埼玉の条例改正案問題で、ワーママが追い詰められるのは環境のせいだけではない
虐待禁止条例の改正案とは
シンプルにまとめると、
10月4日、埼玉県議会自由民主党議員団(自民)が議員発案の条例の改正案として提出
主旨は、子どもの放置など悲惨な事件が相次いでいることへの懸念
罰則規定はないものの、子どもを「放置」することを児童虐待と位置づけて禁止
保護者などに対して小学3年生以下の子どもについて「放置」の禁止を義務づけ、小学4年生から6年生までは努力義務
さらに、「県民は、虐待を受けた児童等を発見した場合は、速やかに通告または通報しなければならない」としている
一方、罰則規定は置かれていない
10月10日、県議団が先週提出した虐待禁止条例の一部改正案を取り下げる
放置の例
▷子どもを車の中に置き去りにする
▷子どもたちだけの自宅での留守番
▷未成年の高校生に小学生などのきょうだいを預けて買い物に出かける
▷子どもだけ家に残してゴミ捨てに行く
▷子どもたちだけで公園などで遊ぶ
▷子どもたちだけでの登下校
▷子どもにおつかいさせる
世論をざわつかせた理由
特に「ワーママが」という視点でまとめてみます。
実現するための環境が整っていない、ことがほとんどでしょう。
埼玉県の学童保育の待機児童数は1554人で、前の年より324人増えていて、東京に次いで全国で2番目に多くなっています。(埼玉県調べ)
「放置の禁止が義務」といわれても「は?」となるのは当然です。
経済的な理由で働いておられる方も多くいらっしゃいます。
ベビーシッター代が負担になることは十分考えられます。
登下校に付き添いをしてくれるはずの大人ができなくなった時など、予想外のことにすぐ対応はできません。
シングルの方や様々な事情で周囲のたすけを得られない方もいらっしゃるでしょう。
ただ、県議団は何年も学童保育の拡大を言い続けていたそうなので、実態を何も知らずに提出したわけではないようです。
一方、これはわかりやすい「ざわつき」であって、本当の理由はこれだけなのでしょうか。
結果として「放置=虐待」をしてしまう私はひどい親なんだろうか
働いているいないに関わらず、自分の子育てを振り返ったときに、まったく後悔していない親はいないと思います。
ただ、泣く子を保育園に預け、何かと急かすことが多いワーママにとって、思い出すだけで心が苦しくなるような場面は数えきれないほどあったのではないでしょうか。
一体何のために働いているのかと自問自答することもあると思います。
そんな状態のワーママに、「目を離したら(離すような状況を作ったら)それは虐待なのだ」とひとくくりにするのは、あまりにも残酷です。
先ほどの例では、パチンコをするため、異性にあうために車内に放置するのは言語道断です。
一方、学童の不足だけでなく、どうしても子どもが学童になじめないなど、一人にさせたいわけではないけど、子どもの気持ちを思えばやめさせたほうがいいのかなと、何度も何度も考え決断することもあるのです。
虐待とは真逆の発想です。
1年生の壁というのは、施設が足りない、時短ができないという物理的なことに加え、子どもの気持ちを尊重するという選択肢が絡むので複雑なのです。
この議論まで到達するには、まだまだ時間がかかりそうです。
行政、企業の役割は?
このニュースでしばしばコメントされていたのは、「昔は近所に地域の目があって...」というものでしたが、「今はない」という前提で話をすすめることが建設的です。
また、非常にまれなケースだとは思いますが、信頼していた大人が犯行に及ぶということも0ではありません。
大前提として、子どもに限らず居住者の安全を確保するのは保護者だけでなく、行政の役割です。
あまり話題にのぼらないのですが、このニュースを聞いた企業はどう感じたでしょうか。
仮に本当にこの条例が施行されていたら、埼玉県に住む該当するお子さんがいる社員には特別な措置をとるのでしょうか。
そのための補助金もでるのでしょうか。
拙速さが取りざたされていますが、そのあたりへの言及もなかったように思います。
*私の経験
確かに、思いがけないことは起こります。
ちょっと話はそれますが、息子が小学生、娘が保育園の時に、東日本大震災が起きました。
日中だったため、それぞれ保護者が迎えにくるまで、先生方が安全を確保してくださっていました。
息子はおにぎりや防寒のための銀色のシートが配られていたタイミングでした。
仮に下校後で、息子が家に一人でいたり、外で遊んでいる時に地震が起きていたら、私は虐待をした親になっていたのでしょうか。
電話もネットもつながらず、当時は車通勤でしたので、いつもなら40分程度の道のりを4時間かけて帰りました。
おそらく、あの状況で私を非難する人はいないでしょう。
でも、その時代にこの条例があったら、悔しさ、やりきれなさで、泣けてきます。
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