#関節夫の手のひら小説25 「埃まみれの愛」
#関節夫の手のひら小説25
「埃まみれの愛」
古びた喫茶店で、圭介は冷めたコーヒーを前に座っていた。この場所で真里子と再会するのは何年ぶりだろう。
「久しぶりだね。」
懐かしい声に顔を上げると、真里子が笑顔で立っていた。
二人が出会ったのは、真里子が編集者として圭介の原稿を手に取ったときだった。恋人同士となったが、圭介は売れない小説家としての現実に耐えられず、ある日突然彼女の前から消えた。
「埃まみれの愛でも許されるかな?」
圭介の問いに、真里子は静かに微笑む。
「埃まみれでも、愛は愛だよ。」
その言葉に救われた圭介は、小さく息を吐いた。
「もう一度、俺を編集してくれないか?」
「まずは、何を書きたいか教えて。」
懐かしい歌が流れる店内で、二人の時間がゆっくりと動き始めた。