【連載小説】純文学を書いてみた3-4
お盆ぼんぼん
我が家ではSwitch買う・買わない論争が…
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12回目よろしくお願いいたします。
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毎週土曜日に僕らは会うようになった。
学校に車で行き、父の点字本を受け取る。その後図書館で彼女に点字を教わった。自分でも驚くくらい覚えがよかったのはきっと彼女の教え方もあったのだろう。成績がどんなものかは知らなかったが、おそらく彼女は優秀な生徒なのだと思った。
1月にはセンター試験を受けるそうだ。点字でセンター試験が受けられることが驚きだった。
図書館には点字を打つタイプライターがあって、彼女がそれを打つ速さにはいつも驚かされる。一分間に300字近く打つことができるのだから本当にすごい。タイプライターは点字の6点のみを打つもので、真ん中にスペースキーのようなもの、さらに右手に3つ、左手に3つのキーのようなものがある。彼女がそれを使うと残像で指が20本くらいに見えた。これは誇張でもなんでもなかった。
「すごいでしょ」と、えらそうに説明されることが多くて、素直に「すごいね」などとは言わなかったけれど、僕はひそかに彼女のタイピングに賞賛を送っていた。
彼女のピアノを弾くようなリズムで意味を与えられた文字たちに、僕は父の専門書の中にある文字たちとは違った魅力と、彼女と文字たちの不思議な影像が、僕の脳裏の一部屋を占拠するような感覚を残した。
点字ではないけれど、もうひとつ僕が驚いたのは、彼女の音楽の才能だ。ピアノはもちろんトランペットやトロンボーンなどの管楽器、はたまたギターからドラムまで。
一度音楽室に行ってその腕前を聞かせてもらったが、なんだか完全無欠のスーパー女子高生のような気がしてきて、彼女がジャニス・ジョップリンの「ムーブ・オーバー」をギターで弾きだしたころには、僕は絵に描いたようにあいた口が塞がらなかった。
「え?このくらいは結構できる人いるわよ」
「私くらいしかいないのよ」という顔。それがまた愛らしかった。
僕たちは二人で出かけることを勉強会といった。
これは失礼な話だが、人はこの怪しい二人のカップルを奇異の目で見るかと思っていたが、案外普通で、これは僕にとって驚くべきことだった。バージンロードの二人はいつしか老夫婦になっていった。
よくファミレスに二人で行った。で、彼女はきまっておいしそうにパフェを食べる。チョコレート、イチゴ、チョコレート、イチゴ。僕はコーヒーを飲みながらうれしそうな彼女の表情を見ていた。
「ねえ、ショートケーキのイチゴは最初に食べる?それとも後?」
「考えたことなかったな、それって嫌いなものを最初に食べるかどうかってこと?」
「どっちかって言えば好きなものは最初に食べるかってことを聞きたかったんだけど」
「好きなものは後に食べるかもしれないな」
「へー、あたしと逆ね」
彼女は口いっぱいにホイップクリームと生クリームをかきこんだ。
「最初にやなことを終わらせたほうが確かに楽かもな」
「私もその考え賛成。あれ?それだと可笑しいのか」
「いいんじゃない。俺はどうせ嫌いだもん」
「え?」
「甘いもの」
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僕は彼女の手の甲に、タイプライターを打つように、ゆっくり両指で触れ、言葉を伝えてみた。
一瞬怪訝そうな表情を見せた彼女も、その意図を理解したのかすぐに表情を変え呟いた。
「えっ……すごいじゃん」
つづく
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タイトルを決めたいのですが…
皆さんはどんなふうに小説とかの作品タイトルを決められてるんですか?
1 最初から決めている
2 創作途中から決まってくる
3 最後に決める
4 インスピレーションじゃ❗
note初心者、創作初心者にご助言いただけたら嬉しいです。
mogelog3