一途な思いは、ときとして人を狂気へと誘う ~STU48『そして僕は僕じゃなくなる』~
第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦において決勝大会に出場した6人のメンバー(池田裕楽、岡田奈々、矢野帆夏、小島愛子、峯吉愛梨沙、谷口茉妃菜)による楽曲。
間奏ではラテン調のメロディが流れるアップテンポのカッコいい曲。
ソロパートも多くて、ひとりひとりの特徴的な歌声がはっきりと聴きとれるのも良い。
一言で言ってしまえば、好きな人のことを狂わんばかりに一途に思い詰めている人を歌った曲。
1番の歌詞に、
とあることから、おそらく「僕」と「君」とは、知り合いではあるけれども、付き合っているわけではないのでしょう。
つまり、「僕」の片思いということですね。
1番Aメロの歌詞を見てみると、
とあり、さらに、
とある。
ここで言う「対岸」とは、「僕」と「君」との隔たりを表している。
その隔たりは、物理的・距離的な隔たりだけではなく、心の隔たりをも表している。
そして、「君」は今どこで誰と楽しく過ごしているのだろうかと妄想を膨らませているわけです。
そしてBメロで、
とくるわけです。
いろいろと妄想して嫉妬に苦しめられるくらいなら、今すぐに「君」のもとに駆け付けたいというわけです。
どんな障害、どんな苦難があろうとも……。
それを、桟橋から飛び込んで雪が舞い落ちる海を泳いで渡るなどという狂った行動で言い表しているわけですけれども、それほどまでに思い詰めているということなのでしょう。
ところが、2番になると一転して、
となる。
いろいろと妄想はしてみたけれども、実際にはきっとどうということなく過ごしているに違いないから、無理に知る必要はないと自分に言い聞かせている。
そして、
とあり、ここからも「僕」の「君」への一方的な恋であるということがうかがい知れる。
さらに2サビの歌詞に、
とありますように、自分が傷つかないように、ただ一途に「君」を思っているだけにしておこうというわけです。
落ちサビには、
という歌詞があるのですけれども、これはつまり、万難を排して「君」のもとに駆け付けるか、それとも、遠くから「君」を思い続けているか、どちらの「僕」であるべきかということなのでしょうかね?
あるいは、どちらの「僕」になってしまうのだろうかということでしょうか?
ラスサビ(1サビと同じ)には、「僕」の「君」への情熱的な恋情の言葉が並んでいるのですけれども、その最後に、
とある。
「僕が僕じゃなくなる」というのは、もはや理性では自分をコントロールできなくなってきているということを意味しているのでしょう。
それほどまでに、「僕」は「君」のことを愛おしく思っているということなのですよね。
なんとも情熱的な歌ですね。
引用:秋元康 作詞, STU48 「そして僕は僕じゃなくなる」(2021年)
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