことも手伝い、ことの真相を確かめるため、アドルはデュレンと共に、再び樹海へと挑む決意をするのだった。
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本作は記憶を失ってしまったアドルの記憶を取り戻すと同時に、ロムン帝国からの依頼でセルセタの樹海を探索し地図を作っていく。樹海を探索していくだけだが、やはり未開の地を探索するだけで冒険感は増すね!この探索要素はイースⅧに繋がる素晴らしい発明だ。
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ゲームの作りは発売順で前作にあたるイースSEVENに近いジャンプの出来ないイースになっているが、戦うたびに連打を要求してきた前作に比べるとSPゲージが溜まりやすいのでスキルを連発しやすく、ジャスト回避で戦闘が有利になるフラッシュムーブなどの実装でアクション面の爽快感はかなり上がっている。これなら指は疲れない!(武器に紐付けられていたスキル習得の工程がなくなったのも嬉しい)
もちろん今回も仲間を連れて冒険する。デュレンやカーナなどイースⅣの既存のキャラクターから新キャラも登場して盛りだくさんだ。(ただ相変わらず観光案内感は否めない)
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アドルは空気じゃない!
そして前作SEVENの問題点であった、仲間が話を進めて、喋らないアドルは立ってるだけの空気になってしまう問題は、会話の途中に選択肢を加えることでアドルも黙って聞いているだけではないキャラクターになっている。真面目な相槌やふざけた返答もできるのは楽しい。(さらにイースⅧでは豊かな表情が加わりアドルの個性が更に際立っている)
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過去作との対比も楽しい
そして本作はそれまで正史となっていたSFC版イースⅣの要素の他にもPCエンジン版の要素も存分に入っているのが嬉しい。しかも共通点もあったり、同じキャラクターでも立場や性格なども変わっていたりもするのでそこを比べるのも楽しいんだよね。
デュレン
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冒頭でアドルと共に行動する情報家・デュレン(CV:平田 広明)
他のデュレンとは比べ物にならないくらいムキムキになった。ちなみにPCエンジン版同じく闇の一族との因縁がある設定だ。
カーナ
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イースⅣといえばカーナ(CV:石原 夏織)。以前はどれもしっかりしたお姉さんキャラだったが、今回は考えるよりも体が先に動く脳筋キャラになっている。まぁ結構真面目なキャラクターが多い中で常に明るく可愛いからオールオッケー!
SFC版でスピニングバードキックをする小ネタシーンを取り入れた必殺技「ミストラルスピン」があったりするのも嬉しいサービスでした。
ちなみに今回レムノスは双子の弟となっていう設定だ。
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エルディール
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毎回悪に転じる事になるエルディールだったが、今回はまさしく神のような風格の良い人に。ただ何を考えているかさっぱりわからない上に、悪モードになったら制御不能という面倒臭い人になってしまいました。というか今回この人の扱い投げっぱなしだぞ…。
レオ
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PCエンジン版に登場したレオも登場。嫌らしく欲にまみれたクズなキャラクターだったが、今回は子分2人を引き連れユーモラスで憎めないキャラとして絵がれており、後半は部下思いで完全にアドルと味方となっている。この人は良い転生をしたね!にしても本作でのロムン帝国は結構しっかりした人が多いぞ。
他にも声優がほぼ一新されている中、闇の一族のガディス(CV:玄田哲章)とリーザ(CV:白鳥 由里)だけはPCエンジン版のままなのも嬉しい。(どうせならグルーダやエルディールも矢尾一樹、池田秀一のままがよかったな...。)
音楽
音楽面もイースⅣの名曲たちがアレンジされている。やはり「セルセタの樹海」や「燃ゆる剣」はカッコいいね!
ただ贅沢を言うなら「太陽の神殿」や「伝説へと続く道」あたりカッコいいだけに使ってほしかった...。
淡白なストーリーと多めのダンジョン
ストーリーはというと若干淡白な印象。
アドルが記憶喪失で記憶を辿っていくミステリーも良いし、他のイースⅣ同様有翼人エルディールと古代セルセタ王朝、そして闇の一族が関わる話の中心に向かってアドルは進むのだが、仲間たちが大勢加わるおかげで他の事件にも巻き込まれてなかなか話が主軸に向かわず、それでいて一つ一つの事象を丁寧に回収していくので間延び感は否めない。
更に今回は一度エステリアに戻るという展開や、リリアとの関わりなどは一切ないのも寂しい。あれもまた話の緩急に一役買っていたからなぁ...。ちなみにドギの出番はアドルの過去の回想のみだ。寂しいっ!
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後半もついにエルディールや闇の一族との決着となるが、こなすダンジョンが多いのでなかなか話が進まずテンポは正直悪かった。(その代わりボリュームは満点だ)
さらにイースいえば悪の計画の阻止が間に合わず大変な事態になるのが通例だけど、今回はそこまで大事感が無く、盛り上がりに欠けるのもちょっと寂しい。終盤もかなり急足で「え?これで終わりなの?」とも思ってしまう幕引きで若干味気なかったです。
今回のリーザは強すぎる
そしてイースⅣのヒロインといえばリーザ。エルディールを慕い、その変貌に翻弄されるイースⅣのドラマを引き立てる悲哀のヒロインであったが、今回は全然違った。
本作ではアドルとの関わりも客人程度の関係でかなり少なく、今回の事件に対しても行動力とメンタルがかなり強いおかげでアドルが居なくて影響がなく、アドルとは別軸で事件を解決しようとする影の存在となっている。
それに自分の考えを出さずに行動するので何を考えているかわからない上たまに登場する凄い人になってしまい、おかげで印象が薄い人になってしまった。うーん。
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イースⅣの魅力
イースⅣの魅力はやはり物語の多様さ。音楽と演出に秀でたPCエンジン版、ストーリーが楽しいSFC版とそれぞれ良いところがある、そして今回は若干助長な面はあったけれど、本作では広く深い樹海をたっぷり味わえて満足です。そして本作からイースⅧへの飛躍の進化が凄まじいことになっていた事も知れて今回はプレイして本当に良かったね。今までのイースがあったからこそ、あの名作が生まれたのだ。
そして今年はイースⅧから始まり10本ものイースシリーズを遊んだ。こんなに楽しめたのもひとえにアドル・クリスティンという主人公の面白さを伝えてくれたイースⅧのおかげである。そして僕は遂にイースⅨの舞台「監獄都市バルデゥーク」へと向かうのであった。
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DATA
イース セルセタの樹海:改
発売 /開発:日本ファルコム
(PS4版の開発はスタジオアートディンク)
対応ハード:PS4(改)、Vita、Steam
発売年:2012年9月27日(Vita版)
2019年5月16日(PS4版)
ジャンル:アクションRPG
おまけ 「イース 太陽の仮面」
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ゲームではないですがイースⅣのコミカライズである「イース 太陽の仮面」も同じ舞台で同じ登場人物ながら話はどのハードとも全然違う意外な展開を見せるのでなかなか面白いです。なんて自由なんだイースⅣ。これはいずれ小説版やPS2版も欲しいところだな!
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