裾直しがめんどくさい
ユニクロには「スマートアンクルパンツ」というスラックスが売っている。
なんの変哲もないスラックスなのだが、ほどよくテーパードがかかってスタイルが良く見える。このSサイズが、裾直しをしなくても丁度いいくるぶし丈になってくれて好きだ。2年に一度くらいの頻度で買い替えて、かれこれ10年くらい愛用している。
裾直ししなくていいので、フィッティングルームを経由せず、売り場から直接レジへ行ける。めんどくさがりのぼくにとって、こんな最高なパンツはない。
先日、ヘラルボニーの派手な青いシャツを買った。めちゃくちゃかっこいい。
しかし、問題があった。これに合わせられるおしゃれなパンツを持ち合わせていない。柄物のシャツを買うなんて10年ぶりだった。20歳を超えたあたりから無地の服しか着なくなり、ずっとシンプルな服装を好んできた。
愛用のスマートアンクルパンツはかなり細身で、ビジネスシーンでも使えるかっちり目なパンツだ。ヘラルボニーのシャツに合わせるには少しフォーマルすぎる感じがして、もう少しワイドでリラックス感のあるパンツがほしいと思った。
ヘラルボニーのシャツが届いた翌日、妻が名古屋に行く用事があって、ぼくも一緒についていって名古屋でパンツを探そうと思った。
しかし、裾直しのめんどくささが頭をよぎった。
パンツを買えば、裾直しが必要になる確率が高い。自宅から名古屋までは電車で片道30分以上かかる。もし、後日渡されることになれば、また名古屋へ行かなくてはならない。
結局、妻を玄関で見送り、ぼくは自宅から車で5分のユニクロへ向かった。
ユニクロで「タックワイドパンツ」という、いい感じのリラックス感のある、しかしタックが入っていてきちんと感もある、まさにいまどきっぽいパンツを見つけた。
フィッティングルームへ入り、真新しいパンツに足を入れる。鏡越しにかかとで踏んだパンツの裾を見て、「裾直がめんどくさい」と瞬時に思った。
「靴を履いたらましになるだろう」と思いつき、カーテンを開けパンツを試着したまま靴を履くと、ぎりぎり裾が床につかない。
「まあ、これでいいか」と思い、絶対にこれでよくないのだが、「裾直しはよろしいですか?」というスタッフの親切な声掛けにも「大丈夫です」とぼそっと返事をし、レジへ向かった。こういう時、客観的な意見を言ってくれる人がいるといいと思う。肝心なときに限って妻がいない。
家に帰って、買ったパンツのタグを取って履き、家の中を歩いてみた。裾が床をすって歩きにくい。裾直しすればよかったと思った。それでまた翌日、タグを取ったにも関わらず裾直しをお願いするため、ユニクロへ向かった。大馬鹿である。
「やっぱり裾直ししたいんですけど…」と試着室前で作業をするスタッフのお姉さんに声をかけ、フィッティングルームへ案内される。
くるぶしあたりのところにクリップを止めたところで、「明日10時以降に取りに来てください」と言われ、今日それを取りに行った。
裾直しをめんどくさがった結果、この1週間で3回もユニクロへ行った。
ちなみにこの「やっぱり裾直し」のために来店する失態、これがはじめてではない。パンツを買う時、これまで何度も経験してきたことである。この支配からそろそろ卒業したい。