(小説)小さな命の大きな旅:蚊の冒険譚【第1章:誕生の瞬間】
郊外の沼地、その静寂を破るようにボクは生まれた。小さな卵から孵化した瞬間、ボクの冒険が始まったんだ。最初は何も分からず、ただ水中を漂っていただけだったけど、少しずつ自分がボウフラという存在であることを理解し始めた。
「ここはどこだ?」とボクは心の中でつぶやいた。周りには同じように生まれた仲間たちがたくさんいて、みんなそれぞれに動き回っていた。初めての仲間との出会いに、ボクは少しだけ興奮していた。
ある日、ボクは奇妙なものを見つけた。水面に浮かぶ白い物体。近づいてみると、それは人間が落としたティッシュだった。ボクは「何だこれ?」と興味津々で調べてみた。どうやら食べられないらしい。仲間の一人が近づいてきて、「それ、食べ物じゃないよ」と教えてくれた。ボクは少し恥ずかしくなりながらも、「分かってるよ!」と強がってみた。
沼地の生活は、思った以上に忙しかった。食べ物を探したり、隠れ場所を見つけたり。ある日、ボクは初めての大きな冒険に出た。深い水の中に潜って、新しい世界を見つけることにしたんだ。そこには奇妙な生き物がたくさんいて、ボクは目を丸くして見入った。
その中で一番印象に残ったのは、大きなヒルだった。ヒルはボクを見て、「お前、ちっちゃいなぁ」と笑った。ボクは「ちっちゃくてもボクはボウフラだ!ちゃんと泳げるんだから!」と反論したけれど、ヒルは「そりゃそうだ。お前が泳げなかったら困るもんな」と再び笑った。ボクはそのヒルに対して、ちょっとだけムカついたけれど、結局は自分の小ささを受け入れることにした。
ボクの冒険はまだ始まったばかりだったけれど、この瞬間、ボクは感じたんだ。「この広い世界で、ボクはどんな困難にも立ち向かうんだ」と。これから何が待っているのか分からないけれど、ボクは自分を信じて進んでいこうと決意した。
こうして、ボクの冒険の第一歩が始まったのだった。