【雄手舟瑞物語#10】旅行3日目、アーグラ、ぼったくりに遭う(1999/7/29)

インド旅行3日目、僕と運転手のラジャはジャイプルを発った。車で4時間ほど走り、アーグラに到着した。昨日はラジャと相部屋だったが、今日は別々の部屋を取ってもらえた。インド3日目にして、ようやくゆっくりできる。ホテルに荷物を置き、僕たちはタージ・マハルへ向かった。

まだ「地球の歩き方」を開く余裕がなかった僕はタージ・マハルの名前すら知らない状態だった。何やら一大観光地らしい。タージ・マハルの前の車だまりで車を停め、大きな門まで歩く。世界中からの観光客だらけ。靴を脱ぎ、門をくぐると目の前には巨大な真っ白い墓廟がそびえ立ち、手前には300mくらいある水路と緑の庭園が広がる。「こ、これは。すごい」まさに壮大な建築物を前に僕は興奮した。水路脇の通路を進む。墓廟に上がると、ラジャが「写真を撮ってやる」と言ってくれた。決まりが悪いながらも、墓廟を背に一人腰に手を当てポーズを取る。ここで2枚。ジャイプルとアーグラで合わせて撮ってもらった写真は3枚。

タージ・マハルの次に行ったアグラ城塞では一枚も撮っていない。僕の中でもタージ・マハル以外の記憶は残っていない。

夜7時。ホテルの部屋で久しぶりに自分一人の時間を過ごす。「あっ、そういえば」僕は旅日記をつけようと日本からノートを持ってきていたことを思い出した。バックからノートとペンを取り出し、書き始めた。

インドに着いてからまだ3日しか経っていない。色々なことがあり過ぎだ。これからあと1ヶ月もいると考えるのは不可能に近い。何かドラゴンボールの精神と時の部屋にいるみたいだ。1日が1週間ぐらいに感じる。この先これをどうやって乗り切るのか。

「なるようになれ」

もう今日のことですら考えるのはやめにしよう。今、この瞬間だけのことを考える。それに徹することにする。インドに来る前に想像してたのと全く違う今回の旅行、これからどうする・・・。まず持ってきたお金が少なすぎた。まさか州を超えるのに税金が取られることも知らなかった。予算は1日3千円と考えていたが、これでは足りない。1日目のホテルは7千ルピーで1万5千円。5日分だ。それに州超えにかかった税金とツアーで3万ルピー。だいたい1万円ほど。これは3日分。合わせて8日分このままだと足りなくなる・・・。いや、ただ8月10日まではツアー料金にホテル代と交通費が含まれているから、ギリギリなんとかなる。いや、いや、ちょっと待て。ちょっと待て。俺は馬鹿すぎるかもしれない。

!!!!

3万ルピー、、、1万円じゃない!!!!7万5千円!!!!!!1ルピー2.5円を掛けなきゃいけないのに割っている!!!計算を間違えて・・・

えーーーーーー!!!!えーーーーー!!!!

ホテル代の計算は合っている。つまり、3日で9万円、、、30日分。あと10日分しか残ってない、、、あああああ

ツアーは格安なんかではなかった。3日目にして、僕はついにボッタクられたのだと気づいたのだった。。。どうすることもできない。僕は呆然となった。しかし僕はこの緊急事態にもかかわらず、ずっと緊張しっぱなしで疲れていたのだろう、気づいたら眠りに落ちていた。


(前後のエピソードと第一話)

※この物語は僕の過去の記憶に基づくものの、都市伝説的な話を織り交ぜたフィクションです。

合わせて、僕のいまを綴る「偶然日記」もよかったら。「雄手舟瑞物語」と交互に掲載しています。


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