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生きるということ ~AKB48『生き続ける』~

この曲は、AKB48の6thアルバム「ここがロドスだ、ここで跳べ!」に収録されている楽曲で、「虫のバラード」(AKB48・チームK「逆上がり」公演の構成曲)と相通じるところのある泥臭い内容のロックバラードになります。

生きる 生きる 泥水を飲んで
どんなにつらくても生き続けよう
明日 明日 もし生きてれば
もう一度 朝日を見られる

サビ始まりの曲ですね。

どんなにみじめであろうと、どんなにつらからろうと、ともかく生きて生きて生き延び続けていれば、いずれ希望の光が見えて来ることもあろだろうといったところでしょうか。
この「生き続けよう」というフレーズには、文字通りの生命を維持するということと、何がしかの志を持ち続けるという二重の意味が込められているのではありませんかね。

1番Aメロ

ずっと目指した夢は
今もまだ遥か遥か彼方
手を翳(かざ)し
目を凝らして
見失わない自分でいたい

忙しい日々を過ごしている現代人にしてみれば、今目の前にあるひとつひとつのことをこなしていくのに精一杯で、かつて抱いていた夢や目標など、いつしか心の片隅に追いやられていたりするものです。
特に、その夢や目標が大きければ大きいほど、それを実現させることの現実感に乏しいため、すっかり忘れ去られてしまう。
けれども、あるときふとその夢や目標が思い出されて、いったい自分は何をしているのだろうかと、今の自分に疑問を抱いてしまう。
時間というものは容赦なく過ぎ去っていきますから、思い出した夢や目標が今となっては決して手の届かないものになってしまっていることすらあるわけです。
簡単に諦め切れれば良いのですけれども、そうでなければずっと悔いが残り続けることになる。
そうならないためには、自分が抱いた夢や目標に対する飽くなき情熱と、何が何でもやり遂げるという強い意志が必要になってくるのでしょう。

ここでは、そういった夢や目標を見失わずにいられる強い意志を持った自分でありたいということを言っているのではありませんかね。

1番Bメロ

汗と涙を
こんなに流して
傷ついても
這いつくばって
よろけながら立ち上がろう

夢を追い求めている途中には様々な困難が待ち受けているものです。
そういった困難に突き当たるたびに、打ちのめされ、傷つき、諦めそうになる。
それで簡単に諦めが付くのであれば、所詮しょせんその程度の「夢」でしかなかったということで、早々に見切りをつけて次に進んだ方が良いのかもしれません。
それで決して後悔することなどないというのであれば……。

けれども本当に掴みたい夢ならば、どれだけ打ちのめされようが、這いつくばりながら何度でも立ち上がる。
決して諦めることなどできないのですよね。

1サビ

熱い 熱い心の言葉を
誰かに伝えたくて生き延びてる
青く 青く晴れ渡る空は
この俺の叫びを聴いてる

溢れんばかりの夢や希望が、この主人公の心の内には宿っているのでしょう。
そういったものがある限り、生き続けていけるといったところでしょうか。

後半の「青く晴れ渡る空」というフレーズは、無限の可能性を象徴しているのではありませんかね。
つまり、見上げてみれば、目の前には無限の可能性が広がっている。
その無限の可能性に賭けて、自分の力を試してみたいといったような意味にも受け取れそうですよね。

2番Aメロ

誰も指差しながら
負けた者たちを笑うだろう
気づいてるか?
本当は
戦わぬ者が笑われてると…

ここのくだり、「闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう」と歌っている中島みゆきの「ファイト!」という曲を思い起こさせるところがありますよね。

熱くなって戦いに挑んでいる者たちを冷たい目で笑う者たち。
戦い敗れた者たちには、「それ見たことか」と嘲笑を浴びせる。
けれども本当の敗者は、夢も希望も諦めて、やっかみ交じりに他人をあげつらうばかりの、戦いに背を向けた者たちなのですよね。

2番Bメロ

力が尽きて
途中で死んだら
俺の屍(しかばね)
放置したまま
魂だけ行かせてくれ!

たとえ志半ばで倒れたとしても、その志だけは同じような思いを抱いている者たちによって受け継がれていくはずだといったところでしょうか。
この場合の「倒れる」ということには、歌詞の中にもありますように死んでしまうということも含まれるでしょうし、プロスポーツ選手のように、肉体的な衰えや気力の衰えにより引退せざるを得ないといったようなケースも含まれているのではありませんかね。

2サビ

高く 高く空まで昇って
歩いたその道を振り返ろう
何も 何も後悔してない
逃げ出さず生き続けたこと

これまで歩んできた道筋を振り返ってみたとき、どんなに苦しかろうがどんなにつらかろうが、決して逃げ出すことなく真正面を向いて戦い続けてきた。
もしかしたらこの主人公は、思い描いていた夢を必ずしも掴めたわけではないのかもしれません。
ただ、たとえそうであったとしても、自分の人生に対して一片の悔いもないということなのでしょう。
そこには、信念を貫いて自分の人生を生き抜いてきたという自信と誇りが表れているのではありませんかね。

Cメロ

さあ 風化したこの俺から衣服を剥ぎ取れ!
残ったその骨のどこかにあるだろう
何よりも大事に守り続けたその美学
おまえが持ってけ!
それが生きるということだ

2番の歌詞はなかなか強烈なものがありますよね。
とてもアイドルグループが歌う歌詞とは思えない。
いつぞや秋元Pが、アイドルが歌うからといってそれを意識して作ってはいないといったようなことを語っていましたけれども、まあそういうことなのでしょう。
シングル表題曲に関しては、大衆ウケを狙っているのか、いかにもという感じのアイドルソングが多いような気もしますけれども、カップリング曲や公演曲になると、これはアイドルソングではないよなという感じの曲も多く見受けられる。
そういった曲の中には結構良い曲も多いのですけれども、いかんせん、ほとんど披露されることもなく埋もれてしまっている。
公演曲はまだしも、シングルのカップリング曲となると、リリース直後のイベントなどで1、2回披露されてそれっきりというケースも多いですからねぇ……。
もったいないですよね。

さて、「風化したこの俺から衣服を剥ぎ取れ!」というフレーズの意味ですけれども、生きているうちに次第に身にまとわり付いてきたもの、自分を良く見せたり大きく見せたりするために意識的にあるいは無意識的に身に着けた虚飾虚栄をすべて剥ぎ取ってしまえということなのではありませんかね。
そうして余計なものを剥ぎ取った後に残った素の自分が生きていく上での軸となるもの、行動原理とでも言いましょうか、あるいは信念とでも言いましょうか、そうしたものをすくい取ってくれということを言っているのではないでしょうか。

「何よりも大事に守り続けたその美学」というのは、勝つとか負けるとかを超越して、自分の信念を貫いて戦い続けてきた(生き抜いてきた)というその生き様のことを指しているのでしょう。

ここでは、真に生きるということは、そうした生き様の中にこそあるのではないかと問うているわけです。

ラスサビは、1サビと曲冒頭のサビの繰り返しになっていますね。

「生きる」ということは、そのこと自体にさまざま困難や苦難を内包しているわけですけれども、それらに屈することなく、信念を貫いて力強く生き抜いていこうではないかと、この曲は歌い上げています。

引用:秋元康 作詞, AKB48 「生き続ける」(2015年)


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