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(小説)熱血ランナーの葛藤【第5章: 真奈美の心】
秋が深まり、木々が赤や黄色に色づく季節。健太は受験勉強と陸上の練習に追われる日々を送っていたが、心の中にはもう一つの小さな悩みがあった。それは、長沼真奈美の存在だ。
真奈美は健太の幼なじみで、小学校の頃からずっと一緒だった。彼女は健太が困っている時にはいつもそばにいて、静かに支えてくれる存在だった。しかし、最近は真奈美の態度が少し変わったように感じていた。
ある日、放課後の陸上競技場で、健太は練習を終えてベンチで休んでいた。真奈美が静かに近づいてきた。
「健太、少し話せる?」
真奈美の声に、健太は顔を上げた。彼女の目には、何か言いたげな表情が浮かんでいた。
「もちろん。どうしたんだ?」
健太は笑顔で答えたが、真奈美の真剣な表情に少し驚いた。
「実は、ずっと言いたかったことがあるの。でも、どうしても言えなくて…」
真奈美は少し言葉を詰まらせた。健太は彼女が何を言おうとしているのか気になり、じっと彼女の言葉を待った。
「健太、私、ずっとあなたが好きだったの。小学校の時からずっと…でも、言えなくて。」
真奈美の言葉に、健太は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。しかし、彼女の目を見つめるうちに、その言葉の重さを感じた。
「真奈美…」
健太はどう返事をすればいいのか分からず、言葉に詰まった。
「ごめん、こんな時にこんなこと言って。でも、どうしても言いたかったの。健太には沙也加がいるのも分かってる。だから、これからも友達でいてくれるだけでいいの。」
真奈美の目には涙が浮かんでいた。健太はその姿に胸が痛んだ。
「真奈美、ありがとう。でも、今は受験もあるし、陸上もあるから…」
健太はどう返事をすれば彼女を傷つけないかを考えたが、結局うまく言葉にできなかった。
「分かってる。でも、健太には幸せになってほしい。それだけでいいの。」
真奈美は健太に微笑み、そっとその場を去っていった。彼女の後ろ姿を見送る健太は、自分の心が揺れているのを感じた。
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その晩、健太は部屋で勉強をしながらも、真奈美の言葉が頭から離れなかった。彼女の告白にどう答えるべきだったのか、自分でも分からなかった。
「真奈美…」
健太は呟きながら、彼女の優しさと友情に感謝の気持ちを抱いた。
翌日、学校で真奈美に会うと、彼女はいつも通りの笑顔で接してきた。健太はその姿に少し安堵しながらも、心の中にはまだ複雑な感情が残っていた。
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数日後、健太は大輝と一緒に練習をしていた。大輝は健太の様子に気づき、声をかけた。
「健太、最近元気ないな。何かあったのか?」
「いや、ちょっと考え事があってさ…」
健太は真奈美のことを話すかどうか迷ったが、大輝には信頼を寄せていたので、全てを打ち明けることにした。
「実は、真奈美が…」
健太が全てを話し終えると、大輝はしばらく考え込んでから言った。
「健太、難しいことかもしれないけど、正直な気持ちを伝えることが大事だと思う。真奈美もそれを望んでるんじゃないか?」
大輝の言葉に、健太は少し勇気をもらった。彼は自分の気持ちを正直に伝えることが、真奈美への最大の誠意だと感じた。
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その日、健太は放課後に真奈美を呼び出した。彼女は少し驚いた表情で近づいてきた。
「真奈美、あの時のことだけど…」
健太は彼女に向かって、静かに言葉を続けた。
「俺も真奈美のことが大切だよ。でも、今は受験も陸上もあるから、すぐに答えを出すのは難しい。だけど、これからも友達でいてほしい。それが俺の本音だ。」
真奈美は健太の言葉に少し涙を浮かべながらも、微笑んで頷いた。
「ありがとう、健太。それだけで十分だよ。」
二人はその場で固い握手を交わし、友情の絆を再確認した。
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その日から、健太は真奈美との関係に新たな一歩を踏み出すことができた。彼女の存在が、彼にとって大きな支えとなっていることを再確認し、これからもお互いを応援し合うことを誓った。
「これからも、一緒に頑張ろうな。」
健太は心の中でそう呟き、再び前に進む決意を固めた。彼の目には、新たな未来に向かう強い意志が宿っていた。