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小池博史ブリッジプロジェクト - Odyssey「Soul of Odyssey」稽古見学記(2回目)

2月22日〜28日に上演される小池さんの「Soul of Odyssey」の稽古場に再びお邪魔した。

すごく大事だから、絶対に行かなければならないから、と自らアポイントメントを入れておいて直前には緊張して心臓が爆発しそうになる…
これはとても大切なプロセスで、緊張とかは自分側の話で、それより「ねばならない」と感じる直感と信念のほうを優先するべきだ。

作品Soul of Odysseyは、前回(稽古開始4日目)で約1時間半の作品のうち30分強まで稽古が進んだという時点ですでに、観客が間違いなく惹き込まれる作品になることは明らかだとわかる。

今回(稽古21日目)では(演者の1人が欠けた日だったとはいえ)、見終わったあとに言葉を発するのが難しいほどに濃密で、
演者(つまりは小池氏の)気迫、リズムとムーブメントの渦に身を任せているだけで、こちらの息があがるほどだった。

本番でもう少し物理的距離をとって(稽古場だと演者が50cmくらいまでの距離にいるので!)全体を捉えたら、また、全く違う現れ方が見えてくると思う。

芸術表現が生き様になるとき

こうして稽古を拝見させていただいているからには、広く”観に来てください!”と普通に宣伝したいと思っているけれど、
とりわけ舞台に関わっているひとたちで、私の活動を知っている人であれば、小池さんの今年の舞台を1つでも絶対に見てください!と言い切りたい。
舞台芸術のこの表現を、体に刻んでほしい。

過去に生きたひとで、天才だと感じる演出家やアーティストが皆さん、それぞれにいるでしょう?でもその人たちの作品は二度と見られない。
”見逃す”という安易な言葉で、舞台人は語ってはいけない。

小池さんに関しては、作品1つ1つの重要性も勿論なのだが、生き様の話である。
2012年にパパ・タラフマラを解散して、この社会/世界はおかしな方向に向かっていると、繰り返し伝えてきた。
パパ・タラフマラの時代と違うのは、具体的な問題提起を、ありのまま(もちろん作品創作に落とし込むので小池さんのフィルターや創造性を通してですが)に社会に伝えるようになった。
それは、婉曲的に、あるいは比喩的に言っている場合じゃない、もう間に合わないかもという、緊急的な叫びに変わったということかもしれない。

自分がプロデューサーという立場ゆえ、小池さんの休む間もない創作姿勢は無茶すぎるようにも見えた。
けれども、生きものである私たちの時間にも身体にも限りがあり、まだ燃やせるものが体内にあるうちに(精神は死ぬまで燃え尽きない可能性もあるが肉体は徐々に衰える)動かなければならないという思いはよくわかる。

かくいう私も「ちょっと動き過ぎじゃないか」と言われることがあるが、自分自身もまた、いのちは永遠ではないことを生きものとして実感し、だからこそ、今動かずに誰が代わりにしてくれるのですか、と問い返したくなる。

使命でしかないことに命の火を燃やすときに「やりたいことだらけなのでしょう」みたいな言われ方をしても、それも運命と、自分ごとなら諦めよう。
が、こと他人のことであれば、応援しなければと思う。

小池作品を見るたびに、その叫びがどんどん迫ってきて、ゆえに、見たときに言葉にすることが非常に困難になるのですが、その状態に置かれたとき、稚拙な言葉でもいい、ひとことずつでも発していくことが必要なのだと思っています。
***

「Soul of Odyssey」観劇はグルーヴ感に身を任せ、シンプルに楽しんで!

と、書いていると「すごく難しい作品なのでは?」と思われるかもしれませんが、全くそんなことない!

Soul of Odysseyは、演者の動き、表情、終始取り巻くグルーヴ感に身を任せていたらあっという間にラストシーンまで連れて行かれる、「観る幸せ」を味わえる作品です。観劇をして、身体的にも知的にもアドレナリンが放出されまくる作品です。

過去の作品を拝見したときも語ったように、小池さんは”過去の成功した枠”にまったく止まらず、とにかく実験につぐ実験を続け、その中で「これは」と思ったものを次の糧にする・・・というやり方を40年続けてきているだけに、演出の手腕はもう魔術師並み(笑)!
驚き、圧倒されること間違いないです。

公演情報↓
Soul of Odyssey @ザ・スズナリ
https://kikh.org/2024/09/16/soul-of-odyssey/
#舞台芸術 #小池博史 #SoulofOdyssey #オデュッセイア #創作 #スズナリ

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「現代サーカスの覗き穴」by 瀬戸内サーカスファクトリー田中未知子
瀬戸内サーカスファクトリーは現代サーカスという文化を育て日本から発信するため、アーティストをサポートし、スタッフを育てています。まだまだ若いジャンルなので、多くの方に知っていただくことが必要です。もし自分のnote記事を気に入っていただけたら、ぜひサポートをお願い申し上げます!