2年越しのシリコンバレー訪問で得たもの【SEVEN BANK NOW】
依然としてコロナ禍は続いていますが、徐々に人と人との交流も再開し始めています。そんななかで自分にはない新しい視点や、有益な学びを得る機会に恵まれることも増えるかもしれません。
今回は2020年度に経済産業省 / 独立行政法人日本貿易振興機構が主催する「始動Next Innovator」に応募した、お客さまサービス部の小幡英明さん(応募の背景やビジネスアイデアについてはこちら)と、2022年7月に開催されたシリコンバレー・プログラムについてお話ししました。
ユーザの本当のニーズを探るというアプローチ
―シリコンバレー・プログラムの参加、お疲れさまでした!
小幡:ありがとうございます。コロナ禍の影響で、2年間空いてしまいましたが無事に訪問できてうれしかったです!
―待ちに待ったシリコンバレーへの訪問だったと思いますが、いかがでしたか?
小幡:移動を含めて1週間という限られた期間でしたが、スタンフォード大学、google社、Plug and Playなど、多くのイノベーションが生み出されている場所へ訪問して、様々な方のお話を聞くことができました。また、自分のビジネスアイデアのピッチや、メンタリングも経験させていただき、国内でいただいたフィードバックとは異なる視点のアイデアをもらえました。
―スケジュールはハードでしたね…!でも得られるものも多かったということで…!
小幡:そうですね。印象深かったのはPlug and Playへの訪問ですね。Plug and Playは、世界トップレベルのアクセラレーター・ベンチャーキャピタルとして著名な企業ですが、シリコンバレーが創業の地で、オフィスも広大でした。
今回は、Plug and Playに駐在されている日本企業の方のプレゼンテーションをお聞きできました。現地のイノベーティブなスタートアップと日本の本社をつなぐミッションをもって、シリコンバレーに駐在していらっしゃるということでしたが、実際に事業共創まで発展させるためには様々な課題が社内にあることが分かり、社内の意識変革も含めて取り組んでいるということでした。
「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、自分自身も現地に身を置くことで新たに気付くことが沢山あったので、納得感を持ってお聞きしていました。
また、過去に駐在した社員の方が自身のビジネスアイデアをシリコンバレーで事業化したお話は、自分のビジネスアイデアにも関連するところがあって参考になりました。
具体的には「KUPO」という電動アシストカートの開発をした方のエピソードだったのですが、「既存の電動車いすをどう進化させるか」という視点で普通に考えると、機能性、安全性を向上させたほうが良いと考えがちですよね。でも、実際に高齢者が買われるのは、機能が高くはない歩行補助車であるということに気づき、違和感を持たれたそうです。理由を突き詰めていくと、ユーザのニーズである「自分で歩きたい」という欲求に、歩行補助車のほうが合っているからではないか、という考え方に至ったそうです。
―「自分で歩きたいけれど、サポートなしでは難しい」ということが本質的な課題ということですね。
小幡:はい。街中で車いすユーザの高齢者へインタビューを行って、率直な意見を聞いてくうちにそれに気づいたそうです。そうはいっても、ずっと歩くという行為は身体的な負担も大きいので、最終的には、歩行補助車と車いすのどちらにも利用できる形態に至ったそうですが、このアプローチ自体は自分のビジネスアイデアにも必要ではないかと思いました。
―小幡さんのビジネスアイデアも高齢者をメインターゲットにしていますね。
小幡:そうですね。私のビジネスアイデアは、不用品の買取をスマホではなく、ATMを介して受付けるというものですが、スマホ上の手続きの煩雑さを解消することにフォーカスしすぎていたかもしれないと思いました。
高齢者からすると、「他人の力を借りずに極力自分でできるようになりたい」という気持ちも根底にあるのかもしれないですよね。なかなか口にしづらいことかもしれませんが…。
いずれにしても、ターゲットとして想定しているユーザのインサイトをどう掴むか、ありのまま受け入れるかということを考えさせられました。
―案外こちらが予想していたことと、実際に想定ユーザが思っていらっしゃることって違うかもしれませんね。
小幡:そうですね。セブン銀行のATMも高齢者や視覚障がいを持つ方を意識して開発をしている点もあると思うので、ユーザの本当に思っていることを探るこういったアプローチはとても勉強になりました。
様々な視点を含んだフィードバックで、自身の考えがクリアに
―現地でピッチやメンタリングもあったということですが、どうでしたか?
小幡:ピッチは全部で2回あり、1回目と2回目の間にメンタリングを挟んだので、ビジネスアイデアのブラッシュアップができました。
様々な方からフィードバックをいただいたのですが、印象深かったのはシリコンバレーでは事業の立ち上げにくわしいデザイン会社の方にアポイントメントを取って、直接ご意見を伺ったときのことです。
結論からいうと、「ローカライズをきちんとしないとうまくいかない」というシンプルなフィードバックだったのですが、たとえばアメリカをケースにすると、不用品についてはガレージセールで近所の人に売り払うのが一般的なので、業者やプラットフォームを介して売買するということは面倒を生むだけとなってしまい、考えにくいそうです。確かにリサイクルショップも現地でほとんど見かけませんでした。
こうした二次流通に対しての価値観は事業に大きく影響するので、スケールを広げる際にまず考慮しなくてはいけないものだという認識を強くしました。
―なるほど。日本以外を市場として捉えるにあたって難しい点もあるということですね。
小幡:はい。ピッチをした際に、現地のアントレプレナーの方から「どうスケールを広げるのか?」という指摘を受けていて、自分としてはモヤモヤしていたのですが、そういった割り切りも必要だなと、ちょっとスッキリして考えられましたね(苦笑)。
リサイクルショップやフリマアプリがこんなに利用されるのは、日本の独特な文化なのかもしれないとも感じました。
その他にも「なぜ敢えてスマホを使わないサービスをやるのか?」というコンセプトの根底の指摘や、「高齢者の不用品をなくすことは本当に社会課題の解決になるのか?」という社会的な視点の意見もいただきました。
ポジティブなものでは、事業性だけではなく、SDGsの観点から評価をいただくなど、自分のなかになかった視点が多く新鮮でした。
―ネガティブもポジティブも、意見を沢山もらえるのは貴重ですね。
小幡:はい。あとは以前フリマアプリの事業に携わった方からは、「個人のユーザ(お客さま)と業者の仲介をする立場として、具体的にどこまで負うのかもクリアにしないといけない」というアドバイスをいただきました。たとえばお客さまからの問合せにどの程度対応するのか、それによって手数料の体系も大きく変わるので、こうした具体的な運用についてもクリアにしていく要素だと感じました。
―なるほど。これからご自身のビジネスアイデアをどうしていきたいという希望はありますか?
小幡:そうですね。金融機関や一部サービスの当社ATMでの本人確認サービスは、今PoCを実施しているところですが、さらに二次流通の買取受付へと拡大していくとしたら、そこには関わっていきたいと思っています。サービス利用開始時のみならず、1人のユーザが何回でも使う可能性のあるビジネスモデルなので、ユーザの方の日常に溶け込んでいける可能性があると感じています。
一方でまだまだ考慮しないといけない要素が多い状態ですが、シリコンバレーで学んだ「目の前のユーザのニーズや課題を、そっくりそのまま受け入れる」ということを実践していくことがまず大事だなと思います。
加えて、今回一緒にプログラムを過ごした方々のような、イノベーションに向けて活動している人との交流や、失敗を恐れずにトライしていく気持ちが鍵になると思います。
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