(短編小説)台風の夜に
台風が夜の街に迫りくる。風は強さを増し、雨は横殴りに窓を叩きつける。空には稲妻が走り、轟音が辺り一帯を揺るがす。家の中にいても、外の荒れ狂う嵐の恐ろしさが肌に染み渡るようだ。
リビングのテレビでは、台風の進路や警報が繰り返し報じられている。だが、その時の僕は、警報の重みを実感していなかった。ただの情報として流し見ていただけだった。備えが必要だと分かっていながらも、どこかで「自分は大丈夫だ」と楽観的に構えていたのだ。
しかし、瞬間的に停電が起こり、真っ暗な闇が家を包み込むと、無防備な自分を初めて悟った。懐中電灯も手元になく、スマートフォンの光が唯一の頼り。それも、いつバッテリーが無くなるかわからない。風の音が窓を揺らし、まるで家全体が台風に飲み込まれるかのような錯覚に陥る。
恐怖と後悔が胸を締め付けた。もし事前にしっかりと備えていれば、この不安は避けられたかもしれない。停電に備えて灯りを用意し、食料や水も確保しておくべきだったのだ。
台風はいつも突然に訪れる。そして、その脅威は計り知れない。だからこそ、備えを怠ってはならない。自分と大切な人たちを守るために、何をすべきかを考え、行動することが、何よりも大切なのだと、この夜に深く痛感した。
※猛烈な台風が日本に来ています。皆さまのご無事をお祈りしています。