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認知症介護小説「その人の世界」全34話まとめ

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認知症のある本人から見た世界を描いた、1話ごと読みきりの小説です。
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2023年2月の記事一覧

認知症介護小説「その人の世界」vol.9『暴力人間ですか』

その女の子は突然泣き出してしまった。 「私もう、ここを辞めようと思っているんです」 トイ…

阿部敦子
1年前
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認知症介護小説「その人の世界」vol.8『歌いたくなるのは』

退屈で仕方ない。 テレビの前に座っているが、見たくて居るわけではない。気晴らしに歩いてみ…

阿部敦子
1年前
2

認知症介護小説「その人の世界」vol.7『歌いたくない人ですか』

ふじ子さん。 学生だった僕の元に赤紙が来た時、貴女はその場で泣き崩れましたね。 「さん、…

阿部敦子
1年前
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認知症介護小説「その人の世界」vol.6『だから入らねえってば』

「八朗さん、お風呂に入りましょう」 短パンからにょっきりと脚を出した兄ちゃんが俺に話しか…

阿部敦子
1年前
7

認知症介護小説「その人の世界」vol.5『なんで私が』

どうしてこんなこと、やらなきゃいけないんだろう。 若い頃からデパートで婦人服の売り子をし…

阿部敦子
1年前
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認知症介護小説「その人の世界」vol.4『本当は食べたいです』

ばちあたりな話であることは百も承知です。 「はい、ウメちゃーん。あーん」 この掛け声の後…

阿部敦子
1年前
4

認知症介護小説「その人の世界」vol.3『ほら、見えるだろ』

6時50分。 この時間に客がいなくても、征男は7時の閉店時間を過ぎてから片付けを始める。 地域で店を開いて数十年、征男にとって床屋は天職だった。それは理容の腕が優れているためだけではない。征男にとって床屋の仕事とは、髪を切り髭を剃るだけではなかった。征男が一番大切にしているのは、客との関わりだった。 客に触れながら話しをすると、相手の人生の断片に触れることができた。それによって征男は、金に代え難い教訓や幸せを得ていると感じていた。それは、相手が大人であっても子どもであっ

認知症介護小説「その人の世界」vol.2『入らねえよ』

「三郎さん、お風呂に入りましょ」 短パンからにょっきりと脚を出した姉ちゃんが俺に話しかけ…

阿部敦子
1年前
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認知症介護小説「その人の世界」 vol.1 『帰ってもいいですか』

だから嫌だって言ったのに。 家族に勧められてしぶしぶ参加した地域交流会は、思った通り最悪…

阿部敦子
1年前
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