見出し画像

#関節夫のひと息小説14真の恋愛は砂漠の真ん中で。


#関節夫のひと息小説14

真の恋愛は砂漠の真ん中で。

圭介は時折、真里子のことを思い浮かべていた。彼女との出会いは奇跡に近いと彼は感じていた。まるで広大な砂漠の真ん中で、ひとつのオアシスを見つけたようなものだった。砂漠は果てしなく広がり、乾いた風が吹き荒れる中で、圭介は自分が一人ぼっちであることを痛感していた。

だが、真里子は違った。彼女はあたかも、砂の海の中に現れた唯一の緑だった。彼女の笑顔は乾いた心に染みわたり、言葉は彼の心を潤してくれた。真里子と共にいる時、圭介はその砂漠が色を持ち、命を吹き返すのを感じた。

しかし、圭介は思った。真の恋愛というのは、一度出会っただけでは終わらないと。それは二人の間に何かしらの「合図」が必要なのだ。砂漠にオアシスがあると知っても、それを見失ってしまえば意味がない。同じように、真里子との間には互いに分かり合える何かが必要だと。

ある日、圭介は真里子に提案した。

「僕たちだけの合図を作らないか?」

真里子は少し驚いたような表情を浮かべた後、興味深そうに頷いた。「合図?」

圭介は少し恥ずかしそうに微笑んだ。「そう、例えば…指で小さな輪を作るんだ。そしてそれを空にかざす。それが僕たちが困っているとき、お互いを必要としている時の合図。」

真里子は少しの間考えた後、圭介の提案に同意した。「いいわ、それ、素敵ね。」

それからというもの、二人は時折その合図を使うようになった。忙しい日々の中で言葉が足りないと感じた時、指で作った小さな輪が二人の心を繋いだ。どんなに離れていても、その合図があれば、砂漠の中でもまた会えると信じることができた。

砂漠は広くとも、二人の間には確かなオアシスが存在していた。それが彼らの合図であり、真の恋愛の証だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?