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第9話

あれからお店に帰ってマキさんに事の詳細を話して聞かせた。

『……という事があったんです』
『左様でございましたか、お友達が無事でよう御座いましたね』

話し終えると不思議な事に今まで恐怖で凍りついた心がふわりと軽くなった気がする。マキさんが渡したい物があると席を離れる。

カウンター奥で相変わらず煙草を吹かしているヨウマさんの前まで行き私は手を突き出す。

『何だ??』
『依頼料です、全然足りないでしょうけど必ず全額支払います』

その時初めてヨウマさんがふっと優しい笑みを溢した。

『子供のくせに気を使うな』

そして私の頭をくしゃくしゃに撫で回す。こんな風に優しくされた事の無い私は何だが嬉しくて泣きそうになる。

『ヨウマ、ありがとうございます、は?』
『ヨウマさん、ありがとうございます……??』

促されるように言葉を繰り返すとヨウマさんは満足げに頷いた。

『お代は今ので十分だ!じゃあな!』

私はポカンと口を開けて見つめると、ヨウマさんは立ち上がり後ろ姿で手をヒラヒラさせタバコの煙をたゆらせながら去ってしまった。
その後ろ姿に気持ちを込めてお辞儀する。

しばらくしてマキさんが、戻ってくると私にお守りだとピンク色の数珠を手渡してくれた。

『きっとあなたを守ってくれるでしょう、約束の時まで肌身離さずお持ちになると良いでしょう』

そして、いくつかのアドバイスを貰いこれからの私の人生大切に生きようと心に誓い、お店を後にした。
空はすっかり日が落ち始め茜色に染まっていた。

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過去の話しを終えるとサエちゃんの表情は落ち着きを取り戻し安心しているようにも見えた。

『もう大丈夫じゃよ、これ以上苦しんだり悲しんだりする必要は無くなるからね』
『うん、ありがとう。何だかお祖母ちゃんに話したらスッキリしちゃったよ』
『もう日が暮れるからお家におかえり』

サエちゃんは笑顔になり手を振り帰って行った。最後の仕事をしなければならない、これから私に残された時間でサエちゃんを守る為に全ては順調に進んでいる。最後に彼女から恐怖という記憶を消してしまえば……。


ーーーー現在ーーーー

私はその気配を感じて振り返ると、そこにはあの恐ろしかった死神が立っていた。

『………約束の日だ……。』
『長らく待たせてすまないね……。では、マキさんヨウマさん本当にありがとうございました、さようなら』
『…………。』
『お気をつけて』

深々とお辞儀をして私は闇の中に消えて行く。
もう二度と会えないであろう、彼らは一体何者なのか?そんな事は知る必要は無いのだと今は思う。

真実は、私は彼らに出会い考えが変わりそして幸せだったのだ。では、心優しき彼らの幸せはどこにあるのだろう??
それもまた私の知るところではないのだろうが、幸せな事を願う事しか出来ない。



                     ーーー第4夜・完ーーー



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