自由を取り戻せ! ~NGT48『Awesome』~
この曲は、NGT48の6thシングルの表題曲になります。
最年少の小越春花が初センターを務めたノリノリのダンスミュージックです。
曲名の「Awesome」というのは、アメリカ英語のスラングで、「すげぇ!」とか「最高!」とかいった意味なのだそうです。
さしずめ現代の日本で言うならば、「やべぇ!」といったところでしょうか。
センターを務めた小越春花も、良い意味での「ヤバイ!」という意味だというようなことをどこかで言っていましたね。
この曲は、「にいがた総おどり」というイベントとのコラボソングで、これまでのNGTの楽曲の雰囲気とはガラリと変わって、ラップを多用したファンキーなダンスナンバーになっています。
ちなみに、「にいがた総おどり」というのは日本最大規模のダンスフェスなのだとか。
ということで、歌詞のほうですけれども、みんなで盛り上がって踊りまくれといった感じの内容になっています。
ただ、この曲が作られたときの時代背景と言いましょうか社会状況を考えたときに、歌詞を仔細に眺めてみると、息苦しい世の中に対する風刺が込められているようにも受け取れるのですよね。
1番Aメロ
これはもう紛れもなくコロナ禍における日本社会のある種ばかげた状況を指して言っているわけです。
繰り返される意味のない緊急事態宣言や、行動制限だの自粛だのとメディアや胡散臭い自称専門家などが煽りまくり、人々があたかも相互監視するがごとく同調圧力が蔓延って、挙句の果てには、独りよがりの正義を振りかざす自粛警察とやらいう救いがたい輩まで現れる始末。
いったいどこの全体主義国家なのだろうかと思ってしまう……。
早々に正常化に向けて動き出していた諸外国とは異なり、この国ではつい最近までそういった状況が延々と繰り返されていたわけです。
そんなわけで、移動や行動の自由が制限され、人との接触も極力避けられるようになり、仕事においてはリモートワークが推奨され、各種イヘントなども中止もしくは無観客での配信による開催を余儀なくされるなど、人と人とが直接顔を合わる機会も相当に減っていましたよね。
けれども人間同士、やはり直接顔を合わせて言葉を交わしたいではありませんか。
直接会わなければ、気付けないことや感じ取れないこともあるわけですから。
「そんなことどうだっていいよね」とありますように、この間、いろいろと制約も多くて息苦しい思いもしてきたけれども、もうそんなことどうでもいいといったところでしょうか。
続く歌詞には「踊ろうぜ 踊るしかないし」とあって、思いっきり踊りまくって、溜まりに溜まったストレスや不安を解消しようじゃないかということなのでしょう。
1番Bメロ
「だって今日だけは」の「今日」というのは、「にいがた総おどり」というイベントの開催日と捉えて良いのでしょう。
前年は中止を余儀なくされましたけれども、この年は20周年を迎えた特別な日になりますから、全てを忘れて思いっきり踊り尽くそうということなのではありませんかね。
もっとも、実際にはオンラインでの開催ということになってしまいましたけれども……。
2番Aメロ
「降ってた雨もやっと上がって あんなに星がキレイに見える」というのは、いろいろと自由が制限され、息苦しくて憂鬱な日々が続いていたけれども、ようやくそれも終わりそうで、気分も晴れやかになってきたということなのではありませんかね。
いろいろなことがあったけれども、この際、何も考えずに音楽に身を任せて踊りまくろうということでしょう。
2番Bメロ
ここでの「今日」も、「にいがた総おどり」の日を指しているのでしょうけれども、同時に、これまでの制限が終わって、待ちに待った自由な日常が戻ってくることを言っているのではありませんかね。
やっと自由を取り戻せたのだから、オールナイトで思いっきり騒ごうということなのでしょう。
なにせこの間、夜間営業の飲食店とかも理不尽な規制を受けてきましたからねぇ……。
2サビの最後には、
とあるのですが、この「今日の空」というのは、「自由」を象徴しているのではありませんかね。
自由を奪われて縛り付けられることに慣らされると、自らの頭で判断することを放棄してしまうようになってしまう。
そして、そこに安心感と居心地の良さを感じてしまうなどという倒錯した心理に陥ってしまう。
いろいろと支配したがっている側からしてみれば、これほど都合の良い状態はないわけです。
ですから、自分が自分であるためにも、「自由」を決して手放してはいけないのですよね。
Cメロ
これから先も何が起こるか誰にもわからない。
コロナ禍の騒ぎが収まっても、また新たなウィルスが現れるなどして、今回と同じようなばか騒ぎが繰り返されることになるのかもしれない。
けれども、そんなことを心配ばかりしていても埒が明かない。
今は何も考えずに無我夢中で踊りまくろうじゃないか。
何はともあれ、「楽しくやろうぜ!」といったところでしょうか。
ラスサビは1サビと同じ内容で、抑えつけられていた自分を解放して本当の自分をさらけ出せと歌っているのですけれども、最後に
とあるわけです。
これは、制限だの自粛だのと訳の分からないルールがまかり通る世の中に対するアンチテーゼと言っても良いのでしょう。
この曲は、「踊れや踊れ!」といった感じの曲ではありますけれども、その裏にある真意は、なんだか窮屈で息苦しい世の中になってきたことに対するささやかな反発とも受け取れますよね。
「踊り」で代表させてはいますけれども、言わんとしていることは、「自由を取り戻せ!」ということなのではありませんかねぇ……。
引用:秋元康 作詞, NGT48 「Awesome」(2021年)