第8話
無意識に直樹に手を伸ばす。
助けなきゃと気持ちが先走るのだ。
『近付くな』
その口調は強く真剣だった。ヨウマさんでも油断出来ないほどの相手なのだ。
『少しでも奴に触れるとあの世行きだ』
彼の言葉にビクリと体を縮ませる。
『その子を返してくれないか??』
ヨウマさんの言葉に死神は、こちらに視線を向け顔らしき部分に口が現れニタリと笑った。
『お、お願い…します。彼は私の大切な幼馴染なんです。お願い…返して!!』
私は震える声でやっとの思いで叫んだ、だが、死神は何も反応せず身に纏う闇を蠢かす。
どうすれば……。
困り果てた私を見て、突然、ヨウマさんが話し出す。
『チッ!タダでは聞かないって事かよ』
もしかして、何かを引き換えにしろと言っているのだろうか……。でも何を??
『10年』
???
死神は反応を示さない。
『おいおい!図に乗るなよ!!』
ヨウマさんは顔をしかめて死神を睨みつける、すると。
《30》
死神が声を発するだけで私の体は一気に凍りつくほどゾッとする。
『…………25、これ以上は無理だ』
『………良かろう、それとそこの娘を貰う。珍しい血を引いている』
『それは出来ない!!彼女は関係ない!分かったよ、俺の命の30年分やるからとっとと出て行きやがれ!!』
そこで初めて、命の、寿命のやり取りをしているのだと気付く。直樹を助ける代わりにヨウマさんの命が削られてしまう!!そんなのはダメだ!!
『待って!!だったら私の命をあげる。でも条件がある』
ヨウマさんは納得していない様だったが、死神との契約は成立した。死神はのっそりと動き出すと身に纏う闇を広げた。
『きゃぁっ!!!』
次の瞬間。
私の方に向かって来て体をすり抜けて行くと、私は威圧感で部屋の隅に吹き飛ばされた。その手には赤く煌々と輝く炎を持って呟く。
《また……約束の日に……会おう……》
口らしき部分がニタァと歪み部屋の壁をすり抜けて消えて行った。
『二度と会いたくねぇよ』
ヨウマさんの言葉に少し笑った。
そして直樹の表情は一気に血の気を取り戻し安らかな寝息を立て始める、それからは超人的な速さで回復したのだった。
ホッとする反面いつものおふざけが炸裂して何だがすごくムカついてしまったのは言うまでもない。
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