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(小説)熱血ランナーの葛藤【第7章: 先輩の教え】

秋の大会が終わり、健太たち埼玉南高陸上競技部は次の目標に向けて練習を続けていた。大会での成果に満足することなく、更なる高みを目指す彼らの姿勢は、部全体の士気を高めていた。

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ある日、健太たちの元に久しぶりの訪問者が現れた。中学校の時の先輩、府中和夫だった。彼は現在、近くの大学に通いながら、時折健太たちの練習を見に来て指導してくれる頼れる存在だ。

「みんな、お疲れ様。」

和夫の声に、部員たちは一斉に顔を上げた。彼の登場に部員たちは歓声を上げ、和夫も笑顔で応えた。

「今日は特別な練習メニューを用意してきたから、みんなで頑張ろう。」

和夫の言葉に、部員たちは一層のやる気を見せた。彼の指導には説得力があり、部員たちはいつも以上に集中して練習に取り組んだ。

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練習の合間に、健太は和夫に声をかけた。

「先輩、今日は本当にありがとうございます。やっぱり先輩がいると、みんなのモチベーションが上がります。」

和夫は微笑みながら健太の肩を叩いた。

「お前たちが頑張ってる姿を見るのが俺の楽しみだからな。それに、お前には特別な教えがあるんだ。」

健太は少し驚いた表情で和夫を見つめた。

「特別な教え、ですか?」

「そうだ。お前にはもっと伸びしろがある。それを引き出すために、いくつかのポイントを教えたいんだ。」

和夫の真剣な表情に、健太は緊張しながらも期待を膨らませた。

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和夫は健太を特訓のためにグラウンドの隅に連れて行った。彼はまず、基本的な姿勢とフォームの見直しから始めた。

「健太、スタートダッシュは確かに重要だが、その後の加速も同じくらい大切だ。お前のフォームには少し改善の余地がある。」

和夫は健太の走りを細かく観察し、彼のフォームの修正点を的確に指摘した。健太は真剣に聞き入り、自分の動きを少しずつ修正していった。

「そして、もう一つ大事なのはメンタルだ。競技は体力だけじゃなく、心の強さも試される。プレッシャーに打ち勝つためには、自分を信じることが必要だ。」

和夫の言葉に、健太は深く頷いた。彼は自分の中にある不安やプレッシャーをどう克服するかを考え始めた。

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その日の練習が終わると、健太は和夫に感謝の気持ちを伝えた。

「先輩、本当にありがとうございました。今日教えてもらったこと、しっかりと身につけます。」

和夫は微笑んで頷いた。

「健太、お前はまだまだ成長できる。自分を信じて、努力を続けろ。そして、仲間たちと共に頑張れ。」

健太はその言葉を胸に刻み、再び前に進む決意を固めた。

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その後、健太は和夫の教えを元に、毎日の練習に一層の努力を注いだ。彼の走りは次第に安定し、スピードも増していった。仲間たちも健太の変化に気づき、共に切磋琢磨する姿勢を強めていった。

「健太、最近ますます速くなってるな。」

北野祥が感心したように言った。健太は笑顔で答えた。

「和夫先輩のおかげだよ。でも、まだまだこれからだ。」

部員たちは健太の成長に刺激を受け、自分たちももっと頑張ろうという意欲を高めた。

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ある日の放課後、健太は大輝と一緒に走りながら話した。

「大輝、俺たちのチーム、どんどん強くなってるよな。」

「そうだな。和夫先輩の教えも大きいけど、やっぱりみんなが一つになってるからだよ。」

大輝の言葉に、健太は深く頷いた。彼は自分たちのチームが強くなる理由を改めて実感し、これからも仲間たちと共に頑張ることを誓った。

「俺たちは一人じゃない。みんながいるから、どんな困難も乗り越えられる。」

健太は心の中でそう誓い、新たな挑戦に向けて走り続けた。彼の目には、未来への強い意志と希望が輝いていた。


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