12月25日-3
ーミカのXmasー
ガラス張りの室内では白衣を着た男女が、緊迫した様子で慌ただしく動き回っている。
ただそれをもどかしく見つめる事しか出来ず、両手をグッと爪痕が残るほど握りしめる。
『急いで!!』
『先生!心肺停止しました!!』
心臓の鼓動を映し出す機械がピーッと高音の音を立て、室内が一瞬凍りついた様に固まり機械音だけが響き渡る。
『いや…ミカ……』
医師が最終確認をしてこちらに向き直り、苦々しい表情をして顔を横に振る。
『いやぁぁぁぁーー!!』
狂った様に悲痛な叫び声がシーンとした廊下にこだまする、母はそのまま泣き崩れ父は無言で涙を流した。
シャン シャン シャン
えっ……。
今の状況に似つかわしくない音がした。
両親は、涙に濡れた顔を不思議そうにして見つめ合う。
ーーピッ ピッ ピッ
再び無機質な機械が波を打ち音を奏始める。
医師達はその状況に驚きつつもすぐに指揮を取り慌ただしく走り回る室内、そして、こちらを見つめゆっくりと希望に満ちた表情でコクリと頷いた。
大丈夫。
その目はそう言っていた。
『あぁ…。ミカ……。』
室内では医師が独り言の様に呟く。
『………奇跡だ…』
その時少女の口元が微笑んだ事を誰を気付かなかった。