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【Report=真摯にエンタメ論・アイドル論語る生田絵梨花に思わず聞き入る報道陣、東宝が始動させた新プロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.」製発会見にキャストらの笑顔あふれる(2020)】

 東宝が直営劇場のシアタークリエをラボ(実験室)に見立て、若手の劇作家・俳優らとともに新作のオリジナルミュージカルを創る全く新しいプロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.(東宝ミュージカルラボ)」を始動させることになり、7月1日、東京・日比谷のシアタークリエで製作発表記者会見が行われた。乃木坂46の生田絵梨花は海宝直人とともに根本宗子の脚本・演出のもとミュージカル「Happily Ever After」に結集。木村達成、田村芽実、妃海風は三浦直之の脚本・演出で「CALL」に出演する。新型コロナウイルスの感染拡大の観点からシアタークリエと帝国劇場では3月以降ほとんどの作品が中止されており、今回のプロジェクトは再開への突破口になるとともに、新たな舞台表現を生み出すきっかけにもなるだけに、久しぶりの舞台の感触を肌レベルで感じたキャスト・クリエイターらの笑顔があふれる会見となった。生田と海宝は舞台で「Happily Ever After」の劇中歌「Around the World」を歌唱披露。ソーシャルディスタンスへの意識を持ちながら息の合ったハーモニーを響かせていた。(写真は、「TOHO MUSICAL LAB.」製作発表記者会見の様子。新型コロナウイルスの感染予防対策のため、写真撮影の際にはキャストの間には透明な仕切りが置かれた。「ポスト・コロナ」「ウィズ・コロナ」時代の新しい風景だ。左から作・演出の根本宗子、出演の海宝直人、生田絵梨花、木村達成、田村芽実、妃海風、作・演出の三浦直之=撮影・阪清和)
 「TOHO MUSICAL LAB.(東宝ミュージカルラボ)」の2作品は実際にシアタークリエの舞台で演じられるが、無観客で上演され、7月11日午後7時から、イープラスが運営する視聴チケット制のストリーミング・サービス「Streaming+」で生配信される。視聴には事前に「視聴券(税込み3800円)」の購入やログインなどが必要となる。

★続きは阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます(劇評など一部のコンテンツは有料ですが、リポート記事は原則として無料です)

★「TOHO MUSICAL LAB.」公式サイト

★製作発表記者会見で「Happily Ever After」の劇中歌「Around the World」を歌唱披露する生田絵梨花と海宝直人=YouTube(画像付きリンクを表示できませんので、URLをクリックしてYouTubeに飛んでください)

https://www.youtube.com/watch?v=53uToYNFchc&feature=youtu.be

★「TOHO MUSICAL LAB.」Twitter公式アカウント

★「TOHO MUSICAL LAB.」公式サイト

★視聴券情報

★イープラス「Streaming+」ご利用ガイド

 東宝では「TOHO MUSICAL LAB.(東宝ミュージカルラボ)」を「劇場に再び灯をともすためのプロジェクト」と位置付け、通常なら1年以上かかるオリジナルミュージカルの製作を「作・演出家へのオファーから1カ月弱、稽古2週間」という緊急性を持ったタイトなスケジュールで進行。この作品の上演・配信の後から始まる観客を入れての帝国劇場やシアタークリエでのコンサートや舞台につなげる。

 クリエイター陣にはいま最も旬な2人が選ばれた。
 根本宗子(ねもと・しゅうこ)は19歳で劇団月刊「根本宗子」を立ち上げコンスタントに舞台作品を発表・上演。2019年の「クラッシャー女中」では岸田國士戯曲賞の最終候補に残るなど注目度が急上昇中。
 また三浦直之は「ロロ」主宰で、唯一無二の舞台作品を生み出すクリエイティブな存在。NHKのよるドラ「腐女子、うっかりゲイに告(コク)る」では脚本を担当し脚光を浴びた。 ともに演出家でもある2人に託された2作品。根本の「Happily Ever After」には清竜人(きよす・りゅうじん)が作詞・作曲で、三浦の「CALL」には夏目知幸が作曲で参加している。

 「Happily Ever After」は「夜を愛し、願いを込めて眠りに入る少女(生田)と、その少女が触れることが叶わない彼(海宝)」の物語。ダンサーも参加しているが二人芝居だ。
 「CALL」は人がいないところをわざわざ選んで「聴衆のいない音楽会」を開いているガールズバンドがある廃墟に迷い込むことから始まる物語で、かつてそこは劇場と呼ばれていたことが分かって来るという物語。木村、田村、妃海にロロの森本華が加わる。

 根本は生田&海宝のコンビを最初から熱望していたことを明かした。「すぐ完成させるため、かねてから私が大ファンだった生田さんと海宝さんにやってほしい作品を書きました。キャストが決まる前からお2人の名前を(台本に)書いてプロデューサーに送りつけたところ、願いが叶って(笑)」と強引ながらも思いのこもった作戦で見事この夢のキャストを実現させたことを明かした。

 生田は劇場に集まった報道陣を見渡し「舞台稽古中はほとんど座席に人がいないので、皆さんが座っていることがうれしい。今ここで作品を観てほしいくらいです」とリップサービスとは思えない本音をポロリと漏らした。その上で「Happily Ever After」という作品について、「二人芝居でダンサーさんがいてっていう構成のミュージカルは私は観たことも体験したこともないです。普通デュエットなら手を取り合ったりとか、ミュージカルだと群衆で踊ったりしますが…」と何もかもが違う初めての体験に胸をときめかせる。「映像と舞台の間、ミュージカルとストレートプレイの間というか、今までにない雰囲気、世界観を出せたらいいなと思っています」と既にさまざまな構想が頭の中を駆け巡っている様子だ。
 自粛期間中は現役アイドルも兼ねる生田も活動の休止を余儀なくされた。「2カ月ぐらいは活動的なことができなかったですね。やっぱりエンターテイメントに触れていないと心が痩せていく感じがする。ほんとうに元気がなくなってきたんです」と打ち明ける。
 「普段は人に笑顔になってもらえるように、少しでも元気を与えられるようにと思ってやっています」と、癒しの笑顔に定評のある生田らしい心構えを披露するが、今回は活動の休止が続いたことで「お客さんやファンの方からもらうエネルギーはすごいんだなって感じました」と新たな気づきがあったようだ。「その方々が喜んだり、笑顔が見たいから、このお仕事をしたいんだなと感じました。そんな心の循環がエンターテイメントにはあるんですよね」とエンタメの核に触れたような表情を見せた。
 そして「私は元気がないとき、観劇を通してエネルギーをもらうことがよくあります」と自らの体験を語って「今回は私たちのエネルギーを少しでも伝えて、穏やかで優しく、楽しい時間を届けられたら」と具体的な抱負を口にした。

 海宝は劇団四季作品にも東宝ミュージカルにも引っ張りだこのミュージカルの申し子だけに演劇づくりの場に戻った今は「やはり幸せな時間」と稽古の充実ぶりを明かす。「世界中の人々が同じ不安を共有する状況は、そうそうあることではありません」と新型コロナウイルスに苦しむ世界に思いをいたして「辛さを共有しながらも、互いを癒す機会になったら素敵だなと考えながら稽古をしています」とエンターテインメントへの強い信頼を示し、それがみんなを再び結びつける力になることを確信しているようにうなづいた。

 三浦は「無観客配信を想定して作品を作るとき、これまで劇場に集まった人や、これから集まってくる人のことをたくさん想像しました」と劇場というものがキーワードになることを示唆。ピッチャーの投球がキャッチャーミットに届く『パンッ』という音が響いたプロ野球の無観客試合をヒントに、普段は観客の応援の声や音にかき消されている音が聞こえたことで、逆に「観客の不在」を認識させられたことに触れ、「今回はにぎやかさと寂しさを作りたい。キャストたちににぎやかな空気を作ってもらえれば、そのあとは静かな時間が流れると思う」と謎の多い作品へのヒントを報道陣に授けた。
 木村は自粛期間中にいろんな作品を観たが「僕自身はやっぱりプレイヤーだなと思った」と打ち明け、「人の作品を観ると自分もやりたくなるんです」と本音を語った。「僕の思いを舞台にぶつけ、全力で楽しんでこの作品を成功させたい。配信ではありますが、もし素敵だと思っていただけたら、画面に向けて拍手をしてもらえたらうれしいです。その思いはきっと僕らに届くと思う」とタガが見えない中でのコミュニケーションを呼びかけた。
 田村は舞台の延期や中止が続き「実家に帰ることも考えた」とかなり追い込まれていたことを語った。「でも、今回のお話をいただき、劇場の灯を絶やさぬように行動されている方がたくさんいることを知り、私も少しでもその力になれたらと思いました。この作品に自分の100%の力を注ぎ、一生懸命がんばりたい」と力強く話す姿が印象的だった。
 妃海は自ら稽古場のリポート。「毎日が驚きの連続。ただ配信するだけではなく、無観客を逆手に取った新たなエンタテインメントが作られていて、まさに実験室なんです。(新型コロナに)演劇界の動きが止められて淋しかったですけど、新しいものが生まれる機会になったのはすごく喜ばしくもあります」と「TOHO MUSICAL LAB.」という企画全体に期待を寄せた。


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