喪失感にあえぐ人々の壮大な再生の物語…★劇評★【ミュージカル=シークレット・ガーデン(2018)】
英国生まれの米国の小説家、フランシス・ホジソン・バーネットが1911年に発表した「秘密の花園(The Secret Garden)」。子どもたちの心情が繊細に書き込まれた小説の金字塔とも言えるこの作品に、大人の視点をふんだんに盛り込み、喪失感にあえぐ人々の壮大な再生の物語へと昇華させたミュージカル「シークレット・ガーデン」の日本版が初演されている。孤独に、屋敷に、仕事に、病気に、それぞれ身動き一つできない、見えない「牢獄」に閉じ込められた人々が、すべての突破口となる閉ざされた花園によって結び合わされるように居場所を得ていく様は、孤独の闇をますます深めている現代の人々の魂に直接作用し、大きな感動をもたらす。特に日本版を支える石丸幹二、花總まりの充実ぶりは驚くべきものがあり、少女メアリー、少年コリンを演じる子役たちも実力派ぞろいで揺るぎがない。石井一孝、昆夏美、石鍋多加史、笠松はる、上野哲也ら日本の人気ミュージカルを支えてきた芸達者な俳優を配し、若くして主演舞台を経験している注目株、松田凌も重要な役どころを担う。そんな名だたる俳優たちによって、一つ一つ糸を丁寧に紡いで仕上げられていく織物のように創り上げられた本作は、観客席に心地よい風を運んできてくれる作品になった。演出はスタフォード・アリマ。
ミュージカル「シークレット・ガーデン」は、6月11日~7月11日に東京・日比谷のシアタークリエで、7月14~16日に神奈川県厚木市の厚木市文化会館で、7月20~21日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、7月24~25日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。
★舞台「シークレット・ガーデン」公式サイト
http://www.tohostage.com/secretgarden/
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