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恋のダウンタウンとジョージ―ガール

大学に入り、優雅に土曜日の昼下がりの時間を過ごしていることが多かったのですが、特にお気に入りの場所が有りました。
それは、自学学習用のフリースペースで、半分空の下と言えるくらい、開放的な作りで、春先などは吹き抜ける風が心地良すぎて、つい寝入ってしまうほどです。

この場所は、軽音楽部の練習場所になっていて、軽快な曲を何度も何度も繰り返し演奏しているのです。
その日も同じように練習が始まりました。
なぜ、心地よいのか、の元は風だけではなかったのです。そう、ウッドベースのあの響きがことのほか気に入ってしまったのです。

特に気にいったのは、タイトルにある二曲です。
アマチュアの演奏速度は概してオリジナルより早いのですが、ここの軽音は特にその傾向が強くて、ペトラ・クラークやニュー・シーカーズの原曲を聞いたときに、あまりにゆっくりなので、驚いた記憶が有ります。

それはともかく、その速い演奏にボンボンと響くウッドベースの音がたまらないのです。学校の校舎ですから、音響などは考慮されていませんが、打ちっぱなしのコンクリートの壁から跳ね返ってくる低いけれど軽やかに弾かれている弦からの響きが、かなり迫ってくる感じで臨場感をもたらしてくれます。

演奏自体は、普通のアマチュアなんですが、学生ならではの生きの良さと粗削りなハーモニーが、若さをことさらに強調していました。同じ大学生なのに、それをこんな風に見ている自分は、その時もしかして評論家になっていたのかもしれません。

学生時代の何も考えずに過ごしていた「贅沢な時間」を、改めて思い返してしまいました。

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