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STU48、ASHの系譜

歌唱力No.1決定戦におけるSTU48の強さは、今では誰もが認めるところだと思うのですが、その強さを牽引しているのがASH(アクターズスクール広島)出身のメンバーたちなのですよね。

これまでの大会を振り返ってみますと、ASH出身者は以下の通りになります。

第1回大会
 決勝進出者(0人):
 ファイナリスト(0人):
第2回大会
 決勝進出者(1人):峯吉愛梨沙
 ファイナリスト(1人):峯吉愛梨沙
第3回大会
 決勝進出者(2人):峯吉愛梨沙、池田裕楽
 ファイナリスト(1人):池田裕楽
第4回大会
 決勝進出者(3人):今村美月、池田裕楽、清水紗良
 ファイナリスト(3人):今村美月、池田裕楽、清水紗良
第5回大会
 決勝進出者(5人):峯吉愛梨沙、池田裕楽、岡村梨央、岡田あずみ、久留島優果
 ファイナリスト(2人):池田裕楽、岡村梨央

第1回大会では0人でしたけれども、第2回大会以降、ファイナリストには常に誰かしらASH出身者がいる。
さらに、決勝進出者を見てみますと、年々ASH出身者が増えていっているのですよね。
第4回大会に至っては、決勝進出に3人いて、その3人がそのままファイナリストにもなっている。
もはやこの大会は、ASH出身者を抜きにして語ることはできないと言っても過言ではないでしょう。

峯吉愛梨沙

峯吉愛梨沙は第2回大会でファイナリストになっていますけれども、このとき決勝1曲目に歌ったのが、JUDY AND MARYの『そばかす』。
これがまた彼女のあの特徴的な声とキャラクターにピッタリとマッチしていて、結構衝撃的でした。
ともかく聴いていると楽しくなってきてしまう歌でした。
かなり個性的な歌声であるだけに、選曲でハマったときの爆発力は大きいものがありますよね。

今大会では、前回予選落ちしているだけに、かなり気合が入っていましたね。
予選で歌った『点描の唄』は、彼女のあの個性的な声にハマるのだろうかと思っていたのですけれども、完全に峯吉愛梨沙の『点描の唄』を歌っていました。
ただ、決勝1曲目は『フレンズ』と、彼女の持ち味を活かせそうな選曲ではあったのですけれども、やや力み過ぎていたようで、残念ながら悲願のファイナリスト復帰とはなりませんでした。

今村美月

今村美月は第4回大会でファイナリストになっています。
決勝1曲目は『ブギートレイン'03』と、スインギーな曲を選択してきました。
そして2曲目には『A Woman Needs Jazz』と、これまた個性的な選曲でした。
彼女はパフォーマンスに優れた人ですから、どちらの曲も彼女らしさ全開で、とてもステージ映えしていましたね。
第3回大会までは毎回予選落ちしていましたけれども、ピアノ伴奏によるスタジオでの歌唱よりも、バンド演奏によるステージでの歌唱でこそ本領を発揮する人なのでしょう。

これまで決勝大会では、全体的にどうしてもバラード系の曲が多くなりがちで、ジャズテイストな曲を歌ってくるような人などいませんでした。
そういった意味では、彼女は歌唱力No.1決定戦に新たな可能性をもたらしたのではありませんかね。
こういったジャンルの曲でも、自分の持ち味さえ活かし切れていれば、十分に勝負できるのだということを知らしめたということで。

池田裕楽

第3回大会の予選で、池田裕楽は『なごり雪』を歌っていましたけれども、およそ世代が違っていて全くなじみがないはずなのですよね。
誰でもが歌えそうな曲ではあるけれども、それだけに、この曲で高評価を得るには、よほどの歌唱力がないと難しいような気がする。
けれども、何をかいわんや、圧倒的な歌唱力で審査員たちを唸らせてしまったわけですから……。
決勝大会の2曲目には、これまた懐メロと言っていい『異邦人』を歌って、見事優勝しました。
STUに加入して1年ほどの新人が、初出場にして優勝してしまったわけです。
ただただファイナリストLIVEに出たいという気持ちで参加していましたから、まさか自分が優勝するとはまったく考えておらず、優勝が決まった瞬間に一番驚いたのは彼女自身だったのではありませんかね。

第4回大会では、ディフェンデイング・チャンピオンとしてのプレッシャーなど全く感じさせないほどの貫録を見せつけてくれました。
決勝1曲目には『喝采』などとまたぞろ古い曲を選んできましたけれども、本人としては、意図的にそういった曲を選んでいるわけではなくて、人に勧められたり、自分の音域や声質に合っている曲をいろいろと物色したりして、聴いてみて気に入った曲を選んだら、たまたまそうなってしまっただけなのだとか。
おかげで、昭和歌謡のイメージが付いてしまった感がありますけれども、黒沢さんも言っているように、彼女は結構いろいろなジャンルの曲も歌えて、別の魅力もあるのですよね。
決勝2曲目には、チャレンジ曲として『花になれ』を歌っていました。
今までの歌い方とは打って変わって、かなりエモーショナルな歌い方をしていて素晴らしかった。

第4回ファイナリストLIVEで披露することになったのが、池田裕楽の『気にならない孤独』。
STUのコンサートとかでも、わりとよく歌わせてもらっていましたけれども、考えてみたら、STUでソロ曲を持っているのは彼女だけなのですよね。
この曲、結構息継ぎが大変な曲で、特にラスサビの、音が上がっていって畳み掛けるように歌うところでは、さすがの池田裕楽でも最初のころは歌っていてかなり苦しそうでしたからね。
けれどもこのLIVEでは、しっかりと仕上げてきていて、抜群の安定感を見せつけてくれました。
このLIVEでは他に、矢野帆夏とのデュエット(『長い間』/Kiroro)も披露されましたけれども、普通に考えて最強のデュエットですよね。
ところが竹中Pの話によると、池田裕楽は耳が良くて正確に音を取れるのだけれども、そのぶん誰かと一緒に歌うとメロディーを持っていかれてしまうという弱点があるそうな……。
天才的な正確さも諸刃の剣といったところでしょうか。
それにしても、池田裕楽にも弱点があったというは、なんだかホッとしますよね。
まあもっとも、ハモリが苦手だというのは、ソロ歌唱では弱点にはなりませんけれども……。

第5回大会で、池田裕楽は史上初の2度目の優勝を果たしました。
いみじくも、「16歳の自分に勝った」と言っていましたけれども、彼女はすでに一つ上のステージで戦っているのですよね。
誰かを目標にするとか、誰かを超えるとかではなく、今までの自分を超えるために自分自身と戦っている。

優勝特典のハワイロケの中で彼女が話していましたけれども、決勝大会までの1カ月間は、そこで歌う2曲しか聴かないのだとか。
もちろん、その2曲は繰り返し歌い込んで自分のものとしているわけです。
その上でさらに、他の曲をシャットアウトして、その2曲しか耳に入れないというのは、かなり徹底していますよね。
彼女のピッチの正確さは、こういったところからも来ているのかもしれませんね。
それと、なるほどなと感心したのが、歌と向き合うというよりも、喜びだとか悲しみだとかの自分の感情と向き合うといった話。
どういうことなのかというと、日常生活の中でさまざまな感情が自分の中に生じるわけですけれども、その際の心の状態をつかみ取って、歌う際に歌詞の内容に沿った感情を再現するために、その心の状態を呼び覚ますということなのでしょう。
つまり、歌の表現力を上げるための、彼女なりのひとつの方法ということなのではありませんかね。

今や絶対的チャンピオンと言ってもいいくらいの貫禄を示している彼女ですけれども、ASH時代は特に歌を褒められたということはなかったのだそうです。
もともと、歌よりもダンスをやりたくてASHに入ったということで、歌うことは好きだったけれども、歌が上手いとは自分でもまったく思っていなかったみたいですね。
それが今では、STUの公式サイトのプロフィール欄に「自分の武器は歌です」と堂々と記しているあたり、彼女の自信の表れなのでしょう。

清水紗良

清水紗良は、第3回大会で予選通過しながらも体調不良で辞退してしまったため、決勝には出ませんでした。
出ていれば、ファイナリストになっていた可能性が高かっただけに残念でしたよね。
予選で歌った『I'm Proud』は難しくてリスクの高い曲ですけれども、持ち前の見事な歌唱力で歌い切っていました。

第4回大会では、前回悔しい思いをしているだけに、大会に懸ける意気込みがとても強かったのではありませんかね。
結果は5位入賞ということで、念願のファイナリストLIVEに出演できることになったのですけれども、やはり実力は確かなものがありますね。
幼いころにはNHK広島児童合唱団に所属して歌の基礎を学び、ASH時代から歌には定評のある人だっただけのことはあります。
彼女の歌は言語明瞭で、ひとつひとつの言葉がはっきりと聴き取れて、聴いていて気持ちが良い。

今大会は、決勝大会の時期と海外留学の時期が重なってしまったため不参加でしたけれども、ファイナリストLIVEの常連となれるような人ではありますよね。

岡村梨央

第5回大会において最も注目していたメンバーが、岡村梨央。
ASH限定オーディションで加入した4人の内の1人。
4人とも文字通りの即戦力で、歌えるし踊れる。
歌に関しては、岡村梨央が抜群に上手いですね。
低音を得意とし、ややハスキー気味の歌声は、声量もありますし発声もしっかりしている。
中学生ながら表現力もとても高い。
ASHには小学校1年生のときから所属していて、そこでかなり鍛えられてきたのでしょう。

ちなみに、期別で言ったら、ASHでは彼女のほうが清水紗良や池田裕楽よりも先輩にあたるのですよね。
清水紗良とはASH時代から同じステージに立ったりと仲が良かったようですけれども、池田裕楽とは通っていた場所が違っていたため、面識はなかったのだとか。

予選で歌った『いい日旅立ち』ですけれども、歌い出しの低音の声に、見た目の印象とのギャップで驚かされた人も多かったのではありませんかね。
彼女のあの低音は強力な武器ですよね。
以前はコンプレックスに感じていたようですけれども、今では、これを自分の持ち味として活かしていくことを考えているそうな。

決勝では、同じ組に彼女を含むSTUのメンバーが3人と、同じグループ同士での戦いになってしまいました。
実は彼女、決勝大会の数日前から喉の調子を悪くしていて、声を張ろうとするとかすれてしまい、上手く歌えない状態になっていたのですよね。
実際に、1曲目のときも2曲目のときも、声を張ろうとすると、少しかすれてきていましたよね。
けれども、それを持ち前の表現力で上手くカバーしていた。
それでもってファイナルに残り、6位にまでなったのですから、大したものです。
もし万全の状態で臨んできていたなら、どんな結果になっていたのでしょう……。
後日この件に関して、「プロの歌手の人は、たとえ体調が悪くても、ちゃんと歌うだろうし、体調を整えられなかったのは自分の責任なのだから、上手く歌えなかったとしても、体調が悪かったことを言い訳にはしたくない」と、彼女はキッパリと言っていました。
中学生らしからぬプロ根性の持ち主のようですね。

それにつけても、まだ中学生で今大会が初参加だということを考えると、凄い人が現れたものです。
俗に言う「伸びしろしかない」というやつで、この先どれだけ進化していくことになるのか、末恐ろしさを感じるとともに、とても楽しみな人でもあります。


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