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(短編小説)何かが臭い
あれ?なんだ、この匂い…。朝起きたときは何も感じなかったはずなのに、リビングに入った瞬間、鼻をつく異臭が漂ってきた。
「何かが…臭い。」
いや、間違いない。何かが臭い。あたりを見回してみるが、特におかしなものはない。ソファも、テーブルも、クッションも…どれも普段と変わらない。でも確かに、異様な匂いがする。昨日の夜は何ともなかったのに、一体どこからこの匂いが出ているんだ?
まずはゴミ箱だろう。昨日、確かにゴミ出しをし忘れて、満杯になっていた。それだ。あの残り物のカレーとか、魚の骨とか、なんかそんなのが原因だろう。でも、ゴミ箱を開けてみても、期待(?)していたほどの強烈な匂いはない。もちろん、臭いけど、これは犯人じゃない。むしろ、あの臭いはもっと強烈だ。
「まさか…冷蔵庫?」
冷蔵庫の扉を恐る恐る開けると、中には半分食べかけのケーキや賞味期限ギリギリの卵がある。確かにそれらは怪しい。でも、ここから出ている匂いじゃない。どこだ、どこからこの匂いがくるんだ?
ふと、洗濯物の山が目に入る。そういえば、数日前から洗濯を怠っていたせいで、部屋の隅に積み上がっている服たちが悲しい目でこっちを見ている。まさか、あれか?汗が染み込んだTシャツや靴下たちが発する自己主張が、この異臭の正体かもしれない。
しかし、洗濯物に顔を近づけて嗅いでみると…臭い。でも、これじゃない。もっとだ、もっと鼻を突き刺すような匂いがするはずだ。
「一体何なんだ、これは…。」
まさか、俺自身…?いやいや、そんなわけない。昨日風呂にも入ったし、そんなに汗もかいていない。俺じゃない、絶対に。そう、自分に言い聞かせながら、改めて部屋中を見渡す。
その時、ふと足元を見た。ん?何だこの袋…?
「あっ!」
瞬間的に思い出した。そうだ、先週スーパーで買った生魚を冷蔵庫に入れず、台所に置きっぱなしだったことを。袋の中で、かすかに膨らんだパックが見える。これだ。これが犯人だ。
俺は急いで袋を持ち上げ、ゴミ袋に突っ込んで、窓を開け放った。部屋中に新鮮な空気が流れ込み、匂いはだんだんと消えていった。
「くそ、完全に忘れてた…。」
この臭い騒動を終えて、俺は深く息をついた。次こそ、ちゃんと冷蔵庫に入れようと、心に誓いながら。