偶然SCRAP#48: Control, Alt, Delte: 新しい芸術的なアクティビズム vs 監視国家
(追記:2020年1月1日)
スターテヴァントに続いて、テクノロジーにまつわる記事を探す。これ系は、やっぱり分かりやすく今っぽい感じがするんだよね。
「Control, Alt, Delete: 新しい芸術のアクティヴィズム vs 監視国家」なんて記事のタイトルを見て「ぽいぽい!」と思ったわけです。
「コンプライアンスの文化」という話題が出てきて、まぁタイトルから想像できる。ただ次に「パランティア」っていう企業の名前がマイクロソフトやグーグルの名前と一緒に出てきた。「パランティア」って?
2003年にピーター・ティールと少数のPaypalの社員で創業したアメリカのデータ解析の企業らしい。オバマ政権の間に、9.11以降に設立された反テロリズムの部局、アメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)の仕事を請負って発展し、トランプ政権下では、滞在許可証を持たない移民就労者を拘束するためのシステムの開発で業績を伸ばしている。らしい。
どんだけの情報を抱え込んでいるのか!「競争は弱者のためにある。価値を永続的にしたいなら独占状態をつくることを考えるべきだ」なんてことを言った。らしい。扇動上手!
そんな中で立ち上がったのが、グーグルやマイクロソフト、アマゾンといった企業の従業員や就職前の大学生たち。9.11以降、IT関係の会社たちは、政府の法や軍事関係の仕事で業績を伸ばしてきたわけだけど、従業員たちが「ちょっと待った」をCEOに対して訴えたわけ。グーグルは、2018年4月にこんな運動が起こって、翌々月の6月には撤退を発表。
大学生たちだって負けてない、パランティアからのリクルーティングはお断り。前のグレタ・トゥンベリの記事のときの企業の動きも、そうだけど、複雑な社会のなかでハングリーに生き抜いていくと、こうできるのか。「安定のため下僕でいるのも仕方なしぃ~」なんて言ってたら、みんな一緒にぶっ倒れるね。
(初投稿:2019年11月6日)
イギリスのアートマガジン「Frieze」に掲載のオピニオンを引用紹介します。
Opinion /
Control, Alt, Delte: 新しい芸術的アクティビズム対監視国家
BY MIKE PEPI
28 OCT JUN 2019
パランティアからマイクロソフト、グーグルへ、新しい抵抗勢力は労働者自体から生まれる。
1989年に放送されたCBCのラジオ番組「Massey Lectures」の中で、物理学者のUrsula Franklinは、2つのタイプの技術について説明した。人類史の大半は、私たちは、ざっくりと全体的な技術を作ってきた。例えば、陶芸窯のような道具は、実用性を提供しながらも、カスタマイズの余地を残している。対照的に、例えば、建築家の設計図のような、規定的な技術は、中央の経営者の要請に従って、労働を分担し、標準化する。Franklinの講義では、規定的な技術が占める割合の増加が、どのように「コンプライアンスの文化」を作っていったのかという話を伝えている。
おそらく、ビッグ・データの起源ほど、このコンプライアンスの文化について、より明白に説明するテクノロジーはない。さらに、パランティア以上に、民営化されたデジタル監視の非道性の象徴として見なされる企業は存在しないだろう。Peter Thielと少数の元PayPalの従業員によって、2003年に共同創業されたパランティアは(Bloombergが2018年4月に出資)、テロに対するグローバル戦争に向けて設計されたインテリジェンス・プラットフォームであり、自国の一般のアメリカ人に背いて兵器化された。
バラク・オバマ大統領政権の間、パランティアは、アメリカ合衆国移民・関税執行局[Immigration and Customs Enforcement] (ICE)からの請負事業を開始した。このアメリカの反テロリズム部局は9.11の後に創設された。ドナルド・トランプ大統領の下、ICEは、滞在許可証を持たない移民就労者の発見と拘束のため、職場での抜き打ち検査を強化した。パランティアは、ICEのためのソフトウェア開発を開始した。特定の人物について複数の政府機関のデータベース検索を即座に可能にするものだ。この結果は、一種のデジタル捜査網を作り上げた。それは、当該事件への関係の有無を問わず、誰でも連行することができる。
‘Kate Crawford | Trevor Paglen: Training Humans’, 2019, exhibition view. Courtesy: Fondazione Prada; photograph: Marco Cappelletti
テクノロジーは、歴史の外側で評価されているからニュートラルであるという主張は、危険性をはらんでいる。Franklinは、テクノロジーは社会構造から生じているということ、そして、その研究はそれを踏まえて扱われるべきだということを強調する。それにも関わらず、Thielの得体のしれない背景を詳しく見ると、答えよりも、疑問の方が返ってくる。シリコンバレーで最も注目を浴びる人物の一人である、Thielは、色々な企業の中でも、Facebook、Airbnb、SpaceXの成長を牽引する。生来のリバタリアンである彼が、2016年に大統領候補であったトランプのために遊説したり、共和党全国大会での支援スピーチをしたりしたことは、財界人たちに衝撃を与えた。
保守系のリバタリアンの間でさえ、Thielのビジネス戦略は異例のものだ。ウォールストリート紙の2014年の反対論説の中で、彼は「競争は弱者のためにある。もしあなた方が永続的な価値を捉え、作り上げたいならば、独占状態を作ることに注意を払うべきである」と唱えた。恐らく、この妄想は最良の手がかりを与えている。国家と契約を結ぶ企業よりも、独占状態を達成する企業にとってより良い方法は、暴力の独占を保つことなのだろうか?
CIAの国家安全保障への投資熱の9.11以降の高まりによって始まり、またその初期に政府からの受注によって成長した。私たちがしばしば民間のテック企業と考えている企業に多額の公的資金を投入してきたという長い歴史がある。これはシリコンバレーの破壊者の神話によって隠された事実である。マイクロソフトは、19.4百万USドルという多大な額でICEとデータセンターの受注をしている。アマゾンは、全米の警察組織に強力な顔認証システムを販売している。そして、3月までは、グーグルの「Project Maven」は、軍事用ドローンが飛行中の物体認識を支援するAIを構築していた。
しかしながら、シリコンバレーのアクティビズムの新しいタイプは、これらの企業で働く従業員たちによって駆り立てられて、出現してきている。アマゾン、マイクロソフトやグーグルの従業員たちは、軍事や法の執行機関のプロジェクトに反応して、あるケースでは、抗議集会を扇動し、行動を共にしている。2018年4月、3000人を超えるグーグルの従業員たちは、彼らのCEOに対して、ペンタゴンの業務から撤退するよう求める署名を行い、グーグルは6月までには撤退することを発表した。
Thielは、不正手段で得た利益をアートウォッシュするために文化的な慈善事業を行うような欲望を一切見せていない。トランプに対するオープンな支援が示す通り、儀礼的な自由主義社会の恥ずべき戦略に彼は影響されない。Thielは才能ある学生がエリート大学を辞めて、スタートアップを立ち上げることを奨励するプログラムを創設した。シリコンバレーの新しいビリオネアたちの多くは、私たちの組織を、欲求を満たせる影響力のある場所とは見なさず、完全に根絶されるべき無駄で石灰化した組織と見ている。
ビッグ・データの関連企業が既存の国家的な監視を過剰に高めるコネクティブなインフラ基盤を整備してしまうと、消費者団体はもはや民間企業のような影響力を持たなくなる。消費者は、グーグルやアマゾンによる商業的な追跡を止めることはできるが、パランティアの法の執行作業はデータを政府のデータベースに紐付けることを可能にする。政府のデータベース上のレコードは、市民権の基本的要素と事実上同義である。これを拒む唯一残された戦略は、この問題を生んでいる個人個人の労働倫理に訴えるしかないのだ。
少なくとも2つの署名文書が、ICEの委託業務に抵抗することを従業員たちが表明したパランティア社内で回覧された。また、内部の圧力がより勢いを増したであろうポスターもあった。パランティアのCEOであるAlex Karpは、従業員たちの関心事をピシャリと手を打って遠ざけて、8月には、パランティアのICEとの受託契約を更新した。それ以降、この内部の圧力は大きくなっている。9月には、全米の1200人を超えるコンピューター・サイエンス専攻の学生たちが、パランティアのリクルーティング・オファーは受け取らないという宣誓文に署名した。
アーティストたちも、上記すべてのことに反応し、成功のために必要な敵、戦略、基準といったものを含む企業イメージに関する批評にというフレッシュなターゲットを切り開いている。コントロールという新しいテクノロジーの興隆によって力の結合体が変化していくにつれて、美術館のボードメンバーよりも、現行の支配階級が地球規模の―大規模な―インフラ支配の獲得することに関心が高い新しい美的な批評が出現している。このような実践に関する数人の提唱者―アーティストのSimon Denny, Fang Di, Agnieszka Kurant, Trevor PaglenおよびSondra Perryを含む―が思い浮かぶ一方で、私たちは、これらの価値がどのように再配置されていくのか、まだその黎明期にいる。ただそうしている間にも、企業批評にとっての教訓がここにもある。インフラから目を離すな。
This article first appeared in frieze issue 207with the headline ‘Control, Alt, Delete’.
Main image: Simon Denny, ‘Ascent – Above the Nation State Board Game Display Prototype’ Hero Portrait Projection (Founder 1) (detail, depicting Peter Thiel), 2017. Courtesy: the artist, Michael Lett, Auckland, Petzel Gallery, New York, and Galerie Buchholz, Berlin/Cologne/New York
MIKE PEPI
Mike Pepi is a New York-based writer on art, culture, and technology. Find him at @mikepepi
First published in Issue 207
November - December 2019
訳:雄手舟瑞
こんにちは