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(小説)熱血ランナーの葛藤【第1章: 始まりの一歩】
緑丘高等学校の陸上競技場には、早朝の冷たい空気が漂っていた。朝日が昇るとともに、薄暗い空が徐々に明るさを増していく。笹塚健太は、いつものように競技場のトラックを走りながら、一日の始まりを感じていた。
「よし、今日も頑張るぞ!」
健太は自分自身に言い聞かせるように声を上げた。彼は18歳、高校3年生。身長は高く、スラッとした体型が特徴で、中学校から陸上競技を始めて以来、短距離走で数々の成果を挙げてきた。県大会での準優勝は彼の自信となり、今でもその経験が彼の原動力となっている。
トラックの向こう側から、もう一人のランナーが近づいてくるのが見えた。仙川大輝だ。健太の親友であり、同じ陸上競技部に所属する彼は、長距離走を得意としている。
「おはよう、健太。今日も早いな。」
「おはよう、大輝。お前もな。最近、練習量増やしてるんじゃないか?」
「まあね、でも受験勉強もしないといけないから、バランスが難しいよ。」
大輝の表情には少しの疲れが見えた。彼は難関私立大学を目指しており、受験勉強と陸上の両立に悩んでいた。
「分かるよ。俺も勉強は苦手だからな。でも、走ることだけは負けたくないんだ。」
健太の言葉には決意がこもっていた。彼にとって、走ることは自分を表現する手段であり、生きがいだった。
その日の放課後、陸上競技部の練習が始まった。部員たちは各々のメニューに従ってトレーニングを開始した。健太はスプリント練習に励みながら、ふと部員たちの中にいる一人の少女に目を留めた。高井戸沙也加、健太の恋人であり、陸上競技部のマネージャーだ。
「健太、今日の調子はどう?」
沙也加が笑顔で近づいてくる。彼女の長い黒髪は髪ゴムでまとめられ、まるで陸上競技場の風景に溶け込むように自然だった。
「調子は上々だよ。沙也加、いつもありがとう。」
「ううん、私の方こそ健太に元気をもらってるんだよ。」
二人は微笑み合い、健太の心には温かい感情が広がった。沙也加との関係は、彼の支えとなっていた。
その日の夕方、健太は家に帰ると、リビングで勉強に取り組んでいる真奈美を見つけた。長沼真奈美は、小学校3年生の時に健太のクラスに転校してきて以来の友人であり、彼女もまた健太に特別な感情を抱いていた。
「真奈美、今日は何を勉強してるの?」
健太が声をかけると、真奈美は少し驚いた様子で顔を上げた。
「えっと、数学の復習をしてるの。健太も勉強しないとダメだよ。」
「分かってるよ。でも、今日は陸上の練習が忙しかったからさ。」
健太は苦笑しながら答えた。彼の頭の中では、陸上と勉強のバランスに悩む大輝の姿が浮かんでいた。
夜遅く、健太は自分の部屋で一日の出来事を振り返っていた。彼の心には、陸上競技への情熱と受験勉強の重圧が交錯していた。
「俺はどうすればいいんだろう…」
健太はつぶやき、窓の外に広がる星空を見上げた。その瞬間、彼の心には一つの決意が芽生えた。
「どんなに辛くても、俺は走り続ける。それが俺の生き方だから。」
健太の心には、新たな一歩を踏み出す勇気が宿っていた。彼の前には多くの困難が待ち受けているだろうが、その一歩一歩が彼を成長させることを信じて、彼は進んでいくのだった。