Another Story4
彼女が出て行ってからヨウマは随分落ち込んでいる、しかしこれで良かったのだ、これが彼女の運命なのだから。
『ヨウマ、あまり深追いはしてはいけません。』
『……分かってる!でも!こんなのは……あまりにも悲しすぎる……。』
『これもまた必然なのです、彼女が自らの契約で自分の命を引き換えに幼馴染の命を救う事も、そして孫娘のサエさんの運命を守ったのも。』
巫女の血を濃く引き継いだ彼女の孫もまた辛い未来を歩むはずだった、それを記憶操作して全て無かった事にして一族を解散させたのだ。
孫娘だけには幸せな未来を歩んでほしいと。
『でも一つだけ分からない事がある、何故死神はミツキをすぐに連れて行かなかったのか……。』
『…………さぁ、どうしてでしょうね』
そう、あの時。
死神にこう呟いたのです。
《この子は巫女の血を濃く引く者、今すぐに連れて行くより長生きさせ徳を沢山積ませる事でその魂はとても素晴らしい代物になるでしょう。それを手に出来るのです、心配ならずっと彼女の側で見守り余計な者がいれば排除すればいい》
とね。
まぁ、力ずくで従わせる事も出来たのですが事を穏便に進めるのが良いですからね。
納得いかないとまだしかめっ面のヨウマは突然思い出したかのように話し出す。
『忘れる所だった、この前頼まれていたアイツの周辺を調べたらどうやらビンゴだったぜ。』
『やはりそうでしたか。』
私達を付け回している男、彼にも黒い闇が纏わりついていた、そして少しの血の匂い、これは彼ではなく誰かから移った物でしょう。
穏やかでは無いですね。
『マキさんに言われた通り、わざと後を付けさせてこちらに入れる様にしといたけど、良いのか??』
『はい、有難う御座います。それで十分です、きっと今の彼はここに来るのに相応しいのです』
マキの言葉にまたヨウマは悲しげな表情をするが、それを隠す様にサングラスをかけた。
その後ろで、赤い炎がゆらゆらと優しく揺れその空間を暖かく灯す。
煉獄の炎がそろそろいっぱいになりそうだ。
ぽぅと優しい光に包まれて次の瞬間それらは一気に闇へと消えて行った。
どうやら次のお客様は決まっている様です。
さて、お迎えの準備を致しますので……。
煉獄の炎がいっぱいになるとどうなるのか?で御座いますか?
…………。
私達はある罪を犯しここに縛られているのです、人から恐怖を集め浄化すればその恐怖が煉獄の炎に溜り、私達の罪も浄化されるので御座います。
罪とは?で御座いますか?
それは……聞く覚悟がお有りでしたらいずれまたの機会に。
それでは失礼致します。
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