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産後に夫婦生活を再開するきっかけ
産後に夫婦生活を再開するきっかけとなるのは、変化への順応です。
変化に順応し落ち着きを取り戻すことができないと、セックスをしたいという気持ちにはなりにくいものです。
産後どのような変化が生じ、その悪影響を低減するためには何が必要なのか説明します。
再開しても良い時期
産後に夫婦生活を再開して良いタイミングとしては、1ヵ月後や、体が元の状態に戻る産褥期(6~8週間)を過ぎたらと言われることが多いです。
実際に、ベビカム株式会社のアンケート調査によると、1ヵ月検診後に再開する夫婦が22.6%で、2~3ヵ月後くらいに再開する夫婦が22.8%という結果が出ているようです。
オーストラリアのマードック小児研究所の調査でも、約30%が産後6~8週間に再開していることが分かっていますから、日本だけが特殊ということではないでしょう。
セックスをしても大丈夫だと思った明確なタイミング
再開して良い時期が分かっても、どんなきっかけですれば良いか分からないという人もいると思います。
当方に相談に来ている方の話を聞いていると、1ヵ月から3ヵ月経過したあたりで、出産前と同じ流れでセックスを始めたというパターンが多いように思います。
具体的には、服の上から抱きしめ合っていたらそういう雰囲気になったとか、なんとなくお互いの視線による暗黙の意思表示があって、といった形です。
変わった点としては、赤ちゃんを起こさないように気を遣いながらするようになったとか、プレイ時間が若干短くなったことを挙げる人が多です。
久々にするので照れたという人もいます。
セックスをしても大丈夫だと思った明確なタイミングについては、しても良い空気を感じたからという人が多いです。
この「しても良い空気」というのは夫婦間で共有されるものですし、それぞれ違いもありますから言語化するのが難しいものですが、変化に順応できたときに発生するものと言えるのではないでしょうか。
産後は女性にも男性にも心身の変化が生じるものです。それにより戸惑うこともあります。
そういった変化に順応できることが、夫婦生活を再開するきっかけとなるのです。
産後に生じる変化と「性」への影響
具体的に産後はどのような変化が生じ、それがどう影響を与えるのでしょうか?
これに関して、ポンティフィシア・コミージャス大学のエレナ・ドロズドフスキー博士らの分析が参考になります。
産後のカップルの「性」への影響について行われた150本以上の研究を統計的に分析したものです。
その結果、次のような影響があることが分かりました。
1.出産後の体型変化による自尊感情の低下
出産後の体型変化によって女性の自尊感情が低下することがあります。身体イメージは性機能の多くの領域に影響を与えるものです。
否定的なイメージを持つことで性欲や興奮のレベルが低下することがあります。また夫から幻滅されているのでは?という懸念を持つこともあります。
こういった影響があると夫婦生活を苦痛に感じてしまうことがあります。
別の研究ですが妻の妊娠中に夫の体重が増えてしまうパターンもあることが分かっています。
双方の身体イメージが健全なものであるかを確認にすることが大切です。
2.親という役割に対するプレッシャー
第一子の場合、親という新たな役割ができることになります。
それがプレッシャーとなり、夫婦生活へのモチベーションが高まらないことがあります。
また女性の体に対し夫婦の双方が「赤ちゃんに栄養を補給するためのもの」というイメージを強く持つと、性的な意味づけがなされなくなります。
それどころか性的な接触を持つことに罪悪感を持ってしまう可能性さえあります。
子供のお母さんとお父さんというイメージだけが強くなっている状態では、夫婦間に男女の意識が芽生えにくいですから、興奮出来ないのです。
3.事前情報の不足による戸惑い
妊娠中から出産、育児という流れの中で、様々な情報を手に入れ、適応しようとします。
しかし、十分に情報が得られていないことも多々あります。
それによって、想像していなかった事態に遭遇すると、戸惑いや不安を感じてしまいます。
また、産後は男女ともにホルモンのバランスが変化しますから、ちょっとしたことで不安を感じやすくなることもあります。
後から情報を得て「こういうものなのか」と理解できても、落ち着くまでには時間が掛かることもあるのです。
精神的な落ち着きを取り戻していない時は再開の準備が出来ているとは言い難いでしょう。
きっかけ作りを助けるために
ここまで説明した以外にも精神的な負担となっているものがないか確認することが必要です。
それらの変化に順応し、心の平穏を取り戻したときが夫婦生活の再開のきっかけといえるでしょう。
それを助けるために何ができるかというと、お互いの配慮と愛情表現です。
人間は「この相手となら子供を作って上手くやっていける」と思えるからセックスをするのです。
子供が生まれた後にお互いを思いやることが出来ないと、一緒に子育てをするには不適格な相手と証明してしまうようなものです。
するとセックスをしたいという気持ちも生じなくなります。
妊娠中にどれだけサポート出来たかが産後の性的満足度に影響するという研究結果もあります。
日常の支え合いが夜の夫婦生活にも良い効果をもたらしてくれます。
考えすぎても再開のきっかけが掴めなくなる
中年以降に心理セラピーを受けるカップルの多くは、その問題を第一子の誕生時点まで遡れるともいわれています。
それだけ子供ができるというのは夫婦関係に長く影響を与えるものです。
自分たちが気づいていなくとも、精神的な負担が生じていることもあります。それによって夫婦生活を再開する気分になれないこともあるでしょう。
体の影響だけを考えるなら6~8週間経過したタイミングで再開しても良いでしょうが、二人の心の状態も考慮して時期を見極めることが大切です。
とはいえ、考え過ぎてしまうといつまでも再開のきっかけが掴めなくなってしまうこともあります。
赤ちゃんのいる生活にある程度順応し、特に問題がなさそうであれば、断われる空気を作りながら慎重にアプローチすれば良いと思います。
<参考文献>
・ベビカムリサーチVOL.220 2017. 株式会社ベビカム
・Elena Serrano Drozdowskyj, Esther Gimeno Castro, et al. (2019). Factors Influencing Couples’Sexuality in the Puerperium: A Systematic Review.