六花万雷
夜が青く深くなる
掌に咲く 冬の花
咲いては溶けて
体温を奪っていく
道の向こうで立っている
君が笑う 冷たいまま
吐く息は白く
最終にかき消される
通り過ぎるテールランプ
世界を赤く染めていく
鳴いている 遠雷が
春を連れてやってくる
思えば一人の冬なんて
もう来ないと思っていた
こんなにも静かな夜なんて
もう来ないと思っていた
道の向こうで笑っている
君が立つ 冷たいまま
吐く息は見えない
終電ももう終わり
通り過ぎるブレーキランプ
世界を赤く染めていく
泣いている 万雷の
これまでが去っていく
夜がこんなにも美しいのは
誰かの悲しみを消すように
冬の花びらが風に舞うから
東京タワーももう見えない
六花万雷 華やいだ
冬の空に星が瞬く
六花万雷 溶けていく
君と過ごした淡い世界
六花万雷 泣きやんだ
春はもうそこまで来ている
六花万雷 飛んでいく
君と過ごす新しい世界
道の向こうで立っている
君が笑う 冷たいまま
僕も笑う 君のように
夜が青く深くなる
手の甲に咲く 冬の花
鳴いている 春雷が
君のもとへと連れていく
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