統合報告書と運用報告書
『統合報告書』と言うモノがあります。
これは、企業の売上高、費用、利益、資産・負債といった法的に開示が定められている“財務情報”と、企業の社会的責任(CRS)、環境責任、知的財産、さらに企業統治などの“非財務情報”をまとめた報告書とされています。
元は、欧米などで海外の機関投資家などが、投資にあたって企業の社会的責任などを重視したことで、海外の企業で財務情報と非財務情報をまとめて発行するようになったとも言われています。
日本では、「コーポレートガバナンス・コード」により、上場企業に対し、非財務情報の開示に取り組むことを促しており、統合報告書を発行する企業が増加しているそうです。
特に、企業の強みや経営ビジョン、今後の事業展開、企業価値の持続的成長可能性(サステナビリティ)などをまとめ、ステークホルダーに長期的な価値創造の仕組みを理解してもらうことを目的にしているそうです。
ここ数年、日本経済新聞社では『日経統合報告書アワード』を実施しています。
今年で4回目となるのですが、その趣旨は、企業の情報開示や投資家との対話の重要性は年を追うごとに高まり、財務情報だけでなく非財務情報を含む企業価値情報の発信が広く深く求められるようになっており、ESG(環境・社会・企業統治)情報など投資家が注目する企業価値情報を開示する統合報告書を審査・評価することを通じ、企業の情報開示のレベル向上を支援することとされている様です。
昨年は、475社が参加し、グランプリにはコンコルディア・フィナンシャルグループ、東京応化工業、野村総合研究所が選ばれています。
今年のアワードは、どの企業になるのでしょうか?
『統合報告書』は、基本的に上場企業が発行するものですが、投資信託には『運用報告書』と言うモノがあります。
こちらは「投資信託及び投資法人に関する法律」(投信法)により、資産運用会社は、運用する投資信託の計算期間の末日(決算日)に法令等の規則(記載要件等)に基づき、運用報告書を作成し、知れている受益者に交付しなければならないとされています。
ちなみに、運用報告書は「交付運用報告書」と「運用報告書(全体版)」とあり、「交付運用報告書」が販売会社を通じて必ず受益者に交付されます。
「運用報告書(全体版)」は、作成のつど受益者へ交付することとなっていますが、「投資信託約款」に、運用報告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する旨を定めている場合、運用会社のホームページに掲載するなど受益者にとってアクセスしやすい方法で提供すれば交付したものとみなされます。
すべての受益者に交付される「交付運用報告書」には、先の法令等の規則(記載要件)のうち、重要な項目が記載されています。
特に、基準価額などの推移、投資環境や分配金の状況を記載した期間中の運用経過や今後の運用方針などが図表などを用い、わかりやすく説明されることとなっています。
なお、『統合報告書』の様なアワードなどはありませんし、どちらかと言えば、大半の投資信託が同じ様なひな型に基づいて作成されています。
これは、投資信託協会の規則等に基づいていることも要因かも知れませんが、それでも、独自の記載事項など、投資者本位の運営を行う資産運用会社もある様です。
本日は、ここまで。お付き合いいただき、有難うございました。