誰のための「セルフビルド家づくり」なのか
「このプロジェクトは、この夫婦が地元の木を切って、製材して、なるべくお金をかけずに、捨てられるもんでも活かせるものを活かして、竹や土など身の回りで使えるものは使って家を建てる。それをまわりは、おもしろいね、じゃあ応援するよ!っていうものなので、まあ温かく見守って、応援しましょう」
この言葉を聞いた私はうるっときたのですが、こんな素敵なフレーズを残してくれたのは、設計士の松澤敏明さん。
普通ならば、自分の設計通りに作ってくれない建築物なんて負の遺産のようなものであるだろうし、トラブルが起きる可能性だって高いから、断る人が多い中で、快く引き受けてくれた設計士さん。
「自分もそういうのには興味があったんですが、もうこの年だし、川端さんなら実現できそうだから、応援するので、一緒にやりましょう」
と初期の頃から、ずっと私たち夫婦のわがままなお願いに寄り添って、この私たち夫婦の人生一大プロジェクトに関わってくださっています。
この家づくりマガジンでもたびたび記していますが、『土佐派の家』という人にも環境にもやさしく、地元高知の暮らしに寄り添った設計建築をされている建築士集団で、松澤さんも長年、この取り組みに関わられています。
夫と一緒に暮らし始めて7年、その当初から「自分で伐った木で家を建てたい」と言い続けてきた夫。
なかなか見つからなかった土地も2020年に見つかり、その勢いで2020年9月に今の設計士さんと知り合うことができ、そこから木を伐採して、製材して、間取りを決めて、土壁用の土を仕込んで、基礎工事用に鉄筋曲げて、作業小屋を解体移築して。
そして、数日前からはいよいよ大工さんに基礎を習って、土台の墨付けと刻み作業がはじまりました。
このわずか2年の間に、すでに数えきれないほどの方々の協力があって「今」があります。
自分たちがただただやりたいと思ったプロジェクトに対して、これだけ多くの方に「おもしろそうやから、力貸してあげよう」と思ってもらえることのありがたさ。
セルフビルドで小屋づくり!ならまだしも、セルフビルドで家づくり!という素人が目指すには無謀な夢かと思いきや、ようやく実現の兆しが見えつつあります。
しかし、実現する日が近くにつれ、これは自分たち夫婦ふたりでやっていたら、恐ろしいことになっていたなと思うこともたくさんあります。
たとえば、数日前に習った土台への墨付け作業。墨付け作業とは、仕口や継手など、材木同士を繋げたり組み合わせるときに必要な加工のためにあらかじめ線を書いておくことで、刻み作業をする上では必須なのです。
しかし、この墨付け作業に少しでも狂いがあると、隙間があく原因になったりして、きちんとした家を作ることができなくなります。
大工さんは本当に1mmの狂いもないように墨付けをして、その通りに加工をするのですが、素人が最初からそううまくいくわけもなく。
そもそも大工さんに基礎を習っておらず、自分たちだけでやっていたら
「まあ1-2mmくらいなら、どうにでもなるでしょ。これでオッケー」
となっていたことが容易に想像できますが、それを繰り返すことで、1mmの余分がゆくゆくは取り返しのつかないことになりうるということも学びました。
さて、話は最初に戻りますが、このセルフビルドで家づくりプロジェクト。
地元工務店さんにも大変お世話になっていますが、工務店側としても今までこんな前代未聞なプロジェクトに関わる機会はなかったようで、どこまで関わればいいのか、どういう風に関わればいいのかを相当悩ませてしまっていたようでした。
しかし考えてみればそりゃそうです。
あちらは建築現場で常に安全を考えて施工されているのに、セルフビルドで家を作りたがっている素人の夫婦がどんな動きをするかもわからず、そもそもどれほどの大工仕事の技量や持っている道具も何があるかもわからないという未知なるところが多すぎるので、判断基準がなさすぎたんですよね。
しかし、こちらに工務店さんに関わってもらう時間が増えるということは、それだけあちらの人件費も増えることになるし、それはもちろん我が家が負担することになるので、そうなってしまっては、工務店さんに家を建てたもらった方がキレイだし早いのでは!?となってしまいます。
そうなっては、本末転倒で、自分たちがセルフビルドで家づくりをしたいと思う理由の最たるところは「面白そうだから」という、ここに尽きます。
なので、面白そうだと思ってやり始めたことなのに、仕事として関わってもらう人が増えれば増えるほど、必然的に義務感で関わる方も増えるだろうし、そうなってくると、私たち自身も絶対つまらないものになってしまうなと感じていました。
あくまでも自分たちが主体となり、要所では対価をお支払いした上で、サポートしてもらうのがベストだという結論に至り、そのすべてを汲み取ってくれている設計士さんが言ってくれたのがこの言葉。
「このプロジェクトは、この夫婦が地元の木を切って、製材して、なるべくお金をかけずに、捨てられるもんでも活かせるものを活かして、竹や土など身の回りで使えるものは使って家を建てる。それをまわりは、おもしろいね、じゃあ応援するよ!っていうものなので、まあ温かく見守って、応援しましょう」
感動のあまり、心にビビビっと電撃を食らいましたが、こういう関わり方をしてもらえるのは、私たちが望んでいる形でもあります。
何よりこの設計士さんをはじめ、大工さんや基礎屋さんを紹介してくれたり、段取りや材料調達など何から何までお世話になりっぱなしの地元工務店さんがサポート体制を作ってくださっているというのは、本当に精神的にも大きな支えになっていて、これからの家づくりという長期戦が始まる中で、すごく心強いものです。
セルフビルドで家づくりは「家」というものは、もちろん完成させる予定で動いていますが、それ以上に得られる経験値や人とのつながり、それを通じての人の優しさに触れる機会が本当に多く。
すでに心温まるエピソードが溢れていて、家づくりというのは手段にしか過ぎず、先述したつながりや優しさなんかがずっとこの先も、私たち夫婦の心に深く刻まれて、死ぬまでずっと、いや、死んでからもずっと、今生きている人生の最高の贈り物として自分の中で残ることだろうなと確信しています。
この文面だけをみると、家が完成間近のような気がしてきますが、今なお基礎さえもできていません(笑)
それはさておき、この家づくりに関わって「あのプロジェクトに携われてよかった!」「面白かった!」と、関わってもらう方々にも思ってもらえたなら、こんなにうれしいことはありません。
ついに刻みがはじまった、セルフビルドで家づくり。
年内には建前を終わらせるぞー!!!!
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