【雄手舟瑞物語#2-インド編】初海外、初一人旅、ボッタクられたことに気づくまで(1999/7/30→7/27①)

「あぁ。俺はバカだ。計算間違ってるじゃないか」

僕は今、インドのジャイプルにいる。夜。ベッドの上で無印で買ってきたノートに旅日記を書いている。

3日前にインドのニューデリーに着いた。20歳。初めての海外旅行。初めての一人旅。空港に着くと、日本からのバックパッカー達が「バスで市内まで行きましょうか」と話し合っている。「塊やがって」と思いながら、一人トイレに向かった。

トイレには噂で聞いていたとおり紙がない。でもこれこそ体験だと思い、さっそくインドの文化を堪能することにした。ボットン便所にまたがって踏ん張り、用を足す。すると目の前には水道の蛇口とその下には手桶が置いてあるのに気づいた。察しの良い僕はすぐに気づいた。「これはインド式ウォシュレットじゃないか」。手桶に水を注ぎ、尻にひとしきり水をかける。この流れで左手で拭くのがインド流だが、さすがに次のステップにしようと思い、持ち込んだトイレットペーパーで拭き取る。紙には何もついていない。そして、僕はインド式ウォシュレットに信頼を覚えた。

トイレから出ると、日本人一団はいなくなっていた。「いい大人達がインドまで来て団体行動とは情けない」と思いながら、一人空港の外に出て、タクシー乗り場に向かう。すぐにタクシーは捕まった。運転席のフロントガラスが割れている。かっこいい。これがインドだ。助手席に乗り込み、いかにも旅慣れてる風に運転手に言った。

「市内まで」

タクシーの運転手と「初めてのインドか?」とか、ありきたりな会話を交わす。タクシーは砂埃舞う荒れた道を進む。信号もなく、混雑した道では車同士がぶつかり、罵声を浴びせ合う。僕は助手席の窓を開けて、風を感じながら、得意な気分に浸っていた。

20分くらいすると運転手は僕に「宿は決まっているのか?」と聞いてきた。バックパッカーである僕は当然のように「決まっていない」と答え、初日くらいは少し贅沢しても良いだろうと思っていたので、「今日はミドルクラスのホテルに泊まろうと考えている」と伝えた。運転手は「なら、良いところを知っている」ということで、そこに連れて行ってもらうことにした。それから少し経ち、タクシーは住宅街のようなところに入っていき、確かにミドルクラスっぽいホテルの前で止まった。

「セントラルまで着いたぞ。ここだ。中まで案内してやろう。」

荷物は、20リットルくらいの小さなバックパック1つだけ。この中にTシャツ2枚、パンツを2枚とトイレットペーパーを2ロール、それに石鹸1つと歯磨きセット、それにまだ開いていないきれいな「地球の歩き方インド編」が一冊。運転手に持ってもらう荷物などない。髪も剃り、坊主にしてきた。できるだけ身軽なのがバックパッカーである。

そう言えば、僕はそもそもセントラルがどんなところか知らない。なんとなく閑散としているが、「まぁ、こんなもんか。とりあえず後で調べよう。」

運転手と僕はフロントまで行き、とりあえず一泊だけしたいと伝えた。部屋は空いているようで、「部屋を見せてやる」と言われ部屋まで連れて行かれた。なぜか運転手までついてくる。部屋は、なかなか広く、キングサイズのベッドやそれっぽい装飾のついた家具が置いてある。確かにミドルクラス感がある。促されるままにベッドに腰をかける。すると、続々と見知らぬ(当たり前だが)インド人が2人部屋に入ってきた。確かに僕は一瞬「??」と思ったかもしれないが、その時はそれほど疑問もわかず状況を自然と受け入れていた。そして、運転手が彼らを紹介し始めた。


(次のエピソードと第一話)

合わせて、僕のいまを綴る「偶然日記」もよかったら。「雄手舟瑞物語」と交互に掲載しています。


こんにちは