見出し画像

第7話

相談屋さんはスタスタと歩くので私は小走りで着いて行くのがやっとだ。

早いってば……。

私をチラッと見て少しだけ歩く速度を緩めてくれた。
この人案外優しい人なのかも……。

『俺の名前はヨウマだ』

今更の自己紹介に思わず笑ってしまう。
あれ?そういえば直樹の家の場所って説明したっけ??
ヨウマさんは間違える事なく直樹の家の前に着いた。

直樹の家の周りには黒い煙の様な悍しい気配が渦巻いている、ヨウマさんがいなければ近づくことさえ出来なかった。

『凄い霊気だな……。』

そう呟くと面倒くさそうな態度を見せる。
この人に任せて本当に大丈夫なのかな……、とまた不安になる。
そんな事を思っているとヨウマさんが何やらブツブツと呟き出した。

ゾクッ!!

あの忌まわしい霊気を纏った悪霊が姿を現す。
恐ろしい気配が私を見つめニタリと笑った様に感じ、私はただ怯え小さくなるしかなかった。
その時だった。

ヨウマさんから物凄い気が放たれ強い風が一気に吹いてきた、私は立っている事が出来ず転がって行く。慌てて起き上がりヨウマさんに視線を向けるとそこには嫌な気配はなく静けさを取り戻していた。

ヨウマさんに近づくと、彼の手には小さい箱が収められその姿はボロボロで傷だらけになっていた。申し訳ないとばかりに私の顔が泣きそうになると頭をぽんぽんと撫でてくれた。

『その箱……。』
『これは俺が預かっておく、また見付けられても困るからな』

さて、とヨウマさんは呟きタバコに火を点けひと吹かしすると、直樹の家の中に土足のままズカズカと入って行った。いつもならおばさんが出てくるはずが、まるで誰も住んでいない様な異様な静けさに包まれていた。ヨウマさんの後から直樹の部屋に入ると今まで感じた事の無い恐怖で私は足が竦んでしまった。

!!!!

熱でうなされている直樹の上で黒い人影が浮いていた。
私達の侵入に見向きもせずただ直樹を見つめる。

これが死神……。

大きな鎌もなく顔も骸骨でも無い、黒い塊の闇を纏った人影。
人は本当の恐怖に出会うと声も出ないのだと初めて知る、そしてそこにあるのは絶望・喪失感、気を失いそうになるのを必死で耐える。言葉では言い表せないほどの恐怖と威圧感に体の力が抜けそうで同時にガタガタと体が小刻みに震え出す。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?