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サニーさんの母校が3年間やってきた「女性×防災」のプロジェクトのお話聞いてきたよ。【Supported by 香川大学】

「南海トラフ地震、豪雨災害、コロナウイルスなど、大災害時代を生きる女性たちのリアルなメッセージを届けたい」

サニーさんの母校である香川大学と徳島大学では、2018年から2020年までの3年間、女性だけで防災を考えるプロジェクトを発足。

毎年様々な角度から防災にアプローチし、その度に見えてきたことや気づきを伝えてもらうべく、瀬戸内サニー編集部が香川大学IECMS地域強靭化研究センターの磯打准教授にインタビューしました。

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1年目:防災をもっと前向きに考える

ー女性×防災。あるようでなかった、このプロジェクトの出発点はなんだったのでしょうか?

このプロジェクトの出発点は、※ライフステージフリーという考え方を取り入れて、防災と女性との関係を見直すことで、すべての女性が前向きに自由な価値観で生きていくことを応援したいという思いから始まりました。

※ライフステージフリー
防災に女性が関わるとき、その女性に対して、無意識に育児期や介護期といったライフステージを設定して縛っているのではないだろうか?そんな考えを取っ払っていこうというもの

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ーまず最初は、どんなことを行ったんですか?

最初に行ったのは、タブーなしで防災について話し合ってみること!それぞれに専門分野を持つ女性たちが集まって、防災に本当に必要なものは何なのか、ざっくばらんに話し合いました。

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ーおお、タブーなし!そこではどんな話題が出てきたのでしょうか?

そこで出た話題の1つが、「災害が起こったら社会にどんな良い変化が起きるか」

災害や防災といえば、暗いイメージを持たれがちですが、それを機に社会が変わる明るい面もあるはず、と。

「ご近所づきあいをもっとするようになるかも。」
「地産地消や自給自足を取り入れるかも。」
「インフラが整備されるかも。」
「それまでにあったしがらみがなくなっているかも。」

そんな言葉が次々と聞こえてきました。

ー災害をポジティブにとらえるという、ちょっとタブーな視点からみたからこそ出てきた言葉ですね!

そうなんです。そしてこれまでになかった「災害をポジティブにとらえる」という発想の中で見えてきたのは、私たちの日常生活が災害という非日常を経験した後も、変化しつつ続いていくということでした。

2年目:実際に非日常を体験してみた

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ー災害っていつもどこか他人事で、実際に必要なものってなかなか見えてこないものなんですよね・・・。

私たちも「想像するだけでは、きっと本当に必要なものは見えてこないはず」と考え、2年目は1泊2日の防災キャンプを実施することに。プライバシーや防寒に配慮した居場所づくりや、持ち寄った食材での食事づくりなどを行い、日頃の備えや工夫、不安に思ったことや困ったことを共有しました。

ー実際に防災キャンプを行って、どんな反応がありましたか?

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特に参加者に好評だったのが、災害時のトイレ体験。災害時にトイレに水を流せないことを想定し、ビニール袋や新聞紙、おむつ等を使ったトイレを使用してもらいました。

ートイレ体験まで!でも、避難先でのトイレ事情はとても大変だということはよく聞きます。

そうなんですよね。「意外と音やにおいは気にならないね。」「ルールを決めて、みんなが守れば、きれいなまま使える。」個人では試したくてもなかなか踏み切れない体験だけに、たくさんの新しい発見を共有することが出来ました。

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また、キャンプ中には、実際に売られている防災用品を使用して、そのレビューも行いました。ところが、いざ使おうとしても機能的に心もとなかったり、これはいいなと思う商品はとても手が出ない値段だったり.......。

非日常で必要になるものだからこそ、日常生活の中で気軽に手にして試せるものでないと安心して使えないということに気づきました。

非日常(防災)が日常に溶け込んでいる沖縄の暮らし

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ー今回のお話を伺って防災をもっと考えなければ・・・と思いつつも、どこか非日常的で中々身近に感じるには想像しにくい部分もあります。

そうですね。実は沖縄は、いわゆる非日常(防災)が暮らしに溶け込んでいる地域。毎年襲ってくる台風と共に暮らすため、私たちとは違った日常を送っているんですよ。

そこで2年目は防災キャンプと合わせて沖縄県八重山地方の暮らし方を調査し、災害と共に暮らすための生活の知恵を教えてもらいました。

ーそうなんですね!具体的にどんな生活をされているのでしょうか?

そこで明らかになったのは、台風による暴風に対して建物や集落といったハード面を工夫して作るだけではなく、悪天候に備えて食料をはじめとする生活用品を備蓄することなど、当たり前のこととして防災対策が行われている姿。

自然からの恵みを受け取るだけでなくその特性を読み解くことで、日常の中に防災を根付かせていることが分かりました。

3年目:コロナ禍という非日常を迎えて

ー防災プロジェクト、ラストイヤーとなる3年目は新型コロナの流行がありましたね・・・。それはどんな影響を及ぼしましたか?

やはり、当初の計画どおりプロジェクトを進めることが難しくなりました。

突如としてそれまでと違った非日常の生活を送ることを余儀なくされ、やがてそれが日常になっていく中で気づいたのは、「災害が起こったら社会にどんな良い変化が起きるか」と考えていた変化が、まさに今起こっているんじゃないかということ。ならば、この経験もきっと防災に活かせるはずと考えました。

ー確かに、当初に考えていた状況がまさに目の前にある状態。そこからどんなことをされたのでしょうか。

その結果とこれまでの調査や体験をもとにしながら、コロナ禍という災害を経験した私たちだから言える、すべての女性が前向きに自由な価値観で生きていくためのメッセージを考えることにしました。

さまざまなメッセージが届く中で、根底にある思いは共通ということがわかったんです。

「災害に備えることも日常をいかに使うかが大切であり、固定概念を取り払うことが大切」

私たちはこのプロジェクト、そしてこの新型コロナという非日常(災害)を通して気がつけばこの思いが共通認識となっていました。

そしてこれからまだまだ待ち受けているであろう非日常を迎えるために、この思いを浸透させていきたい、そう強く思っています。

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少し先の未来を想像するということ

ー「災害」というと、どうしても悲しいイメージがつきまといます。それを前向きに捉えたこのプロジェクトで生まれたことは何だったのでしょうか?

「災害は悲しいもの」そう思うのは普通の感覚ですよね。防災対策は必要だと言われても、こんな後ろ向きなことに向かって積極的に備えるのって難しい。それなら、災害が起こった後の社会に起きる良い変化に目を向けてみたら...ちょっとタブーな感じもするけれど、災害でインフラが造りなおされたり対策が進んだりして、社会が良く変わることもあるはず。この気づきが私たちの活動の出発点でした。

ーなるほど・・・その気づきからこの大災害時代での生き方を考えて行ったのですね。

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そうですね。また、ここ四国地方は昔から100年~150年の周期で繰り返し地震や津波の脅威にさらされてきました。また必ず災害がくることがわかっているのであれば、その先にある社会を良いとこ取りして、今から「積極的に生きる」ことを選択し、人生を豊かに過ごせたら。

この思いに賛同してくれた様々な分野で活躍する女性たちと試行錯誤の3年間で少しずつそのコツが見えてきました。

それはグラデーションを意識することです。私たちの生活は様々なグラデーションで成り立っています。自然の恵(または脅威)と人の生活とのグラデーション。他者と自分との関係性のグラデーション。

グラデーションですから濃淡があります。濃淡の間がとっても大切で、この間(緩衝帯ともいえるかもしれません)を意識した暮らし方が重要だと。

ー濃淡の間を意識した暮らし方・・・。

例えば台風常襲地帯である沖縄県八重山地方の暮らしの知恵です。土地の高低や風の流れを読み解き、住宅の配置や道路の線形をグラデーションにして風の威力を低減させる工夫がなされています。また、自然の脅威の前では、集落内での助け合いが重要です。近隣住民と良好な関係を保つためにプライバシーのグラデーションを意識した敷地レイアウトの工夫もあります。

ー3年目の研究で見えた、非日常を日常に取り込む暮らし方ですね。

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はい。そして人生を豊かにするためには、少し先の未来を予測して“積極的に生きる”こと。

3年前、私たちは南海トラフ地震後に起きる社会の良い変化を洗い出し、そのために必要となる備えを話し合いました。それが本当に役に立つのかどうかは、まさに災害が起きてみないとわからない。そう思っていた矢先、全世界に新型コロナウイルス感染拡大の脅威が襲い、私たちの生活に様々な変化が起きました。

コロナで起こった社会の変化を目の当たりにし、私たちは事前に何をしておけば良かったのか。思い描いてみるなかで、それは3年前にみんなで話し合った備えに驚くほど合致していたことがわかり、少し先の未来を予測して行動することの重要性を痛感しました。

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ー良くも悪くもプロジェクトの答え合わせができた・・・。でも、まだまだこれからも予測不可能な状況は訪れますよね。

そうですね。でも、そんな社会の変化にも惑わされることなく、自分自身の価値観で時点時点での生き方を納得して選択できる自分でいるために。そして、そんな生き方を全ての人が実現できる社会であるために。

少し先の未来・・・災害について考えることは、ライフステージフリーな社会を実現する近道かもしれません。

<YouTubeも4月2日公開>
瀬戸内サニーのYouTubeチャンネルでは、女性の視点で防災を考えることを目的にYouTube動画も公開中!お楽しみに。


研究代表者:磯打千雅子
共同研究者:金井純子、高橋真里、大西里奈
問い合わせ先:香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構地域強靭化研究センター
E-mail:isouchi.chikako@kagawa-u.ac.jp

本研究は、文部科学省ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ事業の助成により実施しました。

Directed by mamiko


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