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努力の尊さ ~AKB48『光と影の日々』~

この曲は、AKB48の45thシングル「LOVE TRIP/しあわせを分けなさい」のカップリング曲になります。
高校野球(夏の甲子園大会)の応援番組のテーマソングとして作られた曲です。

甲子園を目指す高校野球部をモチーフにしてはいますけれども、そこに限定することなく、何かひとつのことに情熱を傾けてガムシャラになっている、とりわけ若者たちへのエールの曲と言って良いのでしょう。

1番Aメロ

僕たちはあと何回 夢を見られる?
太陽をあと何周 回れるのだろう?

また巡るその季節は 何を伝える?
今見える景色だけがすべてじゃない

高校野球で言えば、「夢」は甲子園であり、そこで優勝することになるのでしょう。
ただ、自分が野球部に所属している間にその大会に参加できる回数というのは限られていますよね。
学年が上がるごとに、あと何回チャンスが残っているのだろうかとつい考えてしまう。

そもそも1年生のときからレギュラーとして試合に毎回出場できるような人などそれほど多くはないでしょうから、野球部として大会に参加できても、自分が試合に出られるチャンスとなると、さらに限られてくる。
そんなことを思うと、否が応でも焦りと不安が生じてきてしまう。
その切実さが、このAメロ前半では表されているのでしょう。

この歌詞の主人公が所属している野球部は、あまり強くないのかもしれませんね。
毎年、地方大会で敗退して甲子園に手が届いていないか、もしくは甲子園まで行けたとしても緒戦で敗退してしまっているとか……。
まあ、トーナメント戦ですから、1回負けたらそれっきりになってしまうというのもありますしね。
そんなわけで、なかなか上には行けずに苦悩しているといったところでしょうか。

Aメロ後半では、そんな繰り返される苦悩の中で、何を学び、どう成長していくのかと問いかけているわけです。
そして、今目の前に見えているものだけが全てではなく、未来にはまだ見ぬ景色が広がっているはずだから、希望を持ってしっかりとその未来を見据えていくことが大切だということなのでしょう。

1番Bメロ

日差しが雲に遮(さえぎ)られても
空の広さは変わらないんだ
明日も…

どれほどの困難や挫折があったとしても、いつだって希望が失われることはない。
ここでは、そう言っているのでしょう。
読み方を変えてみると、希望を失わない限り、いかなる困難も挫折も乗り越えていけるということにもなります。

ここのフレーズは、なかなか詩的な表現ですよね。

1サビ

願うなら
光はそこにある
その手伸ばせ! 届くまで
拭わずに落ちる汗は
いつも美しい
君の努力がキラキラと
道を照らしてる

掴み取りたいものがあるのならば、手を伸ばせ。
つまり、手に入れたければ、勝ちたければ、何者かになりたければ、そのために努力をせよということでしょうね。

汗は努力の証。
「拭わずに落ちる汗は いつも美しい」というフレーズは、努力することの尊さを表現しているのでしょう。
その努力が、自分の歩んで行く道を迷うことがないように指し示し、明々と照らし出してくれる。

努力は必ずしも報われるわけではありませんよね。
「報われる」ということを結果だけに限定するならば……。
何かしらの目的があって、それを達成するために努力をするのですから、もちろん結果は大事なわけです。
けれども、結果がかんばしくなかったからといって、その努力が無駄だったのかというと、そんなことはないわけです。
結果が良くなければ、落胆もするし悔しい思いもするでしょうけれども、それも学びのうちのひとつであって、その過程における努力から得たものも少なくはないはずです。
そして何よりも、何かに夢中になって懸命にそれに取り組んだという経験は、結果がどうであれ、何物にも代えがたい大切な記憶になるのですよね。

努力しているそのときには、苦しみばかりでつらいと思うことが多いかもしれません。
けれども、後々になってそのときのことを思い返してみると、実はとても貴重で幸福な時間を過ごしていたのだなと思うときが必ず来るものです。
それをもってして、努力は報われているとしても良いのではありませんかね。
結果はあくまでも結果にすぎないわけで、なんならひとつの里程標にすぎないわけです。
大局的に考えて人生において大事なのは、何かに夢中になって努力をしたというその経験の方なのではないでしょうか。

そう考えると、やはり努力するということは尊いことなのですよね。
特に若いときの、あらんばかりの情熱を注いだ努力は。

2番Aメロ

悔しさをあと何回 乗り越えればいい?
グラウンド あと何周 走り続けるの?

勝利とは?敗北とは?何を教える?
泣けるほど熱くなれる大事なもの

一体何度悔しい思いをすれば良いのか、何度つらい思いをすれば良いのか……。
懸命に頑張ってはいるのだけれども、なかなか思うようにはいかないとなると、誰しもそう思ってしまうものです。

「グラウンド あと何周 走り続けるの?」というのは、どれだけ努力すれば良いのかという自問ですよね。
あきらめるのは簡単だけれども、中途半端に投げ出したのでは、言い知れぬ後悔だけが残ってしまう。
やはり、どんな結果が待っていようとも、納得がいくまであきらめずに努力し続けることが大切だということなのではありませんかね。

「泣けるほど熱くなれる大事なもの」とは、この歌詞の主人公にとっては野球であり甲子園を目指すことなのでしょう。
誰かにやらされるのではなく、それが好きで好きで自分の青春を懸けて情熱を注いだものが、まさに「熱くなれる大事なもの」なのですよね。
そんな大事なものであるからこそ、それで勝とうが負けようが、あるいは成功しようが失敗しようが、その経験から得られるもの、学び取ったものは、その人の成長にとってとても貴重なものになるのではありませんかね。

2番Bメロ

その片隅に影があるから
やがて差し込む希望を待てる
いつかは…

この曲のタイトルにも含まれている「光と影」というのは、勝利と敗北、成功と失敗、栄光と挫折、あるいは喜びと悲しみといったようなものの対比の比喩として用いられているわけです。
ここのBメロの歌詞の中にもあります、影があるから希望を待てるというのは、敗北があればその裏返しとして必ず勝利があるといったように、困難な状況にあればこそ希望を見出せるのではないかということなのでしょう。

「いつかは…」という表現には、確実に光によくせるときがくるとは保証できないということを含意がんいしているのではないでしょうか。
つまり、努力し続けたからといって、確実に勝利するとは限らないということです。
ただ、たとえそうであったとしても、希望を見出せたのなら、あきらめることなくそれに向かって努力し続けることが大切だということなのではありませんかね。

2サビ

振り向くな
光は前にある
自分のこと信じろよ
あきらめなければ きっと
空は晴れて来る
君の瞳に映るはず
眩しすぎる夢

過去の敗北や失敗に囚われることなく、自分を信じて前に進め。
希望の光は過去ではなく未来にあるのだから。
あきらめずに努力し続けていれば、必ず何かしら道が開けてくるもの。
そうすれば、自分の夢に少しでも近づくことができるはず。
ここでは、そう励ましているわけです。

落ちサビ

そう
すべてはそこにある
見上げていた 高い山
約束の場所はいつも
遠く見えるけど
大地踏みしめ進むだけ

老子の言う「千里の道も一歩から」ではありませんけれども、どんなに高い山であっても、どんなに遠い場所であっても、歩幅数十センチの一歩一歩を積み重ねることによって、いずれは到達することができるわけです。
その一歩一歩こそが地道な努力ということになるのでしょう。
夢を掴みたければ、たゆむことなく歩き続けるべしということでしょうかね。

ラスサビは、冒頭のフレーズが「振り向くな」から「今」に代って、末尾に「道を照らしてる」というフレーズが追加されて2サビが繰り返されています。

今まさに夢に手が届くところまで来ている。
自分を信じてたゆまず歩き続けてきたことで、道が開けてきたといったところでしょうか。

エンディング(Aメロ)

僕たちはあと何回 夢を見られる?
じたばたともがきながら青春は続く

限られた時間の中で、どれだけ夢を追い求めていけるのだろうか……。
そんな自問や葛藤、悩みなどを抱えながら、情熱だけを頼りに、迷おうがつまずこうがただひたすら前に進んで行く。
それが青春というものなのでしょう。

引用:秋元康 作詞, AKB48 「光と影の日々」(2016年)


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