パラレルワールド4
おじさんに床下から引き上げられ立ち上がる、そして今の現状を説明してくれた。
おじさんの後ろで隠れていた女の子がひょっこり顔を出し心配そうに俺を見つめる。俺はお礼も言えないので頭を撫でた、すると女の子は嬉しそうに笑ったのだ。
『あまり触れない方がいい……。これから君を元の世界に返す手順を説明するからよく聞くんだ。時間があまりない進みながら話そう』
聞きたい事は山ほどあるが、今はそんな時間は残されていない。この世界に来てからかなり時間が経過しているのにハッとする。このままでは本当に帰れなくなってしまう、そう思うと体にゾクッと血の気が引くのを感じた。
おじさんの言われた通り着ていた服をビリビリに破り土をかけ他の人達と変わらない服装になり下を向いておじさんの後ろから着いて歩く。時々、人とすれ違ったがおじさんが上手く交わしている様子だ。
そして意外にもすんなりとエレベーター前に辿り着いた。そこで俺はメモとペンを持ってきた事を思い出しおじさんに筆談する。
「助けて下さって本当にありがとうございました。あの……あなたも一緒にこちらに帰りませんか?」
『困った時はお互い様ってやつだ。……俺は自分の意思でこちらに来たんだ、後悔はしていない』
「でも!あの人達は危険です!なんなら女の子も一緒に……。」
俺の問いかけに苦笑いして顔を横に振る。
『この子はここでしか生きられない、それに俺はもうこちらの物を口にしているし、あの連中らとも上手くやっているから安心しろ。』
そしてまたあの強い口調で話す男達の声が聞こえてきた。
『早くしろ!もう二度と来るなよ。』
俺はなんとも言えない気持ちのままおじさんと女の子にお辞儀をしてお別れの挨拶をした。エレベーターがゆっくり閉まり始めた時、おじさんがハッと思い出したかの様に叫んだ。
『セイヤに気を付けろ!奴を信じるな!あいつは……』
そこで扉は閉まり俺のパラレルワールドでの体験は幕を閉じたのだった。
そしてボロボロの姿のまま家に帰り、パソコンでセイヤさんのサイトを開こうとした。だがどこを探しても見当たらず混乱しているとメールが届いた。
「仲間になれず残念」
俺は恐怖で顔から血の気が引くのを、ただ突っ立ってパソコンを見つめるしか出来なかった。
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