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少年サッカー、そして怪我のこと vol.7

ジャイアン

 これまで息子のサッカーチームとそれにまつわる一連の出来事をテーマに、一部の少年サッカー指導者に対して手厳しい批判を行ったわけだけど、私も親として深く反省していることがある。

 息子は5月生まれで小学校に入る前から同学齢の子どもたちよりも身長が高く、小学校の運動会でもリレー選手の常連だ。vol.1に書いたけど、私は体育も先生も嫌いでリレー選手に選ばれたことなんて一度もないし、徒競走は衆目の前で自分の足の遅さを証明されるだけで運動会なんて雨で中止になれば良いといつも思っていた3月生まれだ。

 だから、ドラえもんのコミックを貪り読んでいた息子(5歳くらい)に向かって「お前はジャイアンにだけはなるなよ。弱い子やいじめられてる子がいたら助けてあげなきゃダメだぞ」と、繰り返し釘を刺していた。

 要するに、背が高いとか足が早いからといって調子に乗るなよ、いじめっ子になるなよ、と事あるごとに忠告してきたのだ。そして、私自身がいじめられたときの体験や、そのときどんな気持ちだったかを何度も話して聞かせていた。

 それは彼に少なからぬプレッシャーをかけていたと思う。私が出来なかったにもかかわらず、自分がそうあって欲しいと思う子どものイメージを一方的に押し付けていた。

 でも、息子はかなり小さな頃からその教えを忠実に守っていた。そのことで他の親御さんに感謝されたことも多々ある。

 だから彼は自分の親友がいじめられていることを知るや、それをやめさせようと相手に直談判したし、それは彼にとって父に胸を張れる誇らしい行為だと自覚していたはずだ。それを聞いて私も彼を褒めちぎった。

 それなのに、彼自身がチームでいじめられていると打ち明けてくれたとき、私は彼にもうひとつの重荷を背負わせてしまった。

 私は子ども同士のトラブルに介入するつもりはなかったし、それは息子自身で解決して欲しかった(これも親の理想だ)ので、「悪口を言われたくなかったら、こいつにはかなわないと思われるようなことを徹底的にやってごらん。文句言わせないくらい上手になってごらんよ。」と提案した。

 これも言うべきじゃなかった。無責任な押し付けだ。

 すでに心が傷ついているところへさらに精神的、肉体的負担をかけてしまったと思う。息子はその日から今に至るまで毎日毎朝、家の前でリフティングなど1人で出来る練習を続けている。

 私は彼を、私の思う理想的な子どもにするためにコントロールしていた。これは親のエゴだ。

 彼は純粋にサッカーが大好きで楽しんでいたのに、私はサッカーを利用して個人的な仕返しすることを提案した。自分はサッカーなんて出来もしないのに、息子にはサッカーのスキルで武装しろとけしかけた。

 仮にそれが達成できたとしても、サッカーを自己防衛の目的にさせたのは良くない。もし出来なかったら彼は自分を責めるだろうし、実際に思うように行かないとき、彼はしばしば自分を責めていた。彼の性格(繊細で自分より親を喜ばせることを好む)を知りながら私が余計なことを言わなければあれほど傷つかずに済んだかもしれない。

 時すでに遅しとはいえ、それに気づいてからは練習や試合のあとに息子の話をできるだけ聞くようにして、時間があれば自主練につきあい、心の安全地帯を作るように心がけた。

 だから、私は指導者や環境のことばかりを責めることはできない。私は息子に対して、子どもの頃にできなかったことの代理達成を求めてしまっていた。

 本当に申し訳なかった。ごめんね。パパが悪かった。

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