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歌うことは自由なんだ! ~AKB48『ドレミファ音痴』~

この曲は、AKB48の27thシングル「ギンガムチェック」のカップリング曲です。
ユーロビートの明るい元気な楽曲になっています。

48グループの選抜総選挙が行われなくなってから久しいのですけれども、各グループがそれぞれ独立して活動するようになっていますし、今後とも開催されることはないのでしょう。
仮に開催されるとしても、単一グループ内でのみでということになるのではありませんかね。
そんな選抜総選挙の結果で面白かったのが、2012年に行われた27thシングル選抜総選挙のネクストガールズ(33位~48位)でしょうか。

このときのメンバーは以下の通りです。
岩佐美咲(AKB48)
松村香織(SKE48)
向田茉夏(SKE48)
仲谷明香(AKB48)
中田ちさと(AKB48)
宮崎美穂(AKB48)
永尾まりや(AKB48)
藤江れいな(AKB48)
小林香菜(AKB48)
前田亜美(AKB48)
福本愛菜(NMB48)
仲川遥香(AKB48)
田野優花(AKB48)
山田菜々(NMB48)
宮脇咲良(HKT48)
片山陽加(AKB48)

ご覧になってわかる通り、なかなかクセの強いメンバーばかりですよね。
偶然ではあるのでしょうけれども、よくこれだけの顔ぶれがそろったものです。
この中に、HKT1期生として加入してまだ1年も経っていない中学生の宮脇咲良が紛れ込んでいるのも面白かったですね。
さしずめ、猛獣の檻の中に放り込まれた小動物といったところでしょうか。

このメンバーの楽曲が「ドレミファ音痴」ということになるわけです。
当時、AKB内でも屈指の歌唱力を誇っていた岩佐美咲のセンター曲に、このタイトルの楽曲というのも何やらシャレが効いていますよね。
また、松村香織のコメダマイクがAKBの公式MVに映り込んでいるというのも、ちょっとウケました。

この曲は、カラオケ店のJOYSOUNDとのタイアップによるCMソングになっていて、歌詞の内容も、ヘタでもいいから歌うことを楽しもうよといったようなものになっています。

1番の歌詞は確かに、歌うことで元気になれるだとか、歌にして気持ちを伝えようだとかといった内容なのですけれども、これが2番になると俄然がぜんメッセージ性が強くなってくるのですよね。

2番Aメロ

魔法の呪文は元気になるだろ?
大好きな人の一挙手一投足
小さなことなんか気にしないで
君は君らしく生きてることを
楽しもうよ Oh! Yeah Yeah

ここにある「魔法の呪文」というのは、直前の歌詞にあるドレミファソラシドのドイツ語読みのことなのですけれども、それを唱えて元気になれるかどうかはともかくとして、楽しく生きていきたければ小さなことなど気にするなというのは、その通りですよね。

とかく人というものは、あれやこれやと小さなことを気にして、それこそ他人から見れば「どうして?」というようなことに囚われ過ぎてしまって、自分で自分を窮屈な状況に押し込めてしまうようなところがありますよね。
本当は、身も心も何にも囚われずに自由であることが、生きていて一番楽しい状態なのではないかと思うのですが……。

2番Bメロ

きっと世界中
国境を越えて
歌声は届くはず
戦争も貧困もなく
大きな愛に気づくだろう

「音楽は国境を越える」とは、よく聞く話ですよね。
ただ、歌の場合には歌詞がありますから、言葉が違えば歌詞の内容や微妙なニュアンスなどを理解するのは容易ではないような気はします。
とはいえ、歌にはメロディがありますから、会話では通じにくいことも、感性に訴えて気持ちが通じるということはありますよね。
言葉は通じなくても、曲のメロディや歌い手の表情や身ぶり手ぶり、さらには歌声の表現によって、どんな感情で何を訴えかけているのかが、感性を通じて聴き手の心に届くわけです。
そこが、会話とは異なる歌の力なのでしょうね。

歌詞の中に「戦争も貧困もなく」とありますけれども、これは、世界には戦争もなければ貧困もありませんよと言っているわけではなく、戦争の災禍に見舞われようとも、貧困に苦しんでいようとも、人々の心には歌声ならば届くはずだということを言いたいのではありませんかね。
そして、その歌声が届けば、自分たちが見放されたり見捨てられたりしているわけではないのだということに気づくはずだということなのでしょう。
例えば、貧困に苦しんでいるアフリカを救おうと、たくさんのアーティストが参加して作られたチャリティー・ソング『We Are The World』などはまさにそういった曲になりますし、日本で言えば、平原綾香の『Jupiter』なんかもそうでしょう。
こちらは、新潟中越地震の被災者を勇気付ける曲として、自然と広まっていった曲になりますよね。
ちなみにAKBの曲ですと、東日本大震災のときの『風は吹いている』がそういった曲になるのでしょう。

2サビ

音痴でもいい
下手だっていいから
歌うことは自由なんだ
笑われてもいい
みんなにあきれられても
君はきっと生まれ変わる

歌うのが下手だという自覚があると、歌を聴くのは好きだけれども自分が歌うのは恥ずかしくて躊躇ちゅうちょしてしまうというところはありますよね。
けれども、歌を生業なりわいにしているような人たちならともかく、そうではない大多数の人々にしてみれば、下手だろうが音痴だろうがどうでもいいわけで、歌が好きならば思いっ切り声を出して好きなように歌えば良いわけです。
人からどう思われるだろうかと気にしてばかりいないで、縮こまっていた自分を解放すれば、新しい自分に変わるきっかけにもなるのではありませんかね。

Cメロ

話すだけじゃ誤解がある
言葉は人を傷つけるよ
メロディー (メロディー)
乗せたら (乗せたら)
誰もがやさしくなれるんだ

確かに言葉は難しいですよね。
同じ言葉でも、誰が発した言葉なのか、その言葉を発したのが受け取り手に取ってどういった関係にある人物なのか、あるいはまた、受け取り手がその言葉をどう受け止めるかによって、その言葉の意味合いが異なってきますから。
言葉の真意が正しく伝わるためには、発する側にも受け取る側にも、それなりのセンスが必要なのかもしれませんね。

そういった扱いの難しい言葉でも、歌に乗せれば伝わりやすくなるということなのでしょう。
先にも記したように、歌の場合、言葉そのものだけでなく、感性に訴えかけているところもありますので、言葉に込められた意味や気持ちが、より人の心に届きやすくなるのかもしれませんね。

ラスサビ

音痴でもいい
下手だっていいから
今の気持ち 伝えようよ
外してもいい
音程 悪くても
君の歌が何か変える

照れくさくて言えないようなことも、青臭いと笑われそうなきれいごとも、およそ似つかわしくないキザなセリフも、通常の会話ではとても口にはできないけれども、歌にしてしまえば結構すんなりと口に出せたりする。
そういった意味では、歌に乗せた言葉のほうが素直でストレートな気持ちを伝えられやすいのかもしれません。
また、そういった言葉には、ときとして人の心に深く突き刺さってくるものがあったりもしますよね。
これもまた、歌の持つ力と言えるのかもしれませんね。

引用:秋元康 作詞, AKB48 「ドレミファ音痴」(2012年)


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