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第4話
あの怪しい男に会ってからますます俺は苦しんでいた。
たまにしか聞こえなかった幻聴がほぼ毎日聞こえてくる、それも赤ちゃんの泣き声だ。酷い時は一晩中ずっとだ。
もう止めてくれ!!
そして、いつも誰かに見られている感覚があり気味が悪い。ついには真昼間からその姿をちょくちょく見かける様になる。
仕事場でも外を歩いていても部屋でも…。
永遠に終わりのない迷路に迷い込んだ様に俺は逃げ回り出くわしては逃げるを繰り返す。
何なんだよ!!俺が何をしたっていうんだよ!!
ヘトヘトになり家路に着く、家の中に異常は無いかと神経質なまでに見回りあの嫌な視線もなく少しホッとする。
汗でベタついた体を流そうとシャワールームに駆け込み考える。
霊的なスポットに行ってもいない、誰かに恨まれる様な事もない、恨みたいのは俺の方だ。
毎日上司の嫌味や嫌がらせを受け、やる気のない部下にも振り回され、長年付き合っていた彼女からは振られ、踏んだり蹴ったりなのは俺の方なのに…。
そして一番信頼していた友人の裏切り……。
裏切り……??
あれ??
俺の中で何か矛盾していると心が騒ぐ。何かを見落としている様な、モヤモヤするものが俺の中で渦巻く。何かが違う、何か忘れている様な大切な何かを……。
シャワーを済ませベットに横たわるとそのまま眠ってしまった様だ。
けたたましい赤ちゃんの泣き声で驚いて目が覚め飛び起きる。
ベランダの窓に人影が二つ並んでいた。
恐怖で叫ぼうにも声にならない。
足元に温かい感触がして布団をそうとめくると赤ちゃんがしがみ付いている。
ヒィィィィ!!
慌てて足を引っ込めて赤ちゃんを見ると血塗れで斬り付けられた様な傷があちらこちらにあった。
うわぁぁぁ!!
驚いてベットから転げ落ちると顔のすぐ側に足が見える、恐る恐る見上げるとそこには血塗れの男と女が凄い形相で睨みつける様に立っていた。
《……ぃ……許さ……ない……》
憎しみの込もった声でそう呟く。
『ゆ。許してくれ…。俺が悪かった!!』
そう叫んだ時、俺の頭の中で何かがパンッ!と弾け飛んだそしてベットの下にある物を見つけみるみる血の気が引いていくのを感じた。
何で……。
ゆっくりと黒い塊の二つが近づいてきて、凄い力で押し潰そうとする。
もうダメか…仕方ない…。
そう感じた瞬間。