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三村妃乃 闘いの足跡

歌唱力No.1決定戦も、早6回目を数えることになったわけですけれども、その全ての回に参加し、ファイナリストLIVEにも第2回目以降途切れることなく連続出場しているのが、NGT48の三村妃乃です。
今度開催されるファイナリストLIVEで5回目の出場となり、最多出場を記録することになります。
そんな彼女の、この大会におけるこれまでの闘いの足跡を辿たどってみたいと思います。


第1回大会(2019/1/11)

・予選(敗退)
『手紙~拝啓 十五の君へ~』/アンジェラ・アキ

この大会がどんなイベントになるのかよくわかっていない状態でぼんやりと見ていたものですから、まだこの時点では「三村妃乃」とは出会えていませんでした。

2期生としてNGTに加入して、お披露目から半年と経っていない時期に予選審査が行われたわけですから、こちらとしてもまだ顔も名前も知らなかったのですよね。
とはいえ、一通り全部見てはいたので、彼女のことも見ていただろうし、その歌声も聴いていたはず。
けれども、まったく記憶にない。
言ってしまえば、このときは何も印象に残らなかったということなのでしょう。
まあもっとも、今ほどしっかりとは見ていなかったですし、何か他のことをしながら見ていた可能性も高く、なんとなく流してしまっていたのかもしれません。

この第1回大会では、三村妃乃も含めてNGTは予選で全滅してしまい、48グループで唯一誰も決勝大会には進出できませんでした。
三村妃乃自身は、子供のころにミュージカルスクールに通い、中学生のときには合唱部にも所属していましたから、歌にはそれなりに自信があったのだろうと思います。
ところが、この大会で予選敗退の憂き目に遭ってしまい、ショックだっただろうし悔しかったのではありませんかね。
今のままの歌い方ではダメだと考え、すかさずNGTの地元新潟で歌の先生を見つけ、自腹を切って教えを乞いに通うようになるわけです。

第2回大会(2019/10/31)

・予選(1日目7位、総合12位)
『カブトムシ』/aiko
・決勝1曲目(第3組2位)
『オン・マイ・オウン』/「レ・ミゼラブル」から
・決勝2曲目(総合3位)
『魂のルフラン』/高橋洋子

第1回大会の決勝大会が1月に行われて、その年の9月には第2回大会の予選審査が行われていますから、あまり間をあけずに2回目が開催されたことになります。
このわずか数か月の間に、三村妃乃は進化を遂げていたわけです。
もちろん、もともと素地はありましたから、前回の経験を踏まえ修正すべきところは修正し、リベンジを期してブラッシュアップを図ってきたのでしょう。

ただ、この間に48グループ全体を揺るがすような大きな騒動をNGTは引き起こしてしまっていたのですよね。
そのため、NGTを取り巻く状況には大変厳しいものがありました。
グループのイメージは地に落ち、NGTというだけで非難の的にされ、迷惑をこうむったと思っている他グループのファンからは白眼視される始末。
そんな逆風が吹き荒れる中を、当時まだ無名の研究生であった三村妃乃は、たった一人で決勝大会のステージに立ったわけです。

今となっては、運営サイドからも余計なことを言って蒸し返すなという「お達し」もあるだろうし、直接には関係のない彼女が騒動のことについて口にすることは、おそらくないのでしょう。
ですから、当時彼女がどんな心境で決勝大会に臨んでいたのか、本当のところは知る由もありません。
けれども外から見る限り、この状況は心理的にさぞかしキツイだろうなと気の毒に思ったものです。
決勝大会には他グループのファンも大勢入りますから、言うなればアウェイに引きずり出されたようなもの。
それでなくとも、加入してからこれまで大きなステージに立った経験もなければ他グループのメンバーと関わり合うこともほぼなかったわけですから、とんでもなく心細かっただろうし緊張感やプレッシャーも尋常ではなかったはず。
けれども、彼女はそういった重圧をはねのけて、見事にファイナリストにもなり、総合で3位をも勝ち取ったわけです。
彼女の勝負強さは、このころから既に表れていたということになります。

これまでにも何度か言及したことがあるのですけれども、この出来事はNGTにとっても大きな意味があったはずです。
それまでのNGTのマイナスイメージを払拭ふっしょくし、NGTに再びポジティブな関心を持ってもらえるようになったということで……。
現にこの大会後、彼女のSNSのフォロワー数は急激に増えたと言いますから、彼女が新生NGTの新たな入り口にもなっていたのではありませんかね。

さて、このときのファイナリストLIVEでは、グループメドレーで彼女は『世界はどこまで青空なのか?』を歌っていました。
本人としては、このときの歌唱は決して良い出来ではなかったそうなのですけれども、聴いているこちら側としては、これまで聴いた中で最も心を震わせる『世界はどこまで青空なのか?』ではありました。
ところで、本編ラストには『Maxとき315号』が全員で歌われていましたけれども、これは苦境に置かれているNGTへのエールを込めて、竹中Pがそのように取り計らったのかもしれませんね。

こうして、この第2回大会で初めて「三村妃乃」と出会うことになったわけです。
それと同時に、歌唱力No.1決定戦の魅力、すなわち、この大会が単なる歌うま選手権ではなく、そこに懸けるメンバーたちのそれぞれの物語が紡がれているのだということも、彼女に教えてもらったような気がします。
ともあれ、この歌唱力No.1決定戦における最大の収穫は、「三村妃乃」に出会えたことだと言っても過言ではないかもしれません。

第3回大会(2020/12/1)

・予選(2日目5位、総合8位)
『I LOVE YOU』/クリス・ハート
・決勝1曲目(グループB 1位)
『生まれてはじめて』/「アナと雪の女王」から
・決勝2曲目(総合7位)
『残酷な天使のテーゼ』/高橋洋子

三村妃乃は至福のひとときを味わっていたことでしょう。
なにせ、本家本元の高橋洋子さんを目の前にして、生バンドをバックに『残酷な天使のテーゼ』を熱唱したのですから。

前回大会でも、ファイナル進出を決めた後の2曲目には、同じく高橋洋子さんの『魂のルフラン』を歌っていましたから、この決勝大会で高橋洋子さんが審査員になるとわかったときには、これで三村妃乃が『残酷な天使のテーゼ』を歌ったら面白いだろうなとは思っていたのですけれども、よもやそれが現実になるとは……。
そうなると予想していたわけではまったくなく、あくまでも願望としてなんとなくそう思っていただけなので、実際に彼女がこの曲を歌ったときにはビックリしましたし、ちょっと嬉しかったですね。
こちらの密かな願望ではありましたけれども、期待に応えてくれたわけですから。

それにしても、よくもまあこんな難しい曲をご本人様の前で歌ったものです。
高橋洋子さん自身も、この曲は一度も完璧に歌えたことがないとおっしゃっているくらいなのに……。
そんな難しい曲を、歌唱力No.1決定戦の決勝という大舞台で、本人を目の前にして見事に歌い上げた彼女の度胸の良さには、あらためて感心してしまいます。

この回の決勝での歌唱は、1曲目にミュージカル曲、2曲目にアニソンと、前回のパターンを踏襲した形になっていました。
このころになるともう、ミュージカル曲の三村妃乃ということで皆の知るところとなっていたのではありませんかね。
ファイナリストLIVEでは、決勝1曲目に歌った『生まれてはじめて』をあらためてフルで歌っていましたけれども、後半は野島樺乃とのデュエットになっていて、なんとも贅沢ぜいたくな光景でしたね。

Nona Diamondsが誕生したのもこの回でした。
黒沢薫さんが作詞・作曲した『はじまりの唄』は、とんでもなく難しい曲ではありましたけれども、そんな曲を自分の持ち歌として歌えるというのは、とても嬉しかっただろうし幸せだったのではありませんかね。
何はともあれ、Nona Diamonds は、この時点における48グループのボーカルの最高峰ということになるわけですから、そこにメンバーの一人として参加できたことはとても誇らしかったのではないでしょうか。

ところで、ここまで着実に実績を積み上げてきている三村妃乃なのですけれども、自分の声質にはコンプレックスを抱いているようで、

「声が可愛い子や綺麗な子だったり、声に特徴のある子だったりが歌うのが上手になってきたら、自分はかなわない」

と弱気なことを言っているのですよね。
だからこそ、表現力とか発声とか声量とか、もっとピッチを正確にするとか、そういったものを努力しているのだとか。

確かに彼女の声質は、取り立ててこれといった特徴があるわけでも、強烈な個性があるわけでもなく、言うなれば、いたってスタンダードな声質なのかもしれません。
けれども彼女の歌の魅力は、パワフルな歌声と伸びやかなロングトーン、そしてひとつひとつの言葉が明瞭に聞き取れる滑舌の良さなのではありませんかね。
単純に、聴いていて気持ちが良いし、元気づけられる。

彼女はまた、

「歌のレベルは1日や2日では変わらないし、発声の基礎から直すとなると、とても時間がかかって簡単なことではないけれども、表現の仕方とか、ちょっとした喉の使い方とかで空気の使い方とか、それは練習すればするだけ上達すると思う」

といったようなことも話していて、

「歌は練習すればするほど上達するものだと思っている」

という彼女の言葉には、とても説得力を感じます。

第4回大会(2022/1/12)

・予選(1日目10位、審査員推薦枠)
『アイノカタチ』/MISIA
・決勝1曲目(グループD 2位)
『夢やぶれて』/「レ・ミゼラブル」から
・決勝2曲目(総合6位)
『あなた』/小坂明子

この回の大会では、順位を付けて予選を通過することはできず、審査員推薦枠でかろうじて決勝大会に進むことができました。
ちょうどNGTのコンサートリハーサルの真っただ中で、その合間を縫っての収録だっただけに、喉の状態も決して万全ではなかったのですよね。
歌の出来が良くなかったことは自覚していたようですけれども、まさかギリギリセーフのところまで落ちるとは思ってもいなかったでしょう。
さすがにショックを受けたのではありませんかね。

彼女はいみじくもこう言っていました。

「ファイナリストに残るのは最低条件で、何が何でもファイナリストに残りたい。
今のこのレベルの高さでは優勝するのは難しいかもしれないけれども、それでも優勝を目指すつもりで挑まなければ、ファイナリストにも残れない」

三村妃乃は、これまでこの大会で決勝に進出している唯一のNGTメンバーになります。
当然のことながら、ファイナリストになれたのも彼女だけ。
この大会は、あくまでも個人戦ではあるのだけれども、彼女は自分がNGTを代表して決勝大会に来ているという意識が強いのではありませんかね。
また、彼女がNGTに加入した直後に始まって、共に歩んできているだけに思い入れもとても強い。
そして、ファイナリストというのは、今や彼女にとってはアイデンティティと言っても良いくらい大切なものになっている。
NGT代表という自負もあれば、ファイナリストとしての意地もある。
それだけに、どうしても負けるわけにはいかない。

気迫の歌声でした、『夢やぶれて』は。
予選結果で審査員推薦枠という、彼女にしてみれば崖っぷちに立たされたところからの、起死回生を狙った渾身こんしんの一曲だったのでしょう。
自分が最も得意としているミュージカル曲を持ってきて、見事に歌い上げていました。
前回大会後、野島樺乃が卒業してしまいましたから、この曲をこんなふうに歌えるのは、数多あまたいる48グループのメンバーの中でも三村妃乃以外には誰もいないでしょう。
そういったことからすると、この瞬間この場において、彼女が日頃口にしているように、まさに唯一無二の存在となったわけです。
最終結果は6位と、ふたを開けてみると何のことはない、前回よりもひとつ順位を上げている。
やはり彼女は勝負強い。
と言うよりも、この大会が彼女を成長させ、強くしているのではありませんかね。

さて、この回のファイナリストLIVEでは、三村妃乃はグループメドレーで『情熱の電源』を披露していました。
この曲は、自身がメインボーカルを務める3人ユニット・Signalのオリジナル楽曲になります。
曲中の三村妃乃の長めのセリフが特徴的な曲。
そのセリフのバックコーラスとして岡田奈々が「Refrigerator~(冷蔵庫~)」と歌っていたのですけれども、このLIVEでしか見ることのできない光景ですよね。

第5回大会(2023/3/2&3)

個人戦
・予選(1日目12位、敗退)
『ドライフラワー』/優里
ユニット戦
・予選(1位)
『たばこ』/コレサワ
・決勝1曲目(中間発表2位)
『点描の唄』/Mrs. GREEN APPLE
・決勝2曲目(総合1位)
『好きだ。』/Little Glee Monster

よもや三村妃乃が予選落ちすることになるとは……。
確かにこれまでも予選順位は低かったり、前回大会でも審査員推薦枠でかろうじて決勝に進出したりと、わりと予選で苦戦している印象はありました。
とはいえ、決勝大会に進めば必ずファイナリストにはなっているのですよね。
そういったことからすると、やはり彼女は大きなステージで声を張って歌ってこそ、その真価が発揮されると言えるのかもしれません。

前回大会が終わった後に竹中Pが彼女の歌について、いろいろな歌を歌いこなせるように歌の幅を広げたほうが良いといったようなことを話していました。
おそらく、彼女自身もそれは自覚していて、必死にもがいているところだったのかもしれません。
前回大会の決勝2曲目に小坂明子の『あなた』という、これまでとはおもむきの異なる曲を歌ってみたり、ファイナリストLIVEでは、抜群の表現力で聴く人を魅了する古畑奈和とユニットを組んでAdoの『ギラギラ』を歌ってみたりしたのも、いろいろと模索していたのではありませんかね。

個人戦には敗退してしまいましたけれども、この回ではユニット戦も開催されることになっていて、彼女も迷うことなくエントリーしていましたので、落ち込んでいる余裕はなかったかもしれませんね。
というよりも、このユニット戦があるおかげで、個人戦予選敗退のショックを引きずらずに済んだと言えるのかもしれません。
何にせよ、個人戦でNGTは全滅してしまいましたから、幸か不幸かユニット戦に専念できることになったわけです。
三村妃乃としては、何が何でもユニット戦で優勝して、ファイナリストLIVEに出てやるぞという気持ちが強くなっていたことでしょう。
それと同時に今回は、他のNGTのメンバーをファイナリストLIVEのステージに連れて行きたいという野望も抱いていましたから、ユニット戦に向けた練習には相当に力が入っていたはずです。

決勝大会やファイナリストLIVEで生バンドを背に歌うということは、NGTではこれまで三村妃乃ただひとりしか経験していないことなのですよね。
ですから、そうしたステージを他のメンバーたちにも実際に体験してもらって、その素晴らしさや楽しさを実感してもらいたいという気持ちがあったのでしょう。
きっと大きな刺激を受けて得るものもたくさんあるだろうから、そうしたものをNGTに持って帰ることが、NGTにとってもプラスに作用するはずだということも考えたのかもしれません。
もちろん、歌を通してメンバーたちの魅力も多くの人たちに知ってもらいたいというのもあったのでしょう。
なかなか予選を突破できずに諦めかけていた清司麗菜を熱心に口説き、加入してまだ日の浅い新人の新井りりのに声をかけ、この2人を誘ってNGTチームを結成しユニット戦に挑んだわけです。

初めて開催されたユニット戦は、なかなか熾烈しれつな戦いでしたね。
当初の予想通り、三村妃乃のNGTチームと秋吉優花のHKTチームとの優勝争いになりましたけれども、NGTチームが予選を1位で通過して、決勝中間発表ではHKTチームに逆転され、最後に再逆転して優勝を勝ち取ったわけです。
NGTチームの劇的な勝利といったところでしょうか。
ユニット戦での初代チャンピオンとして、しっかりとNGT48の名を刻み付けるとともに、自身のファイナリストLIVEへの連続出場を果たし、NGTの仲間である清司麗菜や新井りりのとそのステージに立てるという、個人戦での予選敗退を吹き飛ばすほどの喜びに満たされたわけです。
そしてこのことが、次の第6回大会におけるNGTの大躍進へとつながっていくわけです。

この回のファイナリストLIVEでは、NGTのメドレー曲として『渡り鳥たちに空は見えない』を歌っていました。
これまではいつも1人で歌っていたメドレー曲を、今回はNGTの仲間たちと3人で歌えたわけですから、感無量だったでしょう。
アンコール曲では第2回大会ぶりに『Maxとき315号』が池田裕楽のリクエストにより全員で歌われました。
この曲を48グループの歌うま選抜がプロの生バンドの演奏で披露しているわけですから、NGTのメンバーたちやファンの人たちが見ていたなら、随喜ずいきの涙を流していたのではありませんかね。

第6回大会(2024/7/23)

・予選(2日目8位、15位)
『YELL』/いきものがかり
・決勝1曲目(グループB 1位)
『メフィスト』/女王蜂
・決勝2曲目(総合3位)
『人生は夢だらけ』/椎名林檎

この回もギリギリの順位での予選通過となりました。
審査員の今井マサキさんからは厳しい指摘がありましたけれども、同じく審査員を務めていた佐藤雄大さんからは好評価の発言もあり、両者が議論するという、これまでの予選審査ではなかった光景も見られました。
実力も実績もある人だけに、彼女に対する期待値がそれだけ高いということなのかもしれません。

今井マサキさんの指摘によれば、すごく苦しそうに歌っていて聴き手が共感しにくいといったようなことをおっしゃっていましたけれども、ひょっとして感情を入れ込み過ぎているということなのでしょうかね。
技術は高いレベルのものを持っていますから、ともかく今持っている技術のすべてを注ぎ込み、過剰に感情をのせて歌おうとするから、聴く人を置き去りにしてしまう。
そういうことなのでしょうか?

そういえば、あの高橋洋子さんが『「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」をだれよりも上手に歌えるようになる本』という著書の中で、歌う時に言葉に感情を込める必要はないといったようなことを述べられていました。

「歌というのは歌詞だけでできているものではなく、メロディでもアレンジでも感情を表現しているので、自然とそういう歌になっていくんです。
だから歌う曲に自分の身を預けて歌うことが大事なんです。そうすると、自然とそういう気持ちで歌えるのです」

(出典:高橋洋子『〜高橋洋子のヴォーカル・レッスン〜 「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」をだれよりも上手に歌えるようになる本』,リットーミュージック,2021年2月)

要するに、その歌が悲しい曲であれば悲しみを表す言葉が歌詞の中につづられているわけで、その言葉に引きずられて無理やり悲しみの感情を表現しようとしても、わざとらしくなって不自然ですし、聴き手に対しても押しつけがましくなってしまう。
歌っていて、自然と自分の中から湧き上がってくる感情に身を委ねるのが良いということのようです。
もしかすると、今井マサキさんの指摘していることとリンクする内容なのかもしれませんね。

とにもかくにも予選は通過できたわけですから、とりえずホッと胸をなでおろすことはできたのではありませんかね。
それに、今大会では彼女の他に、清司麗菜、大塚七海、鈴木凛々花の3人のNGTメンバーが決勝に進出したのですから、自分が予選通過できたこと以上に嬉しかったことでしょう。

今大会のNGTは、新人である4期生の全員参加もあり、全メンバーの6割強のメンバーが参加していて、48グループの中で最も参加率が高かった。
これもひとえに三村妃乃の働きかけによるものなのではありませんかね。
歌唱力オタクを自称する彼女の大会への情熱、歌への情熱が他のメンバーたちにも伝播し、彼女の熱心な働きかけ(もしくは指導?)も功を奏したのか、自身を含む4人のメンバーが決勝に進み、3人がファイナリストになったわけですから、大躍進と言っても過言ではないでしょう。
なにせ、これまで決勝に進出できたのは彼女ただ一人だけだったのですから。
彼女にとっては悲願でもあった決勝ステージにNGTの仲間とともに立つということが、ようやく実現したわけです。

ところで前回、個人戦では予選敗退してしまったため決勝ステージには上がれなかったのですけれども、その代わりに客席からステージを観覧する機会を得て、いろいろと考えさせられること、気づかされることがあったようです。
客席からどんなふうに見えるのか、客席ではどんなふうに聞こえるのか、どんな反応をしているのか、照明の効果は、等々いろいろなことをつぶさに観察して、ステージに立つ側としてどうすればよりしっかりと歌を聴き手に届けることができるのか、今回の決勝大会に臨むにあたって大いに参考になったとのこと。

そんなことを踏まえながら決勝1曲目に選んだのが、女王蜂の『メフィスト』。
決勝1曲目の歌唱は、出場者が次から次へと入れ代わり立ち代わりで歌っていくので、どんなに上手く歌っても、よほど突出した上手さがない限り、なかなか印象に残せない。
まあ、皆上手いですからねぇ……。
そこで考えたのが、1曲目の選曲はインパクト重視ということだったようです。
なかなかクセの強い曲ではありましたよね。

そして2曲目は、優勝を狙うのであれば、置きにいくのではなく1曲目に負けない勝負曲、メッセージ性があって感動する曲を選ぶ必要があるということで、椎名林檎の『人生は夢だらけ』ということになったそうです。
曲の感じは、結構ミュージカル調なところもあって、彼女の真骨頂が発揮される、まさに勝負曲だったわけです。
難易度の高い曲だったのではないかと思うのですけれども、見事に歌い切っていました。
最終結果は3位と、過去最高順位にまで返り咲くことができました。
さらには、清司麗菜、大塚七海もファイナルにまで進み、今大会では3人のNGTメンバーがファイナリストとなったことで、彼女が長いこと夢見ていた光景が現実のものとなったわけです。

そしてその先へ……

三村妃乃がNGTに加入し、2期生としてお披露目されたのが2018年6月のこと。
その同じ年の11月上旬に「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の開催が発表され、予選審査が11月31日、12月1日に行われています。
このタイミングは、運命だったのかもしれませんね。
いつしか彼女の活動の軸はこの大会に置かれるようになり、大会の歩みは同時に彼女の歩みにもなっていきました。
今やこの大会と三村妃乃とは、切っても切れない関係となっていて、それはもう多くの人が知るところとなっているわけです。

そんな彼女がこの大会を通して紡いできた物語のこの先にあるのは、やはり頂点である「優勝」ということになるのでしょう。
アイドルとしての「三村妃乃」を推すとか推さないとかとは関係なく、この大会の1ファンとしては、歌唱力No.1決定戦の申し子である「三村妃乃」がその頂点に立つ姿を、ぜひとも見届けてみたい。
そして、誰に頼るでもなく何に頼るでもなく、彼女自身の歌の力でもってソロ曲を掴み取ってほしい。


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