【雄手舟瑞#31-インド編】カトマンズ(8/22-26)
インド一人旅も終盤。大学のテニスサークルの合宿という集団行動の象徴に対し、違を唱え、一人勇んでインドへ旅立った僕であったが、インド到着時からのドタバタの中で出会ったチカブン、カトミ、トラとの4人旅になり、そして今ではチカブンとの2人旅になった。
一人旅だからこその出会いとグループだからの喜びの増幅を同時に知る旅になった。あの行きたくなかった合宿と、この4人旅、2人旅は何が違うのだろうか。
と、旅の終盤ぽいことを考え始めさせるような静かな街、カトマンズ。
ヤバイ胃痛ー一歩の振動が胃に伝わって切れるような激痛が走り、次の一歩を出せないーも現地のヤバイ紫色の鎮痛剤のお陰で集中すれば痛みに耐えられるようになった。後日、色々調べるとかなりの確率でガンジス川での沐浴が原因ぽく、自分自身でもそう予感していた。それほどガンジス川はドロドロでヤバかった。
大分余裕が出てきた。チカブンはまだがっつり寝ている。昨日の夕方にこの宿に着いて、2人ともそのままベッドに倒れこんだ。何時間寝たのか?外の様子を横になったまま眺める。
ちょっと空が白んで来ている。どんよりした空。腕時計を拾って見ると、5時。10時間くらい寝てたようだ。
起き上がり、シャワーを浴びる。
ん!?お湯が出ない…というか水が出ない。
手洗いの蛇口をひねっても水が出ない。
トイレを流しても水が出ない。
水が出ない…
宿のフロントに行き、スタッフに水が出ないことを伝えると、
「そうなんです。今水不足でこの五日間、政府によって水が止められています。少しなら汲み置きの水があるので、それを使ってください。」
ここに来るとこんな事態も自然と受け入れられるようになっていた。
部屋に戻るとチカブンが起きてきて、「どうしたの?」と聞いてきたので状況を伝えると、「まぁ、それはしかたないよね。」
2人は朝ごはんを食べ、街に散歩に出た。
カレーの味はインドと似ているが付け合わせが美味しかった。なんか優しい味。カトマンズではデリーのように街の人たちに声を掛けられることもなかった。厳かで静かな街。
あれっ。物足りない!?あんなに大変だったのにデリーのエネルギーに満ち満ちた空気を求めている自分がいた。
カトマンズでは曇りと小雨降る五日間で、街のように僕たちも静かに過ごした。そして、あっという間にチカブンとのお別れの時がやってきた。
出会ってから3週間。アメリカでアートを学んでいたドレッドヘアの小柄なお姉さんはかわいく、そして強く、つかめない深い人だった。
チカブンはヒッピーの聖地である湖のほとりの町ポカラへ、僕はついにインドの旅を終えるべくデリーへ。バス停までチカブンが見送りに来てくれた。僕たちは日本での再会を約束し、僕のバスはまた国境の町スノウリに向けて出発した。
久しぶりに一人旅に戻った。
(つづく)
※次回は明後日掲載予定
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