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(小説)小さな命の大きな旅:蚊の冒険譚【第6章:人生の転機】

日々の冒険が続く中で、ボクは次第に強くなっていると感じていた。しかし、ある出来事がボクの人生を大きく変えることになるとは、その時はまだ知る由もなかった。


ある穏やかな夕方、ボクは仲間たちと一緒に沼地の近くで休んでいた。空はオレンジ色に染まり、風が心地よく吹いていた。その時、突然遠くから大きな音が聞こえた。ボクたちは一斉にその方向を見た。そこには巨大なトンボが群れを成して飛んでいたんだ。


「やばい、トンボだ!」と仲間たちが叫び、皆が慌てて逃げ始めた。ボクも逃げようとしたその瞬間、トンボがボクたちの中に突っ込んできた。ボクは必死で羽ばたき、なんとか逃れようとしたが、その速さには驚かされた。


その時、ボクのすぐ隣にいた仲間の一匹がトンボに捕まりそうになった。彼の名前はユウタ。ユウタはまだ飛び始めたばかりで、逃げるのが下手だった。ボクは一瞬のうちに決断した。「ユウタを助けなければ!」と心の中で叫び、ボクは勇気を振り絞ってトンボの前に飛び出した。


「こっちだ、こっちに来い!」とトンボに向かって叫びながら、ボクはユウタから注意をそらすために、自分を囮にした。トンボはボクに目を向け、猛スピードで追いかけてきた。ボクは全力で逃げながら、心の中で「これがボクの最後かもしれない」と思った。


しかし、その瞬間、ボクは何かが変わったことに気づいた。恐怖よりも、仲間を助けるための決意が強くなっていたんだ。ボクはさらに速く羽ばたき、トンボを振り切るためにあらゆる方向に飛び回った。ついに、トンボはボクを追いかけるのを諦め、別の方向へ飛んでいった。


ボクは息を切らしながらも、なんとか安全な場所にたどり着いた。ユウタも無事で、ボクに感謝の言葉をかけてくれた。「ありがとう、ボクがいなかったら捕まってたよ」と涙ながらに言うユウタの姿を見て、ボクは強い達成感を感じた。


その夜、仲間たちと集まって話をしていると、ボクの中で何かが変わったことに気づいた。臆病だったボクが、仲間を助けるために勇気を出せた。それがボクの人生の転機となった。


「これからは、もっと積極的に生きるんだ」とボクは心に誓った。カズオの思い出を胸に、ボクはこれからも仲間たちと共に困難に立ち向かう決意を新たにした。恐怖に打ち勝ち、勇気を持って行動することで、ボクは新しい自分を見つけたんだ。


これから先、どんな困難が待ち受けていようとも、ボクはもう臆病ではない。仲間と共に、全力で生き抜く。これが、ボクの新たな冒険の始まりだった。


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