イノベーションの種は、自分のなかにある【SEVEN BANK NOW】
「イノベーション」という言葉を聞くと、とてつもなく素晴らしい構想やビジネスモデルのことを指しているように思えますが、もしかしたら普段の生活や仕事の中で浮かんだひとつのアイデアも、世の中の困りごとを解決できるイノベーションとなる可能性を秘めているのではないでしょうか。
今回は2020年度に、経済産業省 / 独立行政法人日本貿易振興機構が主催する「始動Next Innovator」(※詳細は下記引用を参照)に応募し、見事、シリコンバレー・プログラム選抜メンバーに選出された、お客さまサービス部の小幡英明さんと、「始動Next Innovator」に応募したきっかけや、そこで得られた経験についてお話ししました。
中途入社してすぐの挑戦…自分のアイデアを試したかった
―小幡さんが「始動Next Innovator」に応募したタイミングは、セブン銀行に入社されてすぐだったと思いますが、元々応募したアイデアが頭にあったのでしょうか?
小幡:そうですね。セブン銀行に入社する前はリユース業界にいまして、そこで感じた課題をセブン銀行のATMなら解決できるのではないかということは漠然と思っていたので、会社で提案できる機会があればトライしたいとは考えていました。
偶然、お客さまサービス部の部長が、以前「始動Next Innovator」に参加した経験を持つ人で、当時まだ入社して間もなかったのですが、全力で挑戦を応援してくれました。
―それは心強いですね!では、具体的なビジネスアイデアの内容を教えてください。
小幡:私のビジネスアイデアは、簡単に言うと、自分が所有している物を売ることが難しい高齢者向けの、ATMを活用した宅配買取サービスです。
―高齢者向けのサービスなんですね。
小幡:はい。このアイデアを思いついた経緯から話しますと、前職の会社にいたときに、集合住宅向けの催事出店という形式で、マンションのエントランスで住民の方の買取りのご相談を受ける業務をしたことがあったのですが、そのときに高齢のお客さまがすごく多くいらっしゃっていました。
お話をしていると、売りたいものはたくさんお家に持っていらっしゃるのに、どこで売ったら良いのかが分からないからそのままにしていたり、ブランド品のような高価な商品であっても普通に捨ててしまったりしていることがあると分かりました。
「住んでいるマンションまで業者が来て買取ってくれるなら、手続きも楽だし、この機会に要らないものを売ってしまいたい」というニーズが、高齢者に関してはすごく高いんだなと実感しました。
デジタルの時代にすごく便利なアナログを
―リサイクルショップや宅配買取、メルカリのようなCtoCのプラットフォームなど、所有物を売る手段は色々あるように思えますが、高齢者にはそれらがあまり受け入れられていなかったということでしょうか?
小幡:そうですね。高齢者がそれらのサービスを利用したことがあまりないためによく知らなかったり、スマホを使った手続きに慣れていない方が多いということがネックになっているのだと思います。
―確かに、CtoCのプラットフォームを例に考えると、アプリのダウンロードに始まり、会員登録、本人確認、出品のための撮影、出品した中古品の保管、購入したい方との価格交渉やメッセージのやり取り、商品梱包、発送、代金の受取り確認といったことを全部、自分でこなす必要がありますからね…。
小幡:そうですね…。高齢者もスマホは利用されると思いますが、こういったすべてを自分でできるほど使いこなしているかというと、それなりにハードルが高いのではないかと思います。
小幡:リユース事業者側も、買取時の本人確認が古物営業法および犯罪収益移転防止法に準拠した義務となっているので、そのための作業工数が増大しているという課題を抱えています。
今話したような高齢者とリユース事業者の課題を解決できるのが、セブン銀行ATMではないかと考えたのが、私のビジネスアイデアです。
―ATMが介在することで両者がハッピーになるのではないかということですね。
小幡:そうです。まず、リユース事業者側の課題であった本人確認は、宅配買取の場合、スマホのeKYC(※)サービスを利用するか、中古品と一緒に本人確認書類のコピーを同梱してもらい、その後簡易書留郵便等で住所の実在確認をするといった方法で主に行われていますが、セブン銀行の新型ATMを用いれば、ATMで簡単に本人確認を完了させることができます。
利用者が高齢者だったとしても、「セブン-イレブンにあるATM」と伝えればかなり認知度は高いですし、本人確認書類をコピーしたり、慣れないスマホを操作するなどの負担を軽減できるはずです。
高齢者側の課題に対しては、複雑なスマホ操作は一切せずに完了するアプローチを考えました。ある意味、時代に逆行していますね(笑)。
―具体的にはどんなフローになるのでしょうか?
小幡:ATMネットワークを日本全国のリユース事業者と提携し、売りたい品に合わせた売り先候補をATM画面に表示することで、高齢者がATMで買取申込、振込口座の指定、本人確認を完了させることを考案しました。
―中古品の発送も店内で可能で、査定結果はお電話でお伝えできるとなると、高齢者がスマホを操作する必要はなくなりますね。
小幡:そうです。もちろん実際にこのサービスを実現するとなると、リユース事業者や店舗との調整などの検討が必要になるので実現のハードルは高いのですが、「デジタルの時代にすごく便利なアナログで攻める」という方向性で、高齢者に利用していただきやすいアプローチを考案できたのではないかと思います。
「響かない」と言われたアイデア…壁打ちを経てブラッシュアップ
―最初にアイデアを着想した段階で、高齢者をターゲットとしたサービスを考えていたのでしょうか?
小幡:ATMと宅配買取は相性が良いのではないかとは考えていましたが、最初はむしろ、仕事が忙しくてあまり時間がない20~30代くらいの方向けのサービスを構想していました。いざ部屋の断捨離しようと思っても、CtoCのプラットフォームだと買取が完了するまでに時間がかかるし面倒、と感じる方が多いでしょうから、中古品をコンビニに持ち込むだけで24時間いつでも買取ができてしまうサービスがあったら便利なのではないかと考えました。
―当初はターゲットが全然違ったのですね。
小幡:はい。自分のアイデアを社内の色々な人に話して壁打ちしていくなかで、「アイデアは面白いけど、ターゲットをどこに絞るかが重要なのではないか」という意見を多くもらいました。若年層の方はスマホ操作にも抵抗がないですし、他のサービスを利用した経験もある方が多いので、自分のアイデアだとあまり魅力的に映らないのではないかという懸念を感じるようになりました。
社内の新規事業を数多くサポートしてきた社員に、「なんか響かない…」という決定的な言葉をもらいまして(苦笑)。
考え直した結果、「売りたいけど売り方がわからない」という大きなペインを抱えている高齢者をターゲットにすることに落ち着きました。
―若年層であっても高齢者と同じ課題を抱えている方はいるかもしれませんが、ターゲットを高齢者に絞ることで、小幡さんのビジネスアイデアの良さが分かりやすくなる気がします。
小幡:そうですね。「なぜATMなのか?」というところが短いピッチのなかで伝わりやすくなったと思います。
完成版に到達するまで、社内外の方に何度も壁打ちをお願いしてフィードバックをいただきましたが、すごく有意義でした。
―「始動Next Innovator」の他の参加者ともコミュニケーションを持っていたのでしょうか?
小幡:はい。全体で100名ほど参加者がいましたが、所属する企業の規模や業種も様々で、話していて刺激になりました。今でもSNS等で交流が続いています。自社のアセットや技術を活かしたアイデアをそれぞれが持ち込んでいたので、お互いに壁打ちする機会もありました。
―今回の挑戦を通して知り合った方たちのコミュニティも貴重ですね。
小幡:そう思います。平日は通常業務をしながら、土日にオンラインでプログラムに参加をするスタイルだったので、多忙さはありましたが、自分と同じように「なんか面白いことをしよう」とする方たちと繋がれたことで、乗り切れたと思います。また、壁打ちや相談にのってくれた社内の関係者や、過去の「始動Next Innovator」の卒業生のみなさんのご協力にも感謝です。
コロナ禍で開催されるかどうは未定ですが、国内プログラムの後に予定されていたシリコンバレーへの訪問が実現すれば、さらに新しい刺激や発見があると思います。
―セブン銀行のATMの特性はもちろん、小幡さんのリユース業界のバックグラウンドがあってこそ、着想できた内容だったのではないでしょうか。
小幡:そうかもしれません。コロナ禍に家で過ごす時間が増えたことで、中古品を売ろうという方がすごく増えた実感が個人的にもありまして、業界を超えて連携することで、もっと新しいことができることができるのではないかと考えていたところでした。
金融業界にとどまらず、業界をまたいで新しいことを実現していける会社としてセブン銀行が面白いと感じて入社したこともあります。実際、社内を見渡すと、リユース業界を含めて色々な事業会社との連携が始まりつつあるので、自分の経歴を活かしながらそういった流れに貢献していけたらいいなと思います。
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