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【雄手舟瑞物語#17-インド編】仕事6日目(後編2)、逃亡計画II(1999/8/5)

ついにやってきた逃亡のチャンス。偶然隣りの部屋に泊まっていたオーストラリア人のおっさんの協力を得ることができた。おっさんは、シャワーを浴びたら僕を別のホテルまで連れて行ってくれるということで、僕は自分の部屋で長い15分間を耐えた。

約束通り15分後、おっさんは僕の部屋をノックし、僕は荷物を持って部屋を出た。おっさんと僕はホテルの一階に降りようと、階段の方に向かった。

その瞬間


ラジャが階段から現れ、

「おい!!!お前たち何をやってるんだ!!!」と、怒号を僕たち二人に浴びせる。

ラジャはオーストラリア人のおっさんに向かって「何してるんだ!!」と詰め寄る。

おっさんは、その威圧感にたじろぎながら、

「いや、、、何でもない。本当に何でもないんだ。」

と答え、ラジャから視線を外す。そして、僕の方にはもう振り向くことはなく、後退りし、自分の部屋に入ってしまった。


終わった。。。

と僕は思った。

ラジャの威圧感で、僕も自分の部屋に押し戻される。ラジャも部屋に入ってきた。そして、

「おいっ!どういうことだ!!!」と今度は僕に問い詰める。こうなったら開き直るしかない。

僕は言った。

「だから、言っただろ!!!本当に僕は、もうこんなことをしたくないんだ。分かるか??逃げ出すほど、ぼったくりツーリスト・オフィスの手伝いなんかしたくないんだ!君は新しくちゃんとした事務所を構えるって言ったけど、僕は僕の旅があるんだ!!」

すると、ラジャは後ろに振り帰り僕に背を向け、壁にもたれ掛かりながら、「友達だと思っていたのに、、だからお前の言うことを聞いてボッタクリじゃない事務所もつくる気になったのに、、だったらちゃんと言って欲しかった、」と泣き始めてしまった。

こいつは良い奴なのか、なんなのか。ちょっと僕は困りながらも、

「友達だったら分かってくれ。友達だったら俺の旅を応援するべきだよ。」と優しく伝えた。

ラジャは僕の方に振り返ると、少しの間、下を向いていた。そして、

「分かった。」ラジャは、ついに納得してくれたようだ。僕は、さっきのが嘘泣きかどうかは置いとくことにして、まぁホッとした。そしてラジャは続けて、

「舟瑞の気持ちは分かった。分かったから最後に、最後に明日一日だけ手伝って欲しい。」と言い出すじゃないか。僕は、さっきのは嘘泣きだったんだなと確信するが、それは置いておくことにして、まぁ10日間近くやってきたし、ボッタクられたとは言え世話になったといったら世話になったし、ということで、その申し出を受けることにした。

ラジャは「ありがとう!これで明日が終われば、舟瑞は自由だな!あとはお互い待てば海路の日和かなだな!」と、さっきの泣きはどこへやら満面の笑顔に変わっていた。そして、「とにかく、今日はここで休んでいろ。また夕方来るから飯を食いに行こうな!」とさっき逃げようとした僕を信じたのかどうかは分からないが、そう言って、実際僕をまた一人にして部屋から出て行った。

お人好しなんだろうか、僕を雇うために前の事務所を辞めてくれたラジャに、ちゃんとサヨナラを言うべきだったのかな、と思い始めて、僕は今日のところは逃げるのは止めにすることにした。

そのあと僕は部屋で「地球の歩き方」を読んだり、ゆっくり過ごして、夕方にはラジャと同僚たちと打ち上げ的な感じで飲みに行った。

さぁ、明日で囚われの身も終わりだ!旅が再開するワクワクを胸に抱いて平和ボケとは露も思わず眠りについたのだった。

(前後のエピソードと第一話)

合わせて、僕のいまを綴る「偶然日記」もよかったら。「雄手舟瑞物語」と交互に掲載しています。


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